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第23話

 リオと私の婚約が正式に発表された。


 リオのプロポーズを受けたあと、二人で国王に報告に行った。

 国王は勿論喜んでくれたが、ちょっと変態チックに追いかけて来て、正直気味が悪かった。この人が父になるのが唯一の難点な気がする。

 国王の執務室を出たあと、二人はジェラールの部屋を目指した。

「あかり、手を繋いでも?」

 恥ずかしがり屋のリオにしては珍しい。とくに廊下は人の通りが激しいのだ。すぐに噂として流れるだろう。

「いいけど、恥ずかしいんじゃない?」

「恥ずかしいです。けれど、私のあかりを見せびらかしたいのです」

 にこりとリオの微笑みを向けられ、私は落ちた。

 普段表情の乏しいリオの笑顔は国宝級に値すると考えている。

「じゃあ、私もリオを見せびらかすね」

 リオの手を取り、笑顔を向けた。リオが唖然と私を見つめるので、首をかしげてリオを覗き込んだ。

「どうかした?」

「いえ、あかりの笑顔に見惚れていたんです」

 それは私の台詞だ。恥ずかしそうに何を言ってるんだ。きっと傍から見れば私たちは甘すぎるオーラを出しまくっていただろう。

「何言ってんの」

「あかりは自分の魅力に気付いていないのですね。城の中であかりにあわよくばお近付きになりたいと考えている男がどれだけいるか知らないでしょう? 私がどれだけ焦っていたと思っているんですか。私はやっとあかりを手に入れた。これは私の恋敵どもに牽制のつもりなんですから」

 リオは繋いだ手を持ち上げて満足そうに微笑んだ。

 少し前まで気分が悪くて、一人になりたいと思っていたのが嘘のように晴れやかだった。そして、ちょっぴりこしょばゆい。

 今まで感じたことのないそんな感覚が幸せなのだと感じた。

 引き締めようと思っても、口元が勝手に弛んでしまう。

「ねぇ、リオ。リオの婚約者として私で相応しいのかな? ほら、リオは王族なわけでしょ。身分相応な女性、ご令嬢とかじゃなくていいの?」

「私の相手は好きに決めていいと父上から言われていましたから。私に王位を継がせない代わりに、何でも自由にさせてもらっています。そこまで気を遣う必要もないんですけどね。でも、あかりを心置きなく選ぶことが出来ました。まあ、私に王位継承権があったとしても、あかりならば反対はされなかったと思いますよ。父上はあかりが大好きですから」

