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クリアしないと死ぬゲームに転生した落ちこぼれ令嬢のはずが、いつの間にか裏ルートで溺愛されてました  作者: 瑞貴
第1章 死なないためのルート選択

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17 ポーション作り②

「俺たちのグループが一番最後に戻ってきたようだね」


 賑やかな教室へ入ってすぐに、アルフォンスが口を開いた。


「うん。なんか魔草を誰の収得物にするかと、言い合ってるみたいだけど、みんな随分と必死そうね」


 元々、10株くらいしか裏山にないため、順当に収穫できてもグループに1つの割合でしか、ゲットしていないのだ。

 そのため3人で輪になり、教室の至る所で話し合いやら、じゃんけんをしているのだ。掛け声がまさに聞き慣れた「じゃんけんポン」なので、前世のままで笑ってしまったけど。


 クスっと笑っている私に、冷静なアルフォンスがしみじみと語った。


「ポーションには、ちょうど1株分の魔草が必要だから、作れる人と作れない人に分かれるし、気持ち的に取り合いにもなるよね」


「確かにそうね」

 と相槌を打った私は、今にも喧嘩に発展しそうな空気の中、呑気な顔で魔草を持っていることに危険を感じ、周囲の生徒に魔草が見つからないように、背後に隠した。


 ちなみに先生の事前説明では、薬草を原料にした体力回復ポーションをクラス全員で作ったあとに、魔草を持っている人は魔力回復ポーションも、続けて作る手順らしい。


 どうやら2つのポーションの作り方は同じなので、魔草を持っている人だけ、各自で進めて作るというスタンスだ。それがなんともざっくりしている。


 日本の授業のように、クラスみんなが一斉に同じことをしないみたいで、少し違う感覚に驚いた。


 魔力回復ポーションを作れない人がいてもいいという理由は、ちゃんとあるみたい。

 学園側の考えでは、チームに1つでも魔力回復ポーションがあればいいという大雑把な括りらしい。


 突如、「おい!」という大きな声が教室に響く。


 どうやらそれは、2グループで手を組んだのに、魔草を1株しか持って来られなかったチームから上がったものだ。

 机の真ん中に魔草を1株置き、それを取り囲む人数が6人もいるのだから。


 自分が発見者だと主張する者と収穫者に権利があると言い張る人物。それは別のグループに所属しているせいで起きているみたいだ。


 魔草を採取することでチーム構成員に加点があるが、それはあくまでも、3人一組のグループに対してである。


 ここで無情にも、加点ありの3人と、なしの3人に分類されてしまう。

 現実問題、演習の成績が絡むとなれば、円満に解決するとも思えない。他人事ながら、内心、お気の毒様と手を合わせておいた。

 まあ仕方ないでしょうね。これはもう、大きなグループの弊害なんだから。


 ちなみにこの加点だが、魔草を採取してきたグループには、1株10点の加点だ。

 なので私とアルフォンスとリュカには、演習の成績がそれぞれ30点ずつ加点される。

 文句なしの満点。好スタートなので、今は素直に嬉しい。


 自分の手にある魔草をしみじみと見れば、胸にじーんと込み上げるものがある。

 このまま一息つきたいところだが、次の授業の時間も迫ってくるため、横にいるアルフォンスに顔を向けた。


「お願いなんだけど、私の魔草を預かっていてくれる? 次の授業の準備をしたいから」


「もちろん構わないよ」


 にっこりと快諾してくれたアルフォンスへ魔草を預け、化粧室へと向かった。


◇◇◇


 手を洗おうと水道の水を流した洗面所の鏡に自分が映っている。

 はちみつ色の金髪に、アメジストのような薄紫色に輝く瞳。その容姿が自分だという自覚は、いまいちないけど。この美人が自分なんだよねと、鏡の前で、何度かポーズを決めた。


