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魔王様はハッピーエンドを望む  作者: あられうす
第一幕:魔王の現界 ~幼少期前編~
2/7

1話:ここはどこだ?

早速一話からグロいかも?という内容を書きました。

私としてはグロいといってもサラっとした表現で書いたつもりではいますが、不快感をもし覚えるようでしたらさらっと流して読んでください。


さらっと流しても多分話の内容はわかると思うのでよろしくお願いします

ふと目を覚ます。


いつもの何気ない日常のように、朝に目を覚ますかのように。


我は何処とも知れぬ場所を漂っていた。

目を開けても周囲は暗闇。

ただなんとなく、下に向かって落ちていく・・・いや、沈んでいくような感覚。


―――ここは水の中か?


しかし何故水の中にいる?

水の中に入った覚えは・・・ない。

では水の中ではないのか。


起きがけの、意識が覚醒する間際のような微睡みながらボーっとしている状態。


―――我は寝ぼけているのか。


自身のことを思い返してみるが寝ていたという記憶はない。

頭の中が真っ白とでも言うのだろうか。

ただ、なんとなく肌に触れる感覚が水に触れているような感覚だけはわかった。


それにしてもなんというのだろうか。

こんな暗闇の中を沈んでいくという感覚であるにもかかわらず、居心地は悪くはなかった。

いつも感じる殺気とでも言うのだろうか。

ここには普段感じる良くない『気』というものが感じられなかった。


―――悪くはないな。


そう思い、再び寝直すように我は意識を手放した。



-------------------------------------------------------------



「・・・・・・・・ッ!・・・!!・・・・・・・・・!!」



意識を手放してからどれほどの時が経ったのだろうか。

先程に比べて意識がはっきりしているように思う。

寝足りないだとか寝過ぎたとかそういうのではなく自然に眠りから覚めて自然と起きた感じ。

なんだろう?

誰かの声が聞こえたような気がする。

そんなふうに思っていると、今度は先ほどよりも少しだけ鮮明に誰かの声が聞こえた。



「・・・れ・・・た・・・・・・て・・・・お・・・・・・す」



なんだろう・・・子供だろうか?

なんと言っているのだろうか?

意識を声のした方へと向けてみることにした。

すると今度はより鮮明な声が聞こえてきた。



「だれか・・・おねがいです・・・たすけてください」



・・・ダレカオネガイデスタスケテクダサイ?


・・・。


―――誰か、お願いです。助けてください。


ハッとした。

声を聞き、自分の中で声を噛み砕き、理解し、思い出した。

我は、今の今まで戦っていたはずだ。


勇者と・・・アスモデウスと!!


