16 ポーション作り①
私がリュカを好きかどうかなんてことを、アルフォンスから質問されるとは思ってもいなかったし、平民の彼が貴族に対して恋愛に関する質問をぶつけてくることに、かなり驚いた。
それにもしも、アルフォンスが私を好きになりかけているなら、最も望んでいないことだから。
私たちは絶対に結ばれないし、2人に未来はない。
彼が私に恋心を持っているなら、確実に摘み取らないといけない。
私は、彼の気持ちに応えられないから。
好きだけど、ごめんね。
彼は私を好きになるはずがないし、私の勘違いだって、言い聞かせていかないとね。
私の気持ちが、これ以上膨らまないように。
だからアルフォンスが、こうもはっきり恋愛感情を確認してくる理由で、「私のことを好き以外でなんだろうか?」と考えてみれば、十中八九これだろうと思うことが、パッと頭に浮かんだ。
男女3人のグループでカップルができれば、残された人が気まずい。そういうことだろう。
実のところ、その手の経験が私にもある。
中学生のころ、部活帰りに帰っていたメンバーが、まさに3人組だった。
男女の割合が今の状況とは違い、女子2人に男子1人の、何でも話せる仲良しグループで帰っていたのだ。
中学1年のときは、本当に楽しくお喋りをしながら帰っていたのに、2年になるころには、私を除く2人が男女交際を始めていたのだから。
あるとき、2人が手をつないでいるのに気づいて、私が冗談で「付き合ってるカップルみたいだね」と茶化したら、照れくさそうに頬を赤らめた2人が「1か月前から付き合っている」と言い出した時には、顎を外した。
3人で親友だと思っていたのに、私がいると、なんだかギクシャクしてしまい、明らかにお邪魔虫みたいになっていた。
その空気に耐え切れなくなり、急いでいるからと何度か先に帰れば、いつしか一人で帰宅するのが当たり前になった。そんな苦い思い出がある。
あのときは、しばらく夜も眠れず落ち込んだものだ。
おそらくアルフォンスも、かつての私のポジションになるのが嫌で、あらかじめ確認したに違いない。それしか思い浮かばないし。
リュカの好感度を上げられなかった私は、アルフォンスが心配するような流れになれるわけもないから安心して欲しい。
この3人の中で、愛だの恋だのという関係は生まれない。私たちにあるのはチームワークと友情。これだけだ!
自分で言っておいてなんだが、恋愛乙女ゲームのヒロインなくせに、こんな宣言をしていて、涙が出そうだ。
私としては相当に不本意だが、アルフォンスとのラブい展開にも、彼が気にするいちゃいちゃの展開にも、断じてなりえない。
これ以上、男女を意識するのはやめましょう。そんな気持ちで彼の顔を覗く。
すると照れくさそうに視線を外したアルフォンスから、案の定、私が考えたとおりの答えが返ってきた。
「別に深い理由はないけど、リリアーヌがリュカのことを好きなら、困ったなっていうか、どうしようかなって思っただけだよ」
「そ、そっか~、そうなんだ。でも、リュカを誘ったことに深い意味はないから気にしないで」
それを聞いたアルフォンスが、「良かった」と安堵の息を吐き、サファイアブルーの瞳を細め、優しい笑みを見せた。
その王子様スマイルに、思わずドキッとしてしまう。
何度も同じことを感じるが、彼が攻略対象じゃないのが信じられない。
それくらい、色香が駄々洩れなのだ。
私としては、話しやすいし、気遣いもできるアルフォンスが攻略対象なら、凄く嬉いし、素直になれるのだが、まあ、そんな都合よくゲームは作られていないから仕方ない。
「それならさ、俺がリリアーヌの特訓に付き合ってあげるよ。同じチームだし、一番適任だと思うから」
「そうだね。魔法の練習にアルフォンスが付き合ってくれるなら嬉しいな」
その言葉に偽りはなかった。
だけど、本当にそれでよいのだろうかと、胸がざわざわしていた。
というのも、魔法の特訓に付き合って欲しいという申し出は、個別ルートの中で、結構大事なイベントだった。
魔法が使えないリリアーヌにとって、切っても切れないイベントが、魔法の特訓なんだけど……。困ったな。
リュカルートに入るのを逃してしまったとはいえ、他の3人の誰かを攻略しないと、私は死ぬ。
前世に引き続き、今回も恋人ができる前に死ぬなんて、泣きそう。
人生で一度は、キスくらいしたい!
モテる人には私の気持ちなんてわからないだろうが、転生前はアラサーだったのに、キス1つしたことないんだから、切実だ。
ずっと憧れていたファーストキスは、どんな感覚なのか……それを知るまでは死にたくないし、成仏できない!
クリアしないと死ぬゲームに転生した身で、狙ったリュカとの個別ルートに入り損ねてしまった身である。
どっからどうみても大ピンチの私は、攻略対象ではないアルフォンスにイベントの時間を使っている場合じゃないのに……。
特訓イベントは、おいおい何とかするしかないわね、と考えながら教室へ戻った。
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