 そうして教室へ戻る廊下。そこでバッタリと、真正面からミラベルと鉢合わせたのだ。


「あら、リリアーヌお姉様じゃない」

 私は無視をしようと思ったが、そうはいかなかった。

 私を見るなり、ミラベルの方から声をかけてきた。他に人の気配のない廊下で。


「何か言いたいことでもあるのかしら?」


「戻りが随分と遅かったのね。ふふっ、どうせ魔草を見つけられなくて、ぎりぎりまで粘って探していたんでしょ」


「変な言いがかりはよしてよ。ちゃんと採って来たわ」


「何を採ってきたのかしら? ただの薬草を採ってきても、課題は違うわよ」


「魔草に決まっているでしょう。かなり山頂付近まで行ったから、戻ってくるまで時間がかかっただけだし」


「嘘ばっかり。だって、手ぶらじゃない。左の道にはないと伝えてあげたのに、忠告も聞かずに向かうようなまぬけだから、そんな見栄も張りたくなるか」


 生憎私が手ぶらで廊下を歩いているから、勘違いさせたみたいだ。

 とはいえちゃんと収穫はある。私の分はアルフォンスが持っているだけで。


 その事実を伝えようと思ったとき──。


 背後から、アルフォンスの軽快な声が聞こえ、私とミラベルは同時に振り返った。


「悪いけど、このまま教室へ戻るなら、リュカのも合わせて、3人分の魔草を持っていてくれる? さすがに机にこのまま置いておくのは盗まれそうだし」


 普段どおりのアルフォンスに、私とミラベルの会話が聞こえていたのかわからない。


 きっと聞こえていなかったと感じるくらい、穏やかな表情で、3人分の魔草を差し出してきた。


 それを見たミラベルが、ぎょっとした顔のまま、硬直している。


 それもそうだろう。私たちの収穫がゼロだと思い込んでいたのに、こうしてメンバー全員の魔草を手にしているのだから。


 真っ青になるミラベルを横目に、私はアルフォンスに対し、にっこりと笑いかけた。


「いろいろ気遣ってくれてありがとう。リュカが教室に戻ったら渡しておくね」


「そうしてくれると助かる」

 じゃあねとアルフォンスを見送り、3人分の魔草を握ったままミラベルに向き直った。


 そうすると、動揺を隠しきれず、ぷるぷると震えるミラベルが、目を大きく見開いているため、何か言われる前に私が先に言葉をかけた。


「ほらね、私たちは3人分採ってきたのよ。それに対して何か文句でもあるの?」


 状況を理解しきれていないのか? ミラベルは私の話を勝手に否定し始めた。


「あるわけないわ! このクラスでメンバー全員分の魔草を収穫できたのは、ベルナールのチームだけなのよ。それに2人分採ってきたのだって、私のところだけなの!」


「へぇ〜、そうなのね。じゃあ、30点の加点が入るのは、6人ってことか」


「私が言いたいことは、そんなことじゃないから。どうしてあんたのグループが、全員分の魔草を見つけているのよ! 何か不正をしたんでしょう!?」


 目を血走らせたミラベルが口にした「ベルナールのチーム」とは、もちろんゲームの攻略キャラのことだ。


 ベルナールたちは、血筋的にも恵まれている。それはクラス中が知っているわけで。


 演習スキルが高くて当然だから、全員が魔草を採って来るのはお決まりだろうし、みんなわかっていたことだ。


 そんなチートグループと、魔法が使えない私が構成要員に入っている最下位グループが並ぶ結果となれば、驚かれて当然だろう。


 とはいえ、私の手の中にある魔草が本物であることは、一度魔草を見た者なら一目瞭然だ。

 自分が私に負けたのが悔しくて、ただ言いがかりをつけたいのだけなのが、見て取れる。


「ミラベルが信じたくなくても、本物だし。残念ね」

「あらかじめ用意していたのね。卑怯者」


 子どものような言動に、うんざりしてしまう。

 まぁ、ここで言い合いをしても仕方ないと思い、小さく息を吐いてから、真顔になって告げた。


「魔草は採ってすぐポーションにしないといけないから、自分たちで採取しているのよ。仕込んでも意味がないでしょう」


「だって、あんたたちが向かった先には、魔草の魔力は少しも感じなかったのに……。絶対に何か不正をしたのよ」


 山道で出会った時点で、ズルなんてしていないのもわかっているだろうに……。


 ミラベルときたら、どこまでも私を問題児にしたいわけだ。

 ここまで言われれば、さすがに言い返したくもなる。


 だが、私たちが魔草を採って来た一体に結界が張られていた以上、迂闊なことを言うのはやめ、平穏に済ませることにした。


「実は私たちも魔力は感じていなかったんだけどね。私たちが裏山に到着したときには、すでに出遅れていたから、一か八かでみんなと反対方向へ行ったら、偶然見つけたって感じかな」


「そ、そんな……ことがあるの……?」

 ミラベルは悔しそうに口唇を噛んだ。


「私たちは運が良かったのよ。おかげで私たちは、全員が魔力回復ポーションを作れるわ」


 その言葉に、ミラベルは腹を立てたのだろう。真っ赤な顔をして私の前から消えて行った。


 悔しそうにするミラベルの姿を目の当たりにして、なんとなくすっきりしたところで、アルフォンスが再び通りかかった。


「次の授業は魔法準備室だよね。一緒に行こう」


「あっ、でも、朝一に渡されたポーションを入れる瓶を教室に置いたままだ」


「急ぐ必要もないし、教室へ取りに行ってから向かおう。リュカも魔草を待っているだろうし」


「だねぇ〜」

 と弾むように返した私は、仲間がいることに嬉しくなった。


 ご機嫌で教室に戻れば、私たちを待つリュカが焦る様子もなくいたため、預かっていた魔草を無事に返し、3人でのんびりおしゃべりしながら、魔法準備教室へ向かった。


 ◇◇◇

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