一瞬にして覚醒し臨戦態勢を整えた。

そうだ、我は今まさに勇者との最終決戦の真っ只中のはずだ。

誰か、我が軍勢の誰かが助けを求めているのだろうか。

そう思い意識を集中し、辺りを見回してみるが周囲は暗闇に包まれていた。

どことも知れぬ暗い暗闇の中に我はいた。

目を凝らしてみても、気配を探ってみても我以外誰の気配も感じない。

他種族の軍勢どころか、先ほどまで目の前にいたはずの勇者の姿がない。


いや、待て。

まだ先があった。


自身の胸に手を当ててみる。

確か・・・そう、我は勇者の持つ聖剣に胸を貫かれていたはずだ。

にも拘らず胸元には聖剣はおろか、傷跡すら残っていない。


よく、思い出せ。

まだ先がある。

勇者の聖剣に胸を貫かれた後、奴の姿を探した。

奴・・・アスモデウスは勇者のすぐ後ろにいた。

他種族の軍勢に紛れて、目深のフードを被り、ローブに身を包み、いかにも魔術師という出で立ちで佇んでいた。

勇者に討たれた我を見てほくそ笑んでいる姿を思い出した。


咄嗟に我はアスモデウスを含めた『エタニティアーク』全ての魔族を隔離した。

我の魔力の殆どを消費し、『エタニティアーク』を二つに分けたのだ。

鏡写の世界のように、魔族だけが存在する『エタニティアーク』を作った。

魔力を解放した後のアスモデウスの顔は実に見て愉快なものだった。

驚愕の表情を浮かべていたのだから。


それはそれとして我がこんな暗闇の中にいて、尚且誰の姿形も見られないということはつまり。



「・・・我は死んだのか」



自身の吐いた一言はストンと胸に落ちた。

すべて理解した。

勇者率いる軍勢に立ち向かい、戦い、勇者に聖剣で胸を貫かれ、魔力を解放した。

死んで当然だ。


ということはつまり・・・ここは『死者の眠る地』というやつだろうか。

何もない真っ暗な静かな空間。

だというのに不思議と居心地がいい。


それにしても・・・と一つ心配事の種が残った。

アスモデウスを含む奴の配下は当然として、魔族全員をもう一つの『エタニティアーク』に移したまではいい。

もう一つの『エタニティアーク』には『アスタロト』も行っているはずだ。

一応『アスタロト』を含めた我が軍勢には「逃げろ」と伝えたが、皆が皆、我を守ると立ち上がった。

嬉しいやら悲しいやら不思議な感情だったが、複雑な気分だ。

我が先陣を切って迎撃に向かったが、結局最後には我一人になっていた。

なので生きているものも死んでいるものもまとめてもう一つの『エタニティアーク』に移した。


『アスタロト』だけはなんとか説得して我が城に残ってもらうことにしたが・・・。

何にせよあいつがいるなら生き残った我の軍勢を率いてアスモデウスを打ち倒すこともできよう。


我自身が死んでしまったのだから今更どうすることもできない。

なので我が意思を継いで『アスタロト』がアスモデウスを打倒し、あちらの世界で魔族の生活がより良いものになってくれればそれで良いと思う。


・・・。


さて、我はどうしたものかな・・・。

そんなことを考えていると、もう一度先ほどの「助けてくれ」と言う声が聞こえてきた。


ここにいても仕方がないか。

なんとなしに声のする方へと向かうことにした。


しばしば声のした方向へ向かうと遠目に小さな白い光が見えた。

我は白い光に向かってどんどんと向かっていく。

すると遠目に見えていた小さな白い光はやがて大きなものに変わり、自身が通り抜けられるほどの大きさとなった。


なんだろう・・・ここから出られるということなんだろうか?

我はその白い光に足を踏み入れた。

黒い暗闇の空間から白い光の中に足を踏み入れるとそこは白く光る洞窟のようなところだった。


洞窟に入り後ろを振り返ると、先ほどいた黒い暗闇の空間は忽然と姿を消していた。

前に進めということだろうか?

更に歩を進めていくとやがて眩い光に包まれた。

あまりにも眩しいので我は咄嗟に目を庇った。


暫くすると光は徐々に収まり、目を庇っていた腕を退けるとこれまた不思議なところに我は立っていた。

とりあえず一目見て『エタニティアーク』ではないということだけはわかった。

見たこともない高さの四角い銀の建物が立ち並び、馬のいない馬車が動いている。

そしてあたりを見回せばどこもかしこも『人族』だらけ。

『獣人族』はおろか『長耳エルフ族』も『ドワーフ族』も見当たらなかった。

その『人族』達は見たこともない服装をしていた。

我自身それほど『人族』を見たことがあるわけでもないが、それにしてもこの場の『人族』達がそれぞれ我にとって異様だった。

我の知る『人族』はもっと簡素な服を着ていたはずだ。

無地のものが多く、色もシンプルなものが多い。

にもかかわらずだ。

この目の前の『人族』達はどうだろう。

色鮮やかな、清楚感のある服装をした者が殆どだ。


別世界・・・なのだろうか。


ふと自分の立つ目の前には何やら人だかりが出来ていた。

何があったのか気になり隣にいた『人族』の男に声をかけることにした。



「おい、何があったんだ?」



声をかけてみるが、男は我に気づいていないようだ。

言葉が通じないのだろうか?