 そう、それが不思議で仕方ないのだ。

 国王とはあんまり会わないし、まともに話したこともない。何故ゆえにあんなに好かれているんだろう。

「なんであんなに好かれちゃったのかな?」

「父上には、魂の色が見えるんです。あかりの魂の色は今まで見た中で一番美しいのだそうですよ」

 魂の色……。オーラみたいなものだろうか。

 なんにせよ、国王は私の魂の色を見て好いてくれたということか。

「それも魔法の一つなの?」

「ええ、そのようですね」

「リオにも魔法が使える?」

「はい。私は風を操ることができますが、あまり得意ではありません」

 魔法、という言葉を聞いてワクワクしてしまうのは、幼い頃に大好きだったアニメの影響かもしれない。

 ほうきに跨ってみたり、棒切れを振り回してでたらめな呪文をとなえたりした。

「いいなぁ、魔法」

「あかりも使えると思います。あかりから魔力を感じますから」

 魔力という言葉が出てきたことに驚いた。驚くことでもないのだろうが、私には未知の世界すぎてついていけない。

「私に魔力があるって分かるの?」

「はい。あかりの力は強いですから、練習すれば上手になると思います。私で良ければ教えますよ?」

「うん、お願い」

 幼い頃に夢見ていた魔法が使えるかもしれないとあって、私のテンションは急上昇だった。

「ありがと、リオっ」

 あまりの興奮にリオに抱き付いたあと、ここが公衆の面前であることに思い至る。

「ごめん、リオっ」

 リオの肩に顔を埋め、小さな声でそう言った。

 周りが騒ついている。それは、間違いなく私がした行為のせいである。多くの視線を背中に感じる。ということは、リオにいたってはみんなに顔を見られているということだ。

 うぅっ、ごめんリオ。でも、恥ずかしくて顔を上げられない。

 リオが小さく笑んだ声を聞いた気がする。気のせいかと考えていると、頭に優しい手が乗せられた。

 その行為により、さらに周りが騒めいた。

「煽ってどうすんのよぉ。余計に顔上げられなくなったじゃない」

「わざとです。あかりともう少しこうしていたかったので。すみません。私の我が儘です」

 くっ、可愛いな。

 公衆の面前と分かっていても、キスしてしまいたくなる。もう、こうなったらしてしまっていいんじゃないか。

 と思うほどにリオが可愛くて仕方ない。

「そんな可愛いこというと、ここで襲っちゃうぞ?」

「いいですよ。是非して下さい」

 狼狽えると思っていたリオの逆襲に動揺させられた。

「してくれないなら、私が」

 リオに体を離され、けれども顔が近付いてくる。目を瞠り慌てる私、悲鳴にも似た歓声が上がる。

 いよいよリオの顔が間近に迫ったとき、私は強く瞳を閉じた。

 リオの唇を感じたのは、私の頬で、びっくりとほんの少しのがっかりを感じながら目を開くと、その途端に唇を塞がれた。

「襲っちゃいました」

 子供っぽく微笑むリオが憎らしいやら可愛らしいやらで、私は完全に彼の魅力にハマってしまったのが分かる。

「ズルい。私が襲おうとしていたのに」

 公衆の面前だというのも忘れて、襲う襲わないなどと話している私たちを、人々は半ば呆れて、半ば悔しそうに、半ば憧れの眼差しで見ていたことを私は気付いていなかった。

「おいっ、お前たちはこんな所で何してんだ」

 私たちの言わばイチャイチャムードを壊したのは、エロイだった。

 二人向き合って至近距離で顔を近づけて話している私とリオの真横に仁王立ちで突如現れた。イヤ、厳密に言えば二人が気付くまでそこに立っていたのだが、あまりに二人の世界を作り上げるものだから、我慢しきれなくなったエロイが口を挟んだという形なのだ。

「何って、お話?」

「こんな人の多いところで、そんなにくっ付いて、何を話してたって言うんだ?」

「あかりが私を襲いたかったというものですから、じゃあ、ここで襲ってくれていいですよ? といった話でしょうか」

「ちょっ、リオ。何でばらしちゃうのよっ。恥かしいでしょうが」

 それをきに再び小競り合いを始めようとする私たちをエロイは無理矢理止めに入った。

「お前がいなくて、ジェラールが拗ねてるぞ。早く行ってやった方がいいんじゃないのか?」

「あっ、そっか。行かなきゃ」

 リオが自然に私の手を取り、エロイを置いて歩き出した。こっそりと見上げると、丁度リオも私を見下ろしている所で、自然と二人の間に微笑みが生まれる。

「ジェラにも報告しないといけないし、兄ちゃんにも報告しないと。喜んでくれるかな?」

「喜んでくれるといいですね。そういえば、光殿は本当に素晴らしい腕の持ち主ですね。早速近衛兵の隊長から入隊要請が出ていました」

「ああ、兄ちゃんらしいよ。隊長を骨抜きにしちゃったんでしょ?」

 楽しそうに微笑み言葉を交わし合う私たち二人を、少し後ろを寂しそうに歩くエロイがいることにこの時私は気付くはずもなかった。

こんにちは。いつもありがとうございます。

一応、最後まで書き上げました。45話完結予定です。

今後は、これまで通り平日1話ずつ更新しながら、次のお話の構想を練って行きたいと思います。

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