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クリアしないと死ぬゲームに転生した落ちこぼれ令嬢のはずが、いつの間にか裏ルートで溺愛されてました  作者: 瑞貴
第1章 死なないためのルート選択

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10/26

10 魔草採取①

 今日の午前中は、あらかじめ予告されていた課外演習である。

 なので与えられる課題を教えてもらうため、間もなく教室にやって来る担任を待っているところだ。


 転生してからというもの、連日、タスクの大渋滞でバタバタ感がひどい。

 そのせいで、まだ3日目だというのに、この世界で1か月くらい過ごしている気がする。


 そして何より今日は、一段とそわそわしている。

 緊張と不安で胸がドキドキしているのは、この演習がリュカとの初回イベントという扱いのはずだから。


 初回イベントって何? と、思うわよね。

 私も妹に同じ質問をした記憶がある。

 だからちゃんと覚えているんだけど、ここで失敗すると、その攻略対象の個別ルートに進む方法がなくなるみたい。


 初回イベント中に、2回目の招待チケットを受け取るのがポイントらしいんだけど、どうやって受け取るか? なんて知るわけもない。


 ちなみにその招待チケットっていうのが、いわゆる個別ルートに入るきっかけらしいのよね。よくわからないけど。


 まあ、ゲームみたいにわかりやすいチケットは貰えないはずだから、次回以降の約束を、何かしら取り付ける感じかなって、私なりに解釈している。


 ラビリンス学園には攻略対象が4人いるとはいえ、難易度の低いリュカでヘマをすれば、次はないと考えている。だから実質1人くらいの覚悟で挑んでいる私は、リュカに自分の未来をかけているつもりだ。

 何度も言うけど、クリアしないと死ぬゲームなんだから、全力でいくしかない。


「はぁ〜〜あぁ」

 と、深いため息が漏れた。

 私って、乙女ゲームに転生したはずなのに、どうして生きるか、死ぬかのサバイバルゲームになっているんだろう。

 初めての彼氏を作って、恋をしたいだけなのにな……。


 私の深いため息が聞こえたのか、アルフォンスが心配げに声をかけてきた。

「リリアーヌは緊張しているの?」


「う〜ん、まあね。魔法を使えない自分が、お荷物にならないか、不安だよね」


「俺がいるんだから、大丈夫だって」


「ねぇ、いつもどうしてそんなに自信があるの?」


「俺、生まれつき、魔力が人の何倍もあるからね。でも、これはリリアーヌだけの秘密にしておいて」


「ふふっ、もう嘘ばっかりね。何倍も魔力があるのに、肌身離さず身を守る魔道具を着けているわけないでしょう」

 アルフォンスがまた「あり得ない話をしているな」と、ひと笑いしつつ、おどけた言葉で返した。

 ちょうどその直後、リュカも私たちの所に合流した。

 

「日直の仕事をしていたら、すっかり遅くなりました。もう打ち合わせは始まっていましたか?」


「いいえまだよ。リュカが来るまで待っていたからね」

 3人で1つのグループを作って活動するため、クラスの至る所でひそひそと打ち合わせをしている。


 すると、教室の様子を見回したアルフォンスが、不思議そうに尋ねた。

「なんであそこのグループは、6人もいるんだろう?」


「あー、2つのグループが協力し合うことを協定しているんですよ。今回の演習は初回なので危険はないはずですが、魔物の討伐となれば、人数が多い方が有利ですし」

 さすがリュカ。クラスの事情に精通している。

 無関心枠と無視枠の落第点コンビでは、知りえない話を入手しているではないか。


 グッジョブ! と、内心親指を立てた。

 こちらは落第点が2人も所属しているのだ。

 円滑な演習のためにも、我々も他のグループと手を組まないかと、話を振った。


「えーと、私たちって、どこからも誘われていないわよね」


「俺たちは3人がちょうどいいから、むしろ誘われなくてよかったよね!」

 なんてことだ!

