卑怯な人間
悠はいつも通り学校に登校していた。道を歩く人達は皆、下を見ているようであった。間違っても上を見ながら歩いている人はいなかった。悠もそれは例外では無い。
学校への道のり、約1キロメートルがやたらと長く感じる。1キロメートルなんてそんなに長くは無い。歩いていたら30分もあれば余裕過ぎるくらいだ。悠にとって約20分の道のりとなる。その20分が憂鬱で仕方が無かった。周りが畑や田ばかりなのが、恥ずかしいのだ。悠の住む村は田や畑がたくさんある、いわゆる田舎だ。コンビニだって村に1軒しかない。
そこを歩くのが嫌であった。サラリーマンは今から電車に乗り、街に行くのであろう。それが羨ましかった。悠は気を紛らす為に、少し速めに歩いた。
学校は街の学校との変わりは殆ど無いので、好きであった。それは自宅も同様だ。しかし学校にはどこか居心地を良くしない感じがある。それが悠にとっての不満であった。
悠は玄関で上履きに履き替える。もちろんロッカーの中にラブレターが入っているという、リア充じみた事なんて無かった。ただ『松本』と書かれた上履きが放り込まれているだけだった。しかし悠はそれに一切の不満は覚えていない。
教室はガヤガヤとうるさかった。悠は何も変わらず、ただ黙って椅子に掛けている。それだけだった。
気が付くと6時間の授業は全て終えており、もう帰宅するだけとなっていた。こんな事は悠にはしょっちゅうなのだが、やはり何かが狂ったような気になってしまう。悠はエナメルバッグも背負うと教室を後にした。
帰る途中に嫌な物を見てしまった。
イジメ
悠も何度か見た事があるが、見るたびに不快な気分になる。深刻な時は嘔吐までもした。
今日、また見てしまった。悠は思わず顔を引きつらせてしまう。
体の大きい男が4人。メガネを掛けたガリ勉君っぽいのが1人だった。悠は一瞬で場を理解した。
しかし行動は起こせない。イジメを辞めさせる。そんな話、漫画や小説でしか読んだ事無い。人の為に犠牲になってやるような人間は殆どいない。陰キャラになると尚更だ。しかし見て見ぬ振りも気が引ける。
だから悠はこうする。
先生に告げる。
これが自分にとって最適だ。なぜなら、自分に矛先は下らない。そして見て見ぬ振りでもなければ、先生からの評価も少しだけだが、上がる。
人間とは卑怯だ。だがその卑怯さが面白い。
すみません。アップするのを忘れました