娑羅の樹
「な・・・んで・・・だよっ?!」
最後に聞いたシャラの声は、少しかすれていたような気がした。
私は15回目の夏。神社の裏庭の隅っこに小さな祠を建て、自分の霊力を封印することにした。
ピッ。と、祠に小さな御札を貼り付けた瞬間に聞こえたシャラの声。
それと同時に周りの空気の温度が一気に上昇したのが、肌身で感じた。
やっと、人の感覚を手入れた。そう実感することができた。
・・けど。
かわりに、シャラという、10年間付き合ってきたパートナーを失った。
妙な感覚だった。これが、人の感覚なのだろうか?心のどこかが抜け落ちたような、そんなスッキリしない気分。シャラという、私の中での存在の大きさを、私はこの時改めて思い知ることになった。
+ + +
シャラと出会ったのは5歳の誕生日の前日。
いつも通りの日々を送っていた私の前に、突然現れた小さな少年。
神社の隅っこ。それでも、夏椿が綺麗に咲き誇るその場所が、私は好きで毎年蕾が出来始めると、毎日欠かさず通って、蕾の生長を見ていたものだ。
そして、夏椿は決まって私の誕生日の前日に満開になり、誕生日の日に花を散らすのだ。まるで、誰よりも早く私の誕生日を祝ってくれているように。
そして、現れた小さな少年。毎年のように見事に咲き誇る椿の前に、夏椿の花と同じ、真っ白な服を着ていた。目は鮮やかな緑色。それはまるで、夏椿の葉の色そのままだった。髪の毛が漆黒なだけあって、目と服のい色が綺麗に交じり合って、しばらく見とれていた気がする。
少年は、小さく笑っていた。
「初めまして、近藤サナエ」
なんで、自分の名前を知っているのだろう?
「僕は、君の守護霊になりたいんだ」
しゅごれい?何、それ?
「サナエは、どう思う?」
どうって・・・。そんなこといきなり言われても、困るよ。
「・・・そっか。じゃぁさ、友達になら、なってくれないかな?」
ともだち?
そぅ、友達。私はあの時初めて友達というものを手にした。
普通の人とは違う感覚を持っていたから、中々子供達の輪に入れずにいた自分に、手を差し伸べてくれた初めての友達。
私は迷わず、少年の手を取った。それは、なんの理屈も無く、ただ。彼を自分の中で必要としていたから。
「ともだちに、なる」
誰よりも早く、誕生日を祝ってくれる、夏椿。
私は、少年が、自分には無くてはいけないものだと、子供ながら本能的に分かっていた。
そうだ。私はあの時『友達』として、あの少年を受け入れていた。
でも、少年はすぐに友達とは別の存在となってしまった。
それは、5回目の誕生日の日。
「サナエ。今日から、お前の守護霊となるものだよ」
そう、父から紹介されたのは、あの少年。
あの時、少年は少し寂しそうにしながら
「宜しく」
そういって、自分に授けられた守護霊名を名乗った。
『娑羅の樹』・・・と。
小さく区切って書くと言うのも中々大変なものです。
なんと言っても、区切りの意味ってなモノを持たせなければいけないわけですから。
テンションこコントロールが難しくって・・・(クスンッ)
でも、ここはこのお話しの中でも結構大切な部分なので、頑張って書かなくては。という気持ちで頑張りましたよ(珍しく)
それでは、ここまで頑張って読んでくださって、有り難うございます。これからもどうぞ、宜しくお願いします。
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