残り少ない魔力を使い、念を飛ばしてみるがそれでも男は何の反応も示さなかった。

不思議に思い、我は男の顔の前で自身の手をひらひらと振ってみたが、男はそれでも何の反応も見せなかった。


やがて男はポケットから何やら不思議な板を取り出すと人だかりに向けて歩みを進めていった。



「我が見えていないのか?」



ふと自分の両手に視線を落としてみる。

自身の姿は『エタニティアーク』で勇者との戦いのときの姿。

漆黒の硬い外骨格で身を包んだ姿のままであった。



「・・・しまった」



完全形態の自身の姿であったことに焦った。

こんな姿でいれば『人族』は皆が皆驚いてしまうだろう。

辺りを見回してみるが誰も我の存在など気づいていないかのように、ただただ人ごみの方に目を向けているだけだった。



「・・・ふむ」



気づいていないのか見えていないのか、多分見えていないのだろう。

これ幸いと人安心したが、誰もが我の存在が確認できないのであれば埒があかない。

一先ず人だかりに向けて歩みを進めてみることにした。


途中「キャー」だの「うわぁ」だの「キュウキュウシャを呼ぶ」だのと聞こえてきた。

人ごみの前にまで来てはみたが、その先が見えない。

正直、人ごみが邪魔だ。

先ほどの男の反応から、我の姿を確認されることはない。

触れてはいなかったので、ならばとこの人ごみを退かすことはできるのだろうかと思い、人ごみの中の一人に触れてみることにした。

肩に手を乗せたつもりだったが、我の手はするりと通り抜けてしまった。



「・・・触れることもできぬか」



この人ごみの中を突っ切ることは可能だが、なんだか気持ちが悪い。

触れれば何かに触れるのが当たり前だったのにも関わらず通り抜けられるのだ。

ふぅ・・・とため息一つ。

我は背中の外骨格から翼を広げ、人ごみを飛び越えて人ごみの内側に降り立った。

そこには先ほどの馬のいない馬車が建物の突っ込んでおり、馬車の傍には『人族』の大人と子供二人が倒れていた。

倒れている『人族』からは夥しい量の血が流れ出している。

誰か治癒魔法を使える奴はいないのかと人だかりに目を向けるも誰として動こうとする者はいなかった。


『人族』はこんなに冷たい者たちばかりなのかと我は思った。

『エタニティアーク』であったのなら誰かしら駆け寄り、傷ついたものを助けようとするものがいてもおかしくないはずだ。

呆れて何も言えない。


残された我の魔力で同行できるかどうかわからなかったが何もしないよりはいいだろう。

倒れている3人の元へ行くとそのうちの一人、男の子供が何やらブツブツと呟いているのに気づいた。

子供が何を言っているのかと子供に意識を集中させる。



「誰か・・・助けてください。お願いします。僕はどうなってもいいからお母さんと妹だけは助けてください」



そう呟いていた。

先ほど『死者の眠る地』で聞こえていたのはこの子供の声だったのだろう。

しかしなんだ。

自身のことはいいから母親と妹を助けて欲しいとは。



「・・・気に入った」



我は右手をサッと横に振る。

振りながら頭の中で簡易結界のスペルを書き出し、魔力を込めた。

我を中心に発生した青いドーム状の光が『人族』の大人と子供二人を閉じ込めた。


「助けて欲しい」と呟く子供に近づき、子供の頭に手を乗せ念を送る。



―――おい、聞こえるか?



念を送ると子供の声で「えっ」という念が返ってきた。

子供は薄らと目を開き、我の姿を見て驚きの目を向けた。



「あ・・・悪魔?」



悪魔とはなんだ?魔族ではあるが、悪ではない・・・はずだ。



「いや、悪魔ではない」


「じゃ、じゃあお化け・・・ですか?」


「おばけ・・・ゴーストでもないな。いや、ゴーストかもしれんな」


「ふ・・・ふうん?」



そういえば自身はすでに死んでいる身であるためゴーストかもしれないと納得した。

一応魔王ではあるがゴーストかと言われれば違う。

ゴーストと魔王は全くの別物。

ゴーストは『アンデッド』であり『魔物』に分類されるから魔王である我が『アンデッド』となったのだから『魔物』になるんだろうか?

