第一章 投資との出会い 2
会社へ戻ると事務の綾瀬一美さんが、「お帰りなさい」と言ってくれる。研史はとても嬉しそう。
綾瀬さんは1年前に入社。かわいい子が入社して研史はとても嬉しく思った。話はするが特に食事へ誘ったりという事はまだない。
もし誘って断られたらその後、気まずくなってしまうしと何も出来ない研史であった。
研史は報告書を書き、午後5時仕事終了。
浩と研史は会社を出て歩く。赤羽駅まで歩いて5分だ。その途中に居酒屋がある。
「金河さん、なんか今日はこのまま帰りたくないですよ。ここでちょっと飲んでいきませんか?」
「今日は水曜日じぁねーか。俺は外で飲むのは週末だけと決めているんだ。家に帰ったら、奥さんの料理とビールが俺を待っているしよぉ」
更に少し歩くとパチンコ店あり。研史は言う。
「パチンコちょっとやっていきませんか?30分でいいんで」
「俺、パチンコやったことがないんだよ」
それでも研史は浩を誘う。
「まぁまぁまぁ!やり方なら俺が教えますよ。入りましょう」
研史は浩をパチンコ店へと誘い入れる。
研史は、浩に球の買い方を教えてそれぞれの台の特徴を教える。
「金河さん、気に入った台で遊んでみてください」
浩と研史はお互い離れた台でパチンコを打ち始めた。
パチンコを打ち始めて20分、研史は玉切れ。
「あ~あ、気分が落ち込んでいる時は、パチンコも出ないか」
研史はパチンコ台の席を立ち、浩を探す。
「あ、居た」
研史は浩に近づく。
「金河さん、出ましょうか」
よく見ると、なんと浩の台はフィーバーしている。もうすぐ1箱満杯になりそうだ。
浩の隣の台で打っていたおじさんが、あふれそうになった箱を下に置き、新しい箱を用意してくれた。
「おいちゃん、ありがと!」
研史が来たのを浩は気が付く。
「パチンコって面白いかもしれないな!」
初めてのパチンコで絶好調な浩を見て、ぜんぜん出ない研史は何とも言えない気持ちだ。
浩のフィーバーは終了。たくさん球が入った箱を持って。
「よし!出るか」
浩と研史はパチンコ店を出てすぐの換金所に寄る。
換金すると、5,200円。
浩にとっては学生時代のアルバイト、そしてサラリーマンになってから会社からいただく給与・賞与以外の初めての収入だ。
「この5,200円の利益って来年の2月か3月、確定申告に行かないとならないのか?」
「パチンコで儲かったお金、確定申告する人いませんから」
少し歩くと研史が言う。
「金河さん、最後ここだけ!付き合ってください」
浩は研史の視線の方向を見る。2階建ての建物で1階はラーメン屋。2階は古本屋みたいだ。研史は2階を指差す。
「古本屋?」
「ここ、アイドル関係の写真集とか、けっこう置いてあるんですよ」
「またアイドルかよ。AKBN5の写真集かなんかあるのかよ?」
「あの子たちは、ご当地アイドルだから写真集とかないけど、昔のアイドル写真集とかあるんですよね。マユちゃんがJリーガーとデートしちゃったみたいだから、今日は昔好きだったアイドルの写真集、探しちゃおうかな」
浩と研史は階段で2階へ上がり古本屋に入る。
お店は、個人経営といった感じの狭い店舗である。
店内は、いろいろな古本が置いてある。
そして奥へ行くとアイドル関係のコーナーだ。写真集などたくさん置いてある。
そして浩が目にしたのは、モデル・エビちゃんの写真集(美品)1,500円。
「おー!やっぱエビちゃんはかわいいなぁ。あ、俺パチンコで儲けたんだ。買えるぞ!買っちゃおうかな?」
「金河さんも独身の時はアイドル好きだったんですか?」
「それほどでもないけどよ。でもエビちゃんはアイドルと言うよりはモデルさんだよ。
でもこの写真集、買って帰ったら幸栄に嫉妬される。これが原因で離婚問題に発展するかもしれない・・・止めるか」
写真集はビニールに包まれているので中は観られない。浩は表紙と裏面だけ観て我慢。
研史はそのままアイドル写真集を物色。
浩は店内をちょっと歩く。するとレジのところで店主とお客さんが会話中。
店主は、メガネをかけてひげを生やした50歳くらいの男性。お客さんは、髪の毛がややボサボサ。上下オレンジのジャージ姿でオタクっぽい男性。
お客さんは何冊か写真集・本を持ってきて買取交渉の最中だ。
店主はお客さんの持ってきた写真集・本を観て言った。
「この写真集は5冊で2,000円。あとこの古い本は200円てとこかな。全部で2,200円」
「いやいやご主人、今日持ってきたこの本、この相場の本は江戸時代に執筆された究極の相場指南書なんですよ。これさえあれば株でもFXでも儲け放題!」
「そんな大切の本、売っちゃっていいのかい?」
「俺はもう読んだから大切なところはみんな頭に入っているのよ」
