表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジアン  作者: おさかなちゃん
勇者の戦い編
315/333

313 勇者の戦い編その13


「頑張って~!」


 ノネの応援の魔法を受けた二人は鳥の悪魔への攻撃を開始した。

 猿児は両手の大鎌を左右に投擲。犬耳は拳を構え直進する。


 大鎌は地面を削り、周囲の魔物を巻き添えにしながら襲い掛かる。


『生きていたのか』


 ギルバードが両の羽で鎌を弾き、愚直に飛び込んだ青年の拳を片手で止めた。


『その姿は一体どういう事だ。なぜ人間共に加担している?』


 足元を沈ませても整った表情を崩さない鳥の悪魔。

 かつて同じ役目を負い、パラドッグスと呼ばれた青年は吐き捨てるように言った。


「好きでやってんじゃねぇよ」


「そのまま押さえとけ犬コロ!」


 ギリギリと力を加え続ける彼の背後から猿児、モンドキッドが跳躍する。


「うらぁッ!」


 掛け声と共に背の木箱から大量の細い鎖が飛び出し、ギルバードの翼を絡め取った。


『こんな物でワタシを捕らえたつもりか』


 鉄の鎖など翼に力を込めれば簡単に砕ける。

 そう思っていた彼だが、巻き付いた鎖はびくともしない。


 見れば鎖には見た事の無い文字の羅列が刻まれていた。


『これは!?』


「無駄だぜ鳥野郎。何せこのオイラが捕まった鎖だからな」


 焦りの表情を見せたギルバードに猿児は人の悪い笑みを浮かべた。


「さぁて、テメエもカゴの鳥になってもらおうか?」


 彼は懐から何も書かれていない一枚の札を取り出し、悪魔の頭へ貼り付ける。

 札を貼られたギルバードは謎の不快感に襲われた。


「偉大な汰郎様に飼い慣らされるんだ。光栄に思いな」


 心にもない台詞を吐く猿児は嫌味な笑い声を上げた。


「ほこらでの召喚が終わったらすぐに仲間入りだぜ」


「おい」


『召喚だと?』


 口を滑らせた少年に犬耳が注意するも遅い。

 ギルバードは彼らが守るほこらに視線を向け、目をギラつかせた。


『そうか、ドゥーラクウォンを倒した勇者だな!』


 二人や化け物達を操る者を殺してしまえば、森の国を護る者はいなくなる。

 ギルバードは鎖を巻き付けたまま上空へ飛び立った。


「何やってんだ!」


 天翔が反応して動くが位置が離れ過ぎていて間に合わない。


 翼無しでも飛べるのは予想外だったのだろう。

 急ぎフレカは雷を落とすため、腕を振り上げた。


『おっと、ワタシを殺してはいけないのだろう?』


「っ!」


 フレカは腕を止めた。

 鳥の悪魔を汰郎は、彼女の大切な主は強く所望していた。


 使い魔である彼女は命令に背く事が出来ない。


『その中にいるな?』


 ギルバードは封じられた翼に魔法の力を集めた。

 輝く羽の色が禍々しさに染まり、大きな破壊の力が宿る。


『ほこらごと消し去ってくれる!』


 拘束されたままで魔法を放てば自らも深手を負うが、彼は再生能力を手に入れていた。


「止めろ!下っ端!!」


『無駄だ!人間如きに止められはしない』


 力を爆発させようとした彼の前で、フレカは一枚の札を取り出した。


『!?』


 札には彼女の名が刻まれている。

 風麗香ふれかと。


「私はただの人間じゃないわ」


 フレカは札を手に、破壊を膨れ上がらせたギルバードへ飛び込んだ。


「汰郎様の忠実な僕よ!!」


 腕を振り下ろした彼女は自分と悪魔に向けて雷を落とす。

 天を揺るがす閃光と轟音が二枚の札を引き裂いた。




「アイツ、やりやがった」


 猿児と犬耳、そして妹達は空中を唖然と見上げた。


 視線の先には美しい羽と白い肌を持つ、桃色の髪の少女が浮かんでいる。

 コイはぺたんと地面にへたり込んだ。


「本当に人間、やめちゃった」


 かつて巫女だった少女の手には新たな名が刻まれた札がある。


 雉香きじかと。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