そんな一人問答はともかく置いておこう。

まずはこの『人族』3人を助けることが最優先だ。



「『人族』の子供よ、その・・・大丈夫か?」


「うん。僕は足と体が痛いだけだからまだいいけど・・・お母さんと妹が・・・」


「ふむ」



まずは目の前の子供を確認する。

この子供は足を馬車に潰されており、体は顔も含めて擦り傷だらけだ。

潰れた足元からは結構な血が流れている。


次に子供の母親とその妹に目を向けると突っ込んだ馬車で姿は確認できないが、恐らく二人共馬車に潰されている。

突っ込んだ馬車の頭の下から夥しい量の血が流れていることから恐らくではあるが死んでいると思われる。



「さて、『人族』の子供よ」


「・・・なんですか?」


「先ほどの言葉、真であるか?」


「・・・先ほどのって言うと?」


「『誰か・・・助けてください。お願いします。僕はどうなってもいいからお母さんと妹だけは助けてください』と言ったであろう?」


「助けてくれるんですか?」


「助けることは不可能ではない。だが魔力が少しばかり足りなくてな」


「助けてくれるのならなんでもします」


「ではお前の体と魂をもらうことになるが、それでも構わないか?」


「構わないです。お母さんと妹が助かるのなら!」


「・・・よかろう。ならば助けようお前の母と妹を・・・ここに契約は成った」



我は触れた子供の頭から魂を吸い上げる。

吸い上げた魂の一部を魔力に変換し、自身の魔力とする。

魔力を念動力へと変え、瞬間的に念動力を馬車へと放出する。

瞬間的に行ったのは少しでも魔力の使用量を減らすためのコツみたいなものだ。


建物に顔を突っ込ませた馬車を後ろに下げて、潰されていた二人を引っ張り出した。

二人はなんとか原型は留めてはいたものの、普通の治癒魔術では元には戻すことはできないだろう。


だが、魔王である我であるなら造作もない。


馬車を下げたことで潰されていた子供の足も一緒に避けることができたことも確認する。


そして再び魔術のスペルを頭の中に描き、詠唱を唱える。

その魔術は我にしか扱えず、我自身が独自に編み出したもの。



大総裁の魔獅子(ブエルマルバス)



