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ファンタジアン  作者: おさかなちゃん
勇者様いらっしゃい編
32/333

30 勇者様はせっかち


「ドーモ、初めまして。私はサッカク・マジシャン」


 クラッカー音と紙吹雪が弾け、白装束の猫目マジシャンが登場した。


「ファンタジアンの皆様方には本日、重大なお知らせを発表しマス」


 妙にカタコトな発音の男がハンカチを投げると、書簡が飛び出した。

 彼が白手袋で触れると、書簡は空中で止まり丸められた紙が自動で開く。


「エート、巫女と賢者は大義の名の下に罪を重ネ、我が国に多大なる損失を。面倒デスね」


 マジシャンがもう一度触れると、紙は花になって散らばり下に落ちた。


「鈴蘭の巫女と赤の賢者を始末シタ。これは警告である。召喚を止めなければ次ハ」


 映像は、ここで途切れた。



「これが先日、各国へ届けられた」


 黒猫の形をしたカード上に展開していた映像が消える。

 筋骨隆々の大臣を巫女姉妹達と近衛兵のゼナが囲み、神妙に話を聞いていた。


「先程話したように、今後巫女は勇者の召喚を禁止とする。王の決定だ」


 三人の巫女達は納得出来ない表情をしているが、沈痛な大臣の様子に口を出せずにいる。

 代わりに一緒に来ていた汰郎が疑問を口にした。


「どうして映像が途切れているのですか」


「おお、勇者様!こんな時に呼び出されるとは何という運命の巡り合わせ!貴方こそ最後の希」

「質問に答えて下さい」


 手を取って感動の涙を流さんばかりの大臣を、笑顔でけん制する。


「これは失礼。実は怒りと悲しみのあまり握り潰してしまい、一部が損傷してしまったようで」


 見れば確かにカードの端が折れ曲がっている。


「召喚を止めなければ更なる不幸と呪いが訪れる、と」


「ありがとうございます」


 疑問が解消された汰郎は天使のような笑みを大臣に送った。

 狙った笑顔だと分かっていても、姉妹達は少しときめいてしまった。


「しかし大臣、賢者様を封印する必要があるのですか」


「あ、そーだ!賢者様、すっごい落ち込んでたし可哀想だよ。どーして?」


 ゼナの言葉にコイが反応する。

 他の二人も同じように大臣に視線で訴える。


「賢者様をお守りするためだ。決して悪魔に屈したのではない」


「あ~、茶の賢者様には継承者がいませんから~」


「代わりがいないのね」


 私達と違って、と呟くフレカ。


「他国の王達もそれぞれ対策を打つだろう。しばらくは大人しくして欲しい」


 役目を奪われてしまった巫女達に大臣は頭を下げた。


「まあしょーがないっか。うち達もクリノもとびきり凄そうな勇者様呼べたんだし」


「そういえばクリノは?来ていないけど」


「何か、勇者様がしゃんぷー?作りたいからって材料買いに行ってる」


「大変ですね~」


 少女達の他愛も無いお喋りが重苦しい空気を和らげた。

 大臣もほんの少し表情を緩める。


「ところで、そろそろ勇者とは何かと僕の帰還方法を説明して頂きたいのですが」


 そんな空気を妖怪使いの勇者様が打ち破った。



「内容によっては、悪魔より前に僕に屈して頂く事になります」


 汰郎の手には先程よりも多い枚数の札が用意されていた。



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