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クリアしないと死ぬゲームに転生した落ちこぼれ令嬢のはずが、いつの間にか裏ルートで溺愛されてました  作者: 瑞貴
第2章 個別ルート

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34 デートイベント③

 黒い文字が剥がれ、書かれている店名が読めないほどの古びた看板と、年季の入った外観が、いかにも「老舗です」という、たたずまいだ。


 中に入ると、外観からは想像がつかないほど整えられており、落ち着いた雰囲気の店内である。

 今しがた、店主は堅物とジェラルドから聞いたばかり。

 私の想像では、不機嫌を絵に描いたおじさんが登場するかと思ったが、そうではなかった。


 人当たりのよさそうな、ほんわかとした空気を放つお兄さんがいるだけ。

 老舗の魔道具屋の店主にしては、若すぎる気がする。店主の息子だろうか?


 そんなことを考えていると、彼がこちらを見て、穏やかな口調で尋ねてきた。


「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」


「あれ? 店主はいないのか?」

 端的な言葉で切り返したのは、ジェラルドだった。


 やはり目の前にいる若い男性は、店主ではないようだし、通い慣れているジェラルドにとっても、知らない人物みたいだ。


 前置きのない会話は、とても知り合いとは思えない。ジェラルドの口調が、かなりつっけんどんな言い方なので、この2人の間に面識はないのだろう。


 欲しいものを答えるよりも、希少な魔道具を売る裁量があるのかが、気になるところ。


 そう考えたのは、ジェラルドも同じだった。


 ただ私はどうしたらいいのかわからず、戸惑うだけだったけど、さすが高位貴族。ジュラルドの表情は一瞬で穏やかなものに変わり、丁寧に素性を確認し始めたのだ。  

 出る幕のない私は、高位教育を受けた貴族の処世術に感心するだけで、静かに耳を傾けた。

 

「ああ~、今日は用事があるからって言うので、留守を預かっているんですよ」


「そうなのか。君はあの店主に店を任されるぐらいなんだから、かなり信用されているんだな」


「僕は甥なんで彼の頑固さに慣れていますからね。だけどお客さん、メルビンおじさんのことを、よくご存じなんですね」

 そう言った彼は、はにかんだように笑った。


「へぇ~、甥がいるのは知らなかった。まあ、あの店主が自分の話をすることはないからな」


「メルビンおじさんなら、そうでしょうね」

 話題に上がっている店主は、とっつきにくいけど、憎めない性格なのだろうか? くすくすと笑いを含む会話が、なんだかんだ言っても、この店の店主は愛されているんだなと感じてしまう。


 そんな店主の人柄を語る和やかな会話が何度か交わされた店内には、入店時に感じた張りつめた空気は、すでに消えていた。


 魔道具を買うのであれば、やはり魔導士団長の息子のジェラルドに頼ったのは、正解だった。


 私が胸を撫でおろした直後、ジェラルドに促されたため、今日の目的を伝えようと一歩前に出た。


「えっと私……実は魔法が使えなくて」


 一気に切り出すことはできず、中和魔法のことは伏せておいた。


 店番の彼は、私の存在を、まるで信じられないものを見るように、目を丸くした。

 まあ、魔法を使えない貴族なんてかなり珍しいのだから、反応は予測していたけどね。


「えっと~、その制服はラビリンス学園ですね。魔法が使えないのに通うのは大変でしょう」


「ええ、まあ……」


 中和魔法のことを、軽々しく口にしていいのか迷ってしまい、そっけない相づちを返した。


 その間、アルフォンスもジェラルドも無口だった。


「それなら――これなんてどうでしょう?」


 と言った店主が棚の奥から、ブレスレット型の魔道具を取り出してきた。


 気が急いてしまい、首を伸ばして尋ねる。


「これはどんな効果があるんですか?」

 トレーの上に置かれたブレスレット。

 それをよく見てみたいと思い、覗き込もうとしたが、それより先に、店番の彼が手に取ってしまい、色や形もわからなかった。


 だが、にこやかに微笑む店番の彼が、自信げに言った。


「自分の身体機能を向上させる魔道具ですよ」


 その説明の直後。

 店主はなぜか、手を軽く台の上に置いていたアルフォンスの腕に装着したのだ。


 あれ? 魔道具を欲しがっているのは私なのに、どうして私に試着させないの? 変じゃない?


 ――そう首を傾げた次の瞬間。


 アルフォンスの眉が、ピクリと動いた。


 まるで、何かに気づいたみたいなのに、彼は何も言わないし、微動だにしない。


 違和感を覚えたのは、私の考え過ぎだろうか?


 そう思っていると、動揺の色が混じるジェラルドの声が聞こえた。


「お、おい! なんだよ!」


 ハッとして顔を向けると、店番の彼がジェラルドの手を掴み、強引にブレスレットを着けていたのだ。


「え? 何?」


 私の呟きの直後、カチッという、金具が閉まる音が店内に響き、再びジェラルドが大きな声を出した。


「おい、ちょっと待て! これはなんだ!」


 今はデートイベントの最中だ。イベントは、市井の散策と一緒にスイーツを食べるという、よくありそうな甘い雰囲気漂う時間だと聞いていた。


 なのに今横にいるのは、激昂するジェラルド。


 デートイベントにこんなシーンはないはず……。

 ――嫌な予感がする。

 どうしてか、ゲームのストーリーから、大きくずれている……。

 

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