 アルフォンスってば、誘われていないことを前向きに捉えていた。


「いや、でも私たちって落第点コンビなのよ。そこに巻き込まれたリュカのこともあるし、どこかと組まない?」


「チームを大きくするということは、効率や安全性が上がる半面、個人の取り分は小さくなる。俺たちは、ここから見返すんだから、3人のままがベストだよ」

 真面目な口調で言い切ったアルフォンスに、リュカが対抗してくれるのを期待したのだが……。

 無情にもリュカもにっこりと笑った。


「そうですね。僕もアルフォンスの考えに賛成なので、このままでいきましょう」


 まあ、リュカもアルフォンスも、他のグループとの協力を望んでいないとなれば、ここは引くしかなかったわけだ。


 確かに私たちのグループと手を組んでくれるところはないわよね。

 そもそも同じレベルのグループが合体するなら、互いにメリットもあるけど、うちみたいな弱小チームと組んだところで、美味しい要素は1つもないのだから。


 声をかけるだけ無駄だったと、内心、反省した。


 自分で言っていても悲しくなるけど、こんな最悪な演習グループに巻き込まれたリュカって、すごいかも。


 だって、嫌な顔を一切せずに、この現状を受け入れているんだから。もう神みたいで、思わず拝みたくなる。やはり人格者というのが伝わってくるわ。


 私がキョロキョロと他のグループを気にしていると、冷静なリュカが提案してきた。


「グループのリーダーを決めましょうか」


 そう聞かれても答えは決まっている。

 どう見ても、リュカが適任としか思えないのに、わざわざ聞いてくるなんて、できた人間だ。


 だが、リーダーという責任までリュカに任せ、全てを頼りきるのは、1人の負担が大きいだろうし、偏りが生じ、危険な気もした。

 そのため改めて声に出し、確認したくなった。


「リーダーは、どんな役割があるのかしら?」

 私の率直な疑問に、穏やかな笑顔を見せるアルフォンスが見解を口にした。


「3人の意見がバラバラになったときは、リーダーの意見を尊重するってことでいいんじゃないかな? それ以上の役割は、個々の実力がはっきりしない今は決めない方がいいと思うし」

 昨日の小テストで、実力は見えていると、思わず突っ込みを入れたくなった。

 けれど、アルフォンス的には、なぜか実力を発揮していないと言い張るから、ここは黙っておくことにした。


「僕はアルフォンスの意見に賛成だけど、リリアーヌはどう思う?」

 そう尋ねられたため、私の考えをはっきりと伝えた。


「それなら、うちのグループのリーダーは、リュカがいいんじゃないかな?」


 リュカ推しの私の1票にアルフォンスも賛同したため、ここは無難にリュカがリーダーに決定した。


 周囲を見れば、リーダーを決めるだけで白熱した言葉が飛んでいるところもある。


 爵位の上下は関係ない学園というのは、まさに体裁だけなのね。


 貴族という権力者が揃えば、たとえ成績が下であろうと、誰かにリーダーを譲りたくない感情が大きいみたいだ。このグループには無縁の感覚ね、とこのときまでは、何も知らない私は、他人事のように捉えていた。


◇◇◇


「今日の演習って、どんな課題なんだろうね」


「どうやら裏山で魔草を採ってくる課題みたいですよ。偶然、職員室で聞こえちゃいました」

 私の質問に、少し前まで日直の仕事をしていたリュカが、こっそりと教えてくれた。


「ふふふっ、実は私は鼻が利くから、魔草を見つけるのは得意だと思う」


「リリアーヌに限って、それはないと思いますけど」


 ドヤ顔で言ってみたら、リュカがドン引きしている。


 あれ? おかしい……。

 やらかした気がする。


 今は高校生くらいの容姿だが、中身は三十路だ。

 こうみえても彼らの倍近く、人生経験を重ねているため、空気を読むのは案外得意である。


 その勘をもってして、これは理由付きで私の言葉を信じていないやつだと察し、「なんでもないです」と、すぐに撤回した。


 私はすでに引いたというのに、アルフォンスが不思議そうに口を開く。


「リリアーヌは、魔力探知が得意ってことなのか?」


「魔力探知なのかわからないけど、魔草をいっぱい摘んだ記憶があるんだよね」

 記憶というのは、前世の記憶だ。

 しかも、自分が先導する形で課題をこなしていた。

 だからここも、しっかり私が動いていく必要があると、薄々ながらも感じている。


 この先、ちゃんと意見を述べるつもりでいたから先手を打ったつもりなのに、変な空気にしてしまい、墓穴を掘ったかもしれない。

 

 そう思っていると、リュカが淡々と事情を説明してくれた。


「魔力量と魔力探知能力は比例するから、魔法が使えないくらい魔力の少ないリリアーヌが得意だというのは、ちょっと無理があるんだよね」


「あはは……そうなのね。きっと他の誰かが見つけた群生地で採取した記憶だと思うわ。でも草刈りは得意だから頼りにしてよね」

 笑って必死に誤魔化した。


 やばいわね。転生してからというもの、苦し紛れの言い訳ばかりだ。

 絶対に怪しんでいるリュカが、ジト目で見つめているし、裏山へ行く前から失敗続きじゃない。

 内心、放心状態なんだけど……すでに始まったイベントが止まるわけもない。


 それから続けたリュカの説明によると、魔草はどうやら微量の魔力を発しており、そのわずかな魔力を感知して探し当てるのが普通のやり方らしい。


 だけど他に魔力を発する存在が近づいてくると、魔力の放出をやめるみたい。

 このクラスの人間は、みんな魔力があるから、魔草の気配は消えるという理解だ。

 そういうことだから、ある程度まで近づいた先は、目視によって探し当てるしかないってことね。


 離れた位置から、いかに正確な場所を探知ができるかが、重要らしい。


 そんな事情があるため、魔法が使えない私は、魔力探知なんてできるわけがないという、リュカの見解は確かに一番しっくりくる。


 だけどゲームのイベントで、リリアーヌが道を決めるんだけど……。

 演習中、きっと何かしなければいけない。

 それはわかっているけど、彼らの見解と前世の知識が異なるため、言い返すのはやめておいた。


◇◇◇

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