店主も負けじと言い返す。
「だったらあんたは相当お金持ちってことなの?」
「いや俺は、まとまったお金があったら投資に使うんだけど、ちょっとお金があるとすぐパチンコ行っちゃうから、なかなか投資に使うお金が貯まらなくてね」
その店主と客のやり取りを見ていた浩は客と目が合う。そしてその客は浩に話し掛けてくる。
「ちょっと、そこのお兄さん。あなた投資に興味ない?この本はね、極み相場指南書といって江戸時代に塩田伊之助と言う人が書いたものなんだけど。
あ、申し遅れました。私、竹田と言います。この本でじっくり勉強して株やFXやったら儲かるよ!」
「私は金河と言います。江戸時代?江戸時代にしてはけっこうきれいだな」
「塩田伊之助の子孫が昭和の時代になってから新しく再発行したものなんだ。店のご主人は200円で買い取るって言っているんだけど、もうちょっと高くてもいいんじゃねえのって思うんですよ。どうだい
1,000円で買わないかい?」
店内で商売をしようとする竹田に思わず店主は一言。
「ちょっと、ちょっと。お店の中でお客さん同士の売買は止めてくださいよ」
「ご主人。大丈夫、大丈夫!俺は投資とか分からないしその本は欲しいと思わないな」
浩はきっぱりと断る。だか竹田は本の説明を続ける。
「この本には、初心者用株式投資指南も書かれてあるのよ。ほら、ここ。塩田参法。この法則を使えば初心者でも手頃な利益だったら出せる。
例えば、この塩田参法その壱、跳毬ある企業の利益が下がり株価も下がる。
しかし、ただ下がるのではない。ある程度まで下がると、やや上昇する。まるで毬を地面に落として跳ね返ってきたかのように。
つまり、下がるとこまで下がって上昇を始めるかな?というところで買う。そして上がり始めて下がってしまおうとするかな?というところで売る。これをやれば初心者でもそこそこの利益が出ると言う指南であるのですよ」
浩は当然、株の事は知らない。でもそんな簡単に、お金が儲かるわけがないと思った。
「そんなのうまくいくものかね?そもそも毬が跳ねるような動きをするとは限らないんじゃないの」
竹田は更に饒舌に説明する。
「株が暴落する時、跳毬の動きをする可能性が非常に高い!」
「ふ~ん。俺はパチンコなら今日覚えたからたまにならやるかもしれない。でも投資はやんないよ」
「残念!」竹田は少し考えてから。
「じゃあ、ご主人!それでいいや。全部で2,200円、お願いします」
竹田は2,200円を握りしめ、
「今晩は牛丼だ」と言い店を出て行った。
写真集を物色していた研史がレジまでやってきた。
「あった、あった」
手には写真集。
「やっぱ、彩姉の水着姿は最強ですよ」
レジで会計を済ませ2人は店を出る。
歩きながら。
「この写真集、昔持っていたんですよ。でも当時、付き合っていた彼女に、この写真集を持っているのを見つかって。私と彩姉、どっちが大切なのって言われちゃって。
その時、思い切って処分したんです」
「処分て、捨てちゃったのか?」
「いえ、友達に1,000円で売りました」
浩は店での出来事を研史に話す。
「さっきの店でレジに居た男性に投資の本買わないかって薦められちゃってさ。研史、確かおまえ株やっているんだよな」
「親戚の伯父さんが証券マンなんで、伯父さんの証券会社の口座を作ってちょっとだけやっています。いわゆるインカムゲインてやつですよ」
「インカムゲイン?」
「株を買ってずっと持っているんです。そうすると企業から食事券貰えたり、あと業績がいいと配当金も出るし。俺は牛丼屋とステーキ屋の株を持っています」
「牛丼屋とステーキ屋。やっぱ研史は肉好きだな」
「牛丼屋は吉松家。100株所有で半年に1度3,000円分の食事券が貰えます。あと配当金は年間2,000円出ました。
ステーキ屋は、ミートフード。300株所有でこちらも半年に1度3,000円分の食事券が貰えて配当金は
6,000円出ました。
俺はキャピタルゲイン。あ、売買ですけど、売買はやりません。多分、俺が売買やったら絶対損します」
駅前でバスに乗り、途中で研史が降りて2人は分かれる。浩も自宅近くの停留所で降りて自宅へ帰ってくる。
浩の家は一軒家、現在住宅ローン支払い中。会社は赤羽。自宅も赤羽。普段はバス通勤である。
ちなみに研史君は以前、会社の寮に住んでいたが現在はアパートで1人暮らしをしている。
浩の家には奥さんと、子供は女の子が2人。高校1年生と中学2年生。
仕事から帰ってきてから家族4人での夕食は浩にとって一番幸せなひとときである。ビールが最高に美味い。
続きも頑張って書いて来週アップします。よろしかったらブックマークよろしくお願いします。




