12 勇者様は高校2年生
「貴方様をお待ちしておりました。私は鈴蘭の巫女、エーミット。よろしくお願い致します」
「マジで?」
お人形の様な巫女が召喚したのは額を出した茶髪の女子高生。
太ももが見える超ミニスカートに口笛が鳴った。
「ラッキー!女の子だぜ女の子。見ろよあのスカート、屈んだら下着見えるんじゃないか」
「メイクがちょっと濃いけど、ボク好みだよ」
騒ぐ外野にぎょっとする女子高生。
口笛を吹いて興奮している黒い帽子少年と、まじまじと観察している長躯の少年。
「どうなってんの?外国人の変な宗教団体?」
「勇者様、どうか世界の危機を救うため力をお貸しください」
毎度お馴染みの台詞を吐く金髪巫女に黒い少年はニッと笑った。
「楽しいアトラクションさ、一緒にエンジョイしようぜ」
「待て、レディにまで嘘を言うつもりか。ちゃんと説明すべきだろう」
「嘘なんて言ってないさ。どうせなら楽しむべきだろ?」
二人のやり取りを唖然と見る制服少女。
エーミットは口を出さない。諦めの様な雰囲気さえ感じられる。
「まさか、都市伝説の誘拐?ウチ、保険入ってないよ」
マジヤバイんですけど、と呟きながら落ち込む女子高生。
少女の様子にそれまではしゃいでいた二人が焦りだす。
「おい、お前がメイクが濃いだなんて言うから」
「キミが足や下着の事を言うからだろ」
「うわー!帰りたいよー!お母さーん!!」
互いに相手を責めていた男共は、突然の泣き声に肩を跳ね上げた。
「変なガイジン達に殺されるー!」
「キミ落ち着いて。誰もそんな事しないよ」
「そうそう、帰る方法が無い訳じゃないし」
命の保証は無いけど、と付け加えた帽子少年の言葉に少女の声は一層大きくなる。
「ちょっとエイミー、何とかしてくれよ!」
「エイミー!キミ女の子だし、彼女を落ち着かせてくれないか」
助けを求める男二人に鈴蘭の巫女は大きなため息を吐いた。
勇者として呼び出されたというのに、ちっとも旅立たずほこらに入り浸る二人。
そして召喚早々大泣きするミニスカ少女。
どうして自分が呼び出す勇者はこうも頼りないのか。
「三人とも静かになさい!」
銀の杖で床を叩き、声を張り上げたエーミットに少年達はぴたりと黙った。
初めて聞く彼女の大声に驚いている。
「貴方も泣くのはおやめなさい。人前で泣き喚く年齢でもないでしょう」
自分より年下に見える少女に宥められた女子高生は、とりあえず大人しくなる。
落ち着いたのを確認すると、巫女の少女は壁際へと視線を向けた。
「賢者様」
呼び掛けられた二人が巫女の元へと歩み出す。
一人は緑の燕尾服を着た馴染みの髭賢者。もう片方は金の錫杖を持った、少年達には見覚えの無い人物だった。
「勇者様、もし貴方様にとって使命が重荷であるのなら無理強いは致しません」
「私が元の場所へ送還しよう」
杖を持った赤いローブの女性が、女子高生の前に立っていた。
「え。帰して、くれるの?」
威圧的な大柄の女性に萎縮しながらも、女子高生は救いを求める眼差しをしている。
「気が変わられたのなら、勇者様には祝福を与えますよ」
縦ロールの髭が女子高生に近寄ると、彼女は大きく首を振って離れた。
「えー!そんなんアリかよ。差別だ差別!」
帽子少年が非難の声を上げる。長身の少年も言葉には出さないものの、不満気な表情だ。
「貴方達も、帰りたいのでしたらご自由にどうぞ」
「えっ、いいの?」
「本当かいエイミー」
「元々はそのために呼ばれたのでな。姫巫女の願いとあっては断れん」
赤の賢者の言葉を聞き、少年二人はまじまじとエーミットを見つめた。
「何です。巫女として当然でしょう。変な名で呼ばれるのもそろそろ我慢の限界ですからね」
ぷいと横を向く鈴蘭の巫女は今までの冷たい印象とは違い、年相応の少女のようだった。
「そんじゃ、エイミー」
「行ってくるよ」
手を振ってほこらから出ていく少年二人を、エーミットは複雑な表情で見送った。
「せめて髭のおっさんに払った代金ぐらいは稼いでくるぜ!」
「レディに借りを作ったままでは帰れないのでね。すぐに戻るよ」
ようやく勇者として旅立ったというのに何か釈然としない。
「あの二人、一体何を考えているのでしょう」
「貴方の誠意が伝わったのだろう」
赤の賢者は二人と同じ方向、ほこらの出口へ向かう。
「お帰りでしたら馬車を用意させます」
「いや、しばらくは戻らない。この国の近辺を拠点とするのでな」
賢者の金の錫杖には、白い毛玉の飾りがあった。
「少し、調べたい事がある」




