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死体愛玩症  作者: ぴあす


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2/2

過去

 黒いニット帽を被った大柄な男がドアの外から茜を覗く。


「動くんじゃねえぞ。こっちには武器がある。死にたくはねえよな?」


 ドアを開け部屋の中に入った男は鞄を漁り出した。中から震えるスマホを取り出して電話を切る。


「騒いだら殺す、暴れても殺...」


 男は黙った。

 少し開いた蛇口から水が滴った。男は、茜をまじまじと眺める。


「お前、大丈夫か?」


 無言で黙ったままの茜の髪から雫が落ちた。

 茜は虚な目をして、ただ男を眺めている。


「おい、無視すんなよ」


 男は茜の肩を掴もうと一歩踏み出すがまたすぐに立ち止まる。


「お前これ」


 男は空の容器を持ち上げる。


「自殺、か」


「そう、だからもうどうでもいい。あなたの好きにして」


 男はその言葉を聞くと少し濡れた浴室の床に腰を下ろす。そして顎の下に手を当てて目を瞑った。


「そう言われると、な。別に俺は金に困っててこんなことしてるわけでもないからな」


「どういうこと?」


 意味不明な発言をする男に茜は思わず聞いてしまった。


「冥土の土産に俺の身の上話でも聞きたいってか?いいぜ。ま、面白い話じゃねえけどよ」


 男は顔のほとんどを覆っていたマスクを外して若干ニヤつきながら話し出す。


「俺は金持ちのガキだった。親が金持ちで何不自由なく生きてきた」


 ありがちなストーリーに茜は少し落胆した。「順風満帆ゆえの反動」フィクションでもよく聞く。


「正直つまらなかったさ。一度も汚れない綺麗な手に、競争を知らないガキ。だから、汚してみたんだよ」


「どうやって?」


「親を殺した」


 茜は興味を取り戻した。


「思っちまったんだよ。この生活の原因は、親だって」


 男は無精髭をいじりながらニヤリと笑みを浮かべた。

 茜も若干口角を上げた。


「面白いか?」


「まったく」


 そうかよ、と男は拗ねたように目を逸らした。雫の滴る音が響く。


「....俺だけが話すのは不公平だよな」


「え?」


「お前の話も聞かせろよ」


 男はぶっきらぼうに言った。帽子も外しナイフも置いて、完全に強盗を忘れているようだ。


「つまらない話聞きたくないでしょ...」


「聞かないとわからんがな?」


 男は茜の目をじっと見つめる。引く気はないと、茜はすぐに理解した。


「笑ったら許さないから」


「俺の話を笑ったやつが言うのか?」


 確かにその通りだと納得してしまったが茜は無視して話を始めた。


「その、えっと...」

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