小さな決意
また、今年も夏がきた。
周りでは、不可解な言葉が飛び交う。
「暑いぃ〜」
「あぢぃ・・・」
大体の人は『夏=暑い』・・・ってな公式が頭の中で出来上がっているらしい。
けど、私は生まれてこの方(15年間)そんな素晴らしい体験はしたことがありません。
皆さん、夏って寒いモンじゃ、ないんですかぁっ?!
+ + +
私は近藤サナエ。雪ノ雅神社の神主の娘で、『夏は寒いよね?』って思っている、特に変わったところの無い・・・・
「って、待てコラァッ!!」
「・・・っ!!痛ったいなぁ!ナニすんのよ、娑羅ってば」
「はぁっ?!『ナニすんの』って、今、自分のしていた行動に何の疑問も浮かばなかったのかよっ?ってか、何で夏は寒いって思い込んでるヤツが『特に変わったところの無い・・・』なんて、自己紹介できるっ??!」
「何かヘンなところある?」
「あるだろっ?!思いっきり!!」
えーと。このうるっさいやからはシャラ。ウチの神社の隅っこにある夏椿の精霊。
私がちっちゃい頃、父が勝手に守護神として契約を結んじゃって以来。ずぅっと私のそばにいるやつ。
「だいたい、テメェの考えと他人の考えを勝手に同調させんなっての。お前はソレでなくたって特殊な感覚の持ち主なんだからよぉ・・・」
「むぅ・・・」
そうなのだ。私は神主の娘。父の霊感を受け継いでしまっているから、人とちょっと感覚が違う。
特に夏って無駄にテレビとか、怪奇特集なんぞするから、それにつられるように幽霊の量もおのずと増加するんだよねぇ。しかも。よりにもよって、我が家=神社でしょ?もぅ、わんさか集まってくる訳で。
「・・・寒っ」
背後にぞくぞくぅっ。ってくるわけよね。悲しいことに。
「でも、しょーがねぇじゃん?第一、霊感無いと俺、視えないし?」
「いいよ、視えなくたって」
むぅ。っと、シャラから視線を外しながら言う。
だって、勝手に決められていた守護霊なんてさ。私が望んだワケでもない。今も、望んでいない。私は守られなくったって、普通の人間として生きていける。シャラなんかがいなくたって、全然平気。そこまで、私は弱くない。
『一人でも、大丈夫。』
いつも、心にあった小さな決意。
いつか、シャラなんかいなくても大丈夫なんだって証明してみせる。シャラだって、私のお守りなんかより、自由でいたほうがずっと楽で楽しいハズ。
だから、私は。
寒い夏を封印することにした。
短編にするつもりでしたが、やはり、細かく区切ったほぅが読みやすいかな?・・・と、思ったので連載という形を取らせていただくことにしました。
昔のネタであり、自分の中での処女作をいじって書いたものです。(原作は小学校時代のものでした)
少々、文章に幼いところがあるとは思いますが、どうぞ読んでやってください。
なお、ご意見・ご感想。誤字脱字の注意や評価などがございましたら、作者に送ってやってくだせぇ。(涙)
ではでは、ここまで頑張って読んでくださって、有り難うございます。これからもどうぞ、宜しくお願いします。