第三章 証券口座を開設する
浩の家では給料が出て最初の金曜日は、唐揚げパーティーもしくは燻製パーティーを行う。
今月は唐揚げパーティーである。
幸栄、祐衣、祐真は楽しそうに唐揚げの下ごしらえをしている。そして祐衣が一言。
「ふつう唐揚げって言うと鶏なんだけど、うちは鶏以外もいろいろの唐揚げだね」
幸栄は答える。
「パパは海育ちだから海のものが好きなのよ」
下ごしらえしている具材は、鶏・タコ・ホタテ・タラ・ごぼうなどバラエティにとんだ唐揚げパーティーである。
祐真は去年、夏の思い出を思い出す。
「去年、パパの田舎行ったよね。新潟県上越市」
去年の夏、新幹線で家族4人、浩の田舎、新潟県上越市へ旅行に行った。サザエ・牡蠣・お刺身など海の幸を堪能。とても美味しかった。
祐衣も続けて話す。
「上越市だけど上越新幹線は走っていないんだよね」
「上越市は北陸新幹線だな。それから日本で初めてスキーをやった場所が上越市なんだよ」
と浩は生まれ故郷を自慢する。
「でもパパの学校は海の近くだから体育の授業でスキーがなかったの。だからスキーは上手じゃないんだよね」
と幸栄が言う。すると浩は、
「はい。その通りです」
素直に認めるのであった。
唐揚げ粉をまぶした具材を油へ投入。今回も上手に揚がった。
「鶏、タコ、ホタテ、タラ、ごぼう。やっぱりパパは海の物が好きだな。家族みんなで唐揚げパーティー、ビールが最高に美味い!」
浩は酔っぱらい過ぎる前に話をする事にした。
「ちょっと話があるんだけどさ」
「なに、なに」
幸栄、祐衣、祐真は浩に注目する。
「実は、証券会社の口座を作りたいんだ」
幸栄が最初に反応する。
「証券会社、しょうけん・・・?
あー!私の母さんがファンだったのよ、ショーケン」
「・・・・あーあー、俳優のショーケンさんね」
続いて祐衣が一言。
「ジャッキー・チェンの映画だ」
「クレージーモンキー笑拳ね。パパもジャッキー・チェン好きだから観たよ」
祐真はむずかしい顔をしながら言う。
「う~ん。おもしろい事浮かばないから何も言えない」
「おもしろい事言わなくてよし。とにかく俺の話を聞いてくれ」
幸栄が質問する。
「証券会社の口座を作るってどういう事?」
「株を買いたいなって思っている」
すかさず祐真が言う。
「カブだったらスーパーに売っているじゃない。祐真は糠漬けがいいな」
祐衣も負けじとおもしろい事を言う。
「パパもとうとう、おじさんが乗るバイク、スーパーカブが欲しくなったか」
「あー、お姉ちゃんのほうがおもしろい」
幸栄の表情が険しくなる。
「株を買いたいって・・・パチンコすら行った事がないあなたが。あ、先月研史君にパチンコ誘われて、それでとうとうギャンブルに目覚めたってか?」
「いやいや、株はギャンブルじゃないよ。投資だよ」
幸栄は浩がギャンブルに、はまってしまったのではないかと心配になり浩を問いただす。
「私は株の事はよく分からないけど、株を買ったとして、その株は上がるかもしれないし下がるかもしれない。それってようはギャンブルと同じって事じゃない」
「売買に重点を置くのではなくて、手頃な値段になったなと思ったら買ってずっと持っている。そうすると食事券や商品券を貰えたり配当金も貰えたりするんだ」
「素人が株なんかに手を出して大丈夫なの?」
「無理はしない。家族には迷惑をかけない。それでさ、積立金があるだろ」
「祐衣と祐真の積立金の事?」
「うん」
「あれはあなたも分かっているだろうけど祐衣、祐真が高校を卒業してから専門学校へ行きたいと言うかもしれない。短大へ行きたいと言うかも。今より学力が上がったら4年制の大学へ行きたいと言うかも。その時の為の積立よ」
「そのお金、一時的に投資に使わせてくれないか?」
幸栄は流石にちょっとびっくりした。
「ちょっとあなた、2人の為に積み立てているお金で株を買うつもり?今、家族に迷惑をかけないって言ったわよね」
「ああ。だから俺は、家族に迷惑をかけないで株式投資をする計画を立てた」
どういう事なのかちょっと分からず祐衣も質問する。
「家族に迷惑をかけないで株を買うの?」
「そうだ。みんな、俺の計画を聞いてくれ」
幸栄・祐衣・祐真はテーブルに座りながら浩に注目した。
「積立定期預金の一部を解約して俺に融通してほしい。そのお金を証券会社の口座に入れて投資をしたい。100万円融通してくれ!」
「100万円!」
100万円に3人は、びっくりだ。
「もちろん投資の素人が株をやるわけだから損するかもしれない。とりあえず年末までやらせてくれ。それで年末時点で口座の資産が100万円以下になってしまったら株は止める。俺には投資のセンスがないと思って諦める。
逆に100万円以上になっていたら、そのまま株を続けたいと思う。
そしてそれ以降は投資経験を積めばちょっと無理な投資もするかもしれない。だから100万円の資産に対して3割減、つまり100万円の資産が70万円以下になってしまったら即止め。証券口座は即解約する。
株で損失が出たら損失分はしっかり返済する。例えば30万円の赤字が出てしまったら2年間、俺の小遣いから天引きしてくれ。30万円÷24ヵ月=12,500円。積立預金にしていたら利子も付くだろうから12,500円+利子分だ」
「そこまでして、どうして株をやりたいわけ?」
完全に株式投資やる気満々の浩を見て、どうしてなのと幸栄は思った。
「俺は今までギャンブルなんかに手を出したことがない。まぁ、先月1回だけ研史に誘われて初めてパチンコに行ったけど。
でもそれは真面目とかじゃなくて、そういうのに手を出す勇気がなかっただけだと思うんだ。やってもどうせ、負けるだけだと思って。
これからはもっといろいろ挑戦してみようと思う。もちろん今言ったように家族には迷惑かけないようにするから」
「それで、うまくいかなかったときの対処法は分かったけど、儲かった時のあなたの望みは?負けた時のリスクがあるんだから勝った時のあなたのご褒美は何?」
「俺1人でいい思いしたってそんなに嬉しくない。だから儲かった時は、半分くらいは貯蓄にまわす。あとの半分で唐揚げパーティーの時にフグの唐揚げをメニューに加えるとか、家族で温泉旅行へ行く時は旅館のグレードをちょっと上げるとか。それが俺の望みかな」
幸栄は祐衣、祐真を見る。
「どうする。祐衣、祐真」
祐衣が答える。
「ママは賛成なの?」
「そうね。あなたはずっと真面目一筋で生きてきたんだから1回くらいこういうのも、悪くないかもしれない」
祐真も答える。
「私も賛成する。パパが儲かったら、おいしいもの食べようよ」
そして祐衣も答える。
「いいわよ。やるからには損しないように気を付けて!」
「ありがとう!幸栄ちゃん、祐衣ちゃん、祐真ちゃん」
「あなた、何か頼みごとがあると必ず、ちゃん付けて呼ぶわよね」
こうして浩は株式投資を始める事となりました。
後日、浩はインターネットで証券会社の口座開設手続きを行う。それから10日後、審査が通り無事、口座開設となった。
積立定期預金から100万円を下ろし証券口座に入れる。
これで株式投資が出来る状態になった。
また来週アップします。




