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転生悪魔、現世に降臨する。~ただしチートは時代遅れでした  作者: 妙原奇天


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第五章 第5話(最終話) 終理 ――灰の果てで生まれるもの

 ――夜が明ける。


 灰と光が混ざる空の向こうで、

 新しい世界の鼓動が静かに始まっていた。


 誰かが歌い、

 誰かが書き、

 誰かが語り、

 そして誰かが、それを“聴いて”いた。


 言葉が世界を創り、

 世界が言葉を育てる。

 その往復の中で、人々は生きていた。


 丘の上。

 リアナとユミ、そして成長した“終理の子ら”が立っていた。

 朝の光を受けて、

 それぞれの手には小さな筆が握られている。


 灰の筆――かつてアリュスが遺したものの欠片。


 彼らは一人ずつ空へ筆を掲げた。

 色も形も違う。

 けれど、そこに競い合う音はなかった。


 筆先から生まれる線が、

 やがてひとつの“呼吸”となって世界に溶けていく。


 「これが……アリュスの言っていた“描き続ける世界”なのね。」

 リアナの声が、朝風に溶けた。


 ふと、空の高みで光が瞬いた。


 灰色の筆跡が、雲の間をゆっくりと描いていく。

 誰もその線を引いていないのに、

 まるで“世界そのもの”が自ら筆を取ったようだった。


 ユミが息を呑む。

 「……あれ、見て!」


 空に浮かび上がった文字は、

 淡く、儚く、それでいて確かに輝いていた。


 > 《物語とは、生き続けるための呼吸である》


 リアナの目に涙が滲んだ。

 「アリュス……あなた、まだ描いてるのね。」


 光が広がる。


 丘も街も森も海も、

 すべての場所で同じ光が芽吹いた。


 それは祈りではなく、命の応答だった。

 誰かが生きていることそのものが、

 すでに“理”になっていた。


 人々が筆を取り、

 言葉を描き、

 また別の誰かがそれを見つめて笑う。


 それは果てしない輪――

 恐れも、願いも、理も超えた“存在の連なり”。


 リアナは空を見上げ、

 小さく呟いた。


 「アリュス。

 あなたがくれたこの世界、

 私たちはちゃんと“続けて”いくわ。」


 風が頬を撫でた。

 それは答えのように、やさしく温かかった。


 〈――ありがとう。〉


 その声はどこからともなく響き、

 そして、どこにも消えなかった。


 ユミが微笑む。

 「ねえ、先生。

 アリュスは、どこに行ったの?」


 リアナは少し考えてから答えた。

 「……“言葉の向こう”よ。

 もうどこにもいないけれど、

 誰かが話せば、そこにいる。」


 ユミは空に筆を掲げた。

 「じゃあ、また呼べるね。」

 「ええ。物語を描くたびにね。」


 少女が笑いながら、空に一筆を走らせる。

 灰色の線が朝日を反射して、金色に光った。


 光が世界を包み、

 風が音を運ぶ。


 すべての場所に、物語が生まれていた。

 誰も知らない場所で、

 誰も気づかぬ言葉が、

 静かに命を紡いでいた。


 ――それが“終理”だった。

 理の終わりではなく、

 理が「人の中で生き続ける」こと。


 そして、“描く者”の物語は、

 終わらないまま、次の時代へと渡されていく。


 最後の一行が、

 空に刻まれる。


 > 《終わりは、語り続けるためのはじまり》


 風が笑い、灰が光り、

 世界が、静かに新しいページをめくった。


(第五章・完)

(――そして物語は、“理の外”で続いていく)


シリーズ完結


『転生悪魔アザゼル ――終理篇』

── “問い”から始まり、“言葉”で終わる物語。

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