引っ張り出した二人の側に白い輪と黒い輪が現れた。

白い輪からは白い毛並みの獅子(ブエル)の半身が現れ、黒い輪からは黒い毛並みの獅子(マルバス)の半身が現れた。

やがて白と黒の半身の獅子が合わさり、左右で白黒の毛並みを持つ獅子となった。

白黒の獅子が身震いをするとサラサラとした綺麗な粉が宙を舞った。


その粉が子供の母親と妹の体を包み込むと白く発光した。

白い光の中、二人の肉体はモコモコと蠢き、滴っていた血は戻っていき、やがて元の人の姿へと再生した。



「これでよかろう」



アモンは満足そうに呟いた。

魔力を大幅に使ったため、自身の姿が薄らとしたものになっていた。

アモン自身に残された魔力はせいぜい治癒魔法1回分くらいなものだろう。


このまま突っ立っていては我どころか自身に取り込んだ子供の魂まで消滅してしまう。

馬車から避けた子供の体に手を触れると我の体が子供の体にするすると入り込んでいく。

決して先ほどの『人族』に触れた時のように通り抜けているのではない。

我が自ら子供の『生きた魂を取り込んだ上』で『生きた体に入り込む』のだから意味が違う。


子供の体に入り終える寸前、潰されていた子供の足をサッと治癒し、展開していた結界を解いた。


結界を説いたことで元の喧騒へと戻った。

人だかりからは「あれ?車の位置が変わってね?」とか「さっきまですごい血があったのに」だとか「三人とも無事だぞ!」だとか色々な声が聞こえてきたが無視する。

今我は子供の体と自身に取り込んだ子供の魂を定着させている。

集中してるのだから静かにして欲しいものだと心の中で愚痴ることにした。


我自身の体の表面が全身くまなく子供の内側に触れる感覚。

子供の皮を全身に纏ったという感覚に近い。

体と魂の定着は成った。



―――さて、それでは会いにいくとするか。



我は精神を己の深くへと意識を潜り込ませた。

精神の中で目を開く。

目の前には大きな木製の扉があった。


我はその扉をゆっくりと押し込むと扉はキィと音を立てて開いた。

扉の先は広い部屋。

ちょっとした王室の一部屋みたいな空間。

そんな部屋の中に一つのテーブルとテーブルの周りに二つの椅子が置かれており、椅子の一つには子供が座っていた。


子供は椅子に座りながら暇そうに両足をプラプラさせていた。

先ほど助けた子供だ。


子供は我の姿を見つけるとニコリと笑って手を振った。

我は子供の居る方へと歩を勧め、子供の向かい側の椅子へと座った。



「さて、『人族』の子供よ。名は何と言う?」


「僕?僕の名前は桜聖司(さくらせいじ)と言います」


「サクラセイジ・・・か」


「はい、桜が苗字で聖司が名前です」


「なるほど。それではセイジと呼ぶことにしよう」


「うん。それで、悪魔さん・・・えーと、お化けさんはなんて言うのですか?」


「だから、我は悪魔ではないと・・・お化けなのは否定せんが・・・」


「で、名前はなんていうんですか?」


「・・・アモンだ」


「アモンさん・・・ですね。分かりました。お母さんと妹を助けてくれてありがとうございました。アモンさんの中から見てました」


「いや、問題ない」


「すごいですね。魔法って」



元々、セイジが体と魂を差し出すことで成った契約である。

それにしても礼儀正しい子供だ。

幼い割にとても聡い。

聖司についての印象に感心していると、おずおずといった様子で聖司が尋ねた。



「ところでアモンさん?」


「なんだ?」


「えっと…僕、体と魂?をアモンさんにあげましたけど、なんで僕はこうやって生きているんですか?」


「ああ、なるほど」



我がセイジの体に入ったことでセイジ自身の体は生きているのはなんとなくはわかっているんだろう。

しかしこうして我と話をしていることを不思議に思ったのだろう。

確かに不思議に思うことは何らおかしいことではない。



「それはだな、セイジの魂を残したからだ」


「え?」


「先ほど言ったであろう?母親と妹を助けるには魔力が『少し』足りないと」


「あ!そっか・・・だからなんだ」



セイジもどうやら納得できたようで何よりだ。



「それにな、セイジよ?」


「はい?」


「例え体の自由を我に委ねたとしても大事にしているであろう母親や妹と会えなくなるのは辛かろう?そう思ってな」



こんなに小さい子供なのだから当然であろう。

甘えたい盛りなのが普通なのではと我は思う。

セイジはくしゃっと顔を歪めたかと思うとニコリと笑って涙を流して「ありがとうございます」と言った。

泣かせてしまうつもりはなかった我は少し慌てた。


セイジが落ち着くのを待ってから、少し補足を加えることにした。

まず一つ目。

セイジの体と魂を受け取ったわけではあるが、セイジが体を自由に動かせないわけではない。

ただ、セイジの魂の内の半分を魔力に変換して使ったため、自由に動かせる時間に制限が着いてしまった。

動かせても1時間程といった具合だ。


そのことをセイジに説明すると「1時間だけでも充分です」と笑っていた。

なので我は母親や妹と接したい時はいつでも変わってやると伝えた。


二つ目。

恐らくではあるが、この世界が我の知る世界とは別の世界であると予想している。

別世界から来た我はこの世界の常識を何も知らないわけである。

そこでセイジの存在である。

セイジの魂を残すことで我の知らないこの世界の常識を教えてもらうことが可能となる。

そして我が困った時こうして、精神世界で相談することで問題を解決できると考えたわけだ。

部屋に備え付けられている窓からその時の状態も確認できるため、セイジも状態を逸早く把握することができる。

たとえ我が表面に出ていて誰かと会話をしていてもセイジにもその内容がわかるというものだ。


セイジは「なるほど。任せてください」と快く快諾してくれた。


補足を終えたところで先程から気になっていたことをセイジに尋ねることにした。

此処は何処なのかと。



「ところでセイジよ。ひとつ聞きたいことがある」


「はい、なんですか?」


「我が現れた世界・・・この部屋のことではないぞ?この窓の外に映る世界。ここはどこなのだ?」



我は部屋に備え付けられた窓を指差した。

窓の外は先程までいた世界の風景が移されている。



「ここですか?・・・日本ですけど?地球って言ったほうが良かったですか?」



セイジの返答にやはりなと納得した。

街中は『人族』だらけ。

見たこともない高さの四角い建物。

馬のいない馬車。

そして『人族』の服装。


どうやら我は『エタニティアーク』ではない異世界に来てしまったらしい。

2話目も早いうちに書けると思います。

頑張れ自分!


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