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リーマン投資  作者: 黒﨑 弘
本編

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9/10

第六章 塩田参法その弐「俗受刹那」

 本日、浩と研史は新しく工作機械を入れたいという真野精工山梨工場へカタログ持参、車で向かった。運転するのは研史。浩は助手席。カーラジオをつけて走行中。


 板橋本町から首都高速に乗り中央自動車道へ入る。


 浩は時計を見て

「約束の時間は午後1時だ。間に合うよな」

 運転しながら研史は

「よっぽどの大渋滞に巻き込まれない限り大丈夫です」

 今のところ渋滞はなく車はスムーズに走行中。


「今日は昼飯持ってきていないもんな。とりあえず現地近くまで行ったら、どこか食堂に入って昼食としよう」

「はい。そうしましょう」


 ラジオからおもしろい話が聞こえてくる。

(20代OLのファッションリーダーとして業界を賑わせたあの金井夕子がアパレルブランド・クリスタルデザインの社外取締役に就任するという情報が入ってきました。

 クリスタルデザインでは来月開催の株主総会で株主からの承認を得る予定です)


 ラジオを聞いた研史は

「へぇー、あの金井夕子ちゃんが社外取締役か。・・・という事は、クリスタルデザインの株を持っている人は株主総会で金井夕子ちゃんに会うことが出来るんだ。俺もクリスタルデザインの株買って来年の株主総会出ようかな」


 それに対して浩は

「株を買う理由が、夕子ちゃんに会いたいからか・・・」

 その時、浩は塩田参法 その弐 俗受刹那が頭をよぎる。

 企業の業績に関係なく企業の人気、経営者・役員・社員の人気などによって株価が上昇する場合がある。短期勝負。


 浩は即、スマホでクリスタルデザインの株をチェックする。一株525円。しかも上昇中。

今現在、証券口座に入っている現金は63万円。

(どうする?10円上がるとしたら100株だと1,000円。いや、塩田参法 その弐 俗受刹那、このチャンスをものにしなければならない。1,100株買えるぞ。でも必ず上がるとは限らない。たくさん買ったらその分リスクが高くなる。500株くらいにしておくか)


 株価は530円に上昇。スマホで株価を見ている浩は焦る。

「短期勝負だ!よ~し。買えば分かるさ、1・2・3・ダー‼」

 浩は、クリスタルデザインの株を購入。

「クリスタルデザインの株、買った!」

「え、金河さんも金井夕子ちゃんのファンだったんですか?俺も買ったら来年2人で有給休暇取ってクリスタルデザインの株主総会行きますか」


 勝沼で中央自動車道を降りる。

11時30分、東京証券取引所午前中の取引終了。クリスタルデザインの株価は546円。

 真野精工梨工場近くの食堂へ入る。時間は11時50分。

浩は焼魚定食。研史は焼肉定食を注文する。


 昼食を終え12時20分、食堂を出る。

12時35分、真野精工山梨工場に到着。敷地内に車を停める。

「約束は1時だから早く行っては失礼だ。12時50分になったら車を出よう」

「分かりました」


 浩はスマホで株価をチェックする。午後の取引が始まったばかりである。

クリスタルデザインの株価は555円。まだ上昇中だ。


12時50分、クリスタルデザインの株価は567円。まだ上昇中。

 浩と研史は車を降り真野精工正面玄関から入る。

「どうも、マルコー赤羽営業所より参りました」

 事務所の若い女性社員が応対してくれる。「ご苦労様です。中でお待ちください」

会議室に通される。

 浩は思う。(商談中にスマホで株価チラチラ見ていたら真野精工さんに失礼だ。というか仕事中にそんな事をしてはならない。でも商談終わった時にはもう株価下がっているかもしれない。よし、商談が始まる前にクリスタルデザインの株、売却だ)

 すると会議室に真野精工社員が2名入ってくる。

「あ!」

 株を売ろうとしていたのに社員さんが入ってきて浩は、しまったと思った。

まずは名刺交換。メガネをかけた50代くらいの、いかにも管理職と言った感じの男性は製造部長の重松さん。

「遠いところご苦労様です。いつも東京の本社は、お世話になっているそうで」

「こちらこそお世話になっております。まずは機械を設置する場所を見たいのですが」

 「分かりました。それでは工場の設置場所に行きますか。こちらへどうぞ」

 先導してくれるのは30代くらいの長髪、製造主任の長谷さんだ。

 浩・研史・真野精工2人の計4人、現場へ向かう。


 機械の設置場所は中型の工作機械が設置出来るくらいのスペースがある。

浩はスマホのカメラを起動。

「写真を撮ってもよろしいでしょうか?」

「ええ、どうぞ構いませんよ」

それを見た研史は、

「あ、自分が写真撮りますか?」

「いや、写真は俺が撮るから、メジャー用意してくれ」

 機械の設置場所の正確な広さを測る。浩がメジャーで0地点を押さえる。研史がメジャーを伸ばし長さを測る。

写真撮影をしながら浩は分からないようにクリスタルデザインの株価をチェック。

一株574円。

(よし、とっとと売却して仕事に集中だ)

 浩は購入したクリスタルデザイン株をすべて売却した。

何枚か写真を撮り会議室に戻る。

会議室にてカタログを広げながら商品説明をする。搬入する工作機械、見積り、おおまかの搬入日が決まる。契約成立だ。


 午後3時過ぎ、浩と研史は真野精工山梨工場を出る。会社へ戻る車内。

浩はクリスタルデザインの株価を確認する。

本日最高値580円(午後1時33分)。2時過ぎから下がり始める。本日終値557円。

 

 研史は車を運転しながら契約がうまくいってほっとした表情である。

「契約うまくいって良かったですね」

「ああ、これでとりあえずは一安心だ。あとさぁ、株もうまくいったよ」

「株?」

「クリスタルデザインの株、530円で買って574円で売却だ。」

「530円を574円で売却・・・44円、100株で4,400円の利益ですか」

「いや、1,000株だから44,000円の利益だ」

「44,000円!」


 浩は思った。普通に株を買っても配当や株主優待が貰えるのはしばらく先だ。塩田参法の指南通りに売買をすれば即、儲かる。うん、塩田参法を信じれば必ず儲かる。そう確信するのであった。



また来週アップします。

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