サイバイガル・タイムズ 二〇二四年 第十九号
『セントラル・ストリート 女子学生殺害』
昨日昼過ぎ、中央区画セントラル・ストリートで、女性一人の遺体が発見された。
遺体は首をほぼ切断された状態で、死因は失血死と思われる。
警備は現場付近にいた女学生・愛野紗衣良(二十一歳)を現行犯逮捕した。
取り調べによると愛野容疑者は犯行をすべて認めており、事件は早期解決が見込まれている。
ここで、事件のあらましに関して一部取り上げていく。
被害者となった女性は、言語学部英米語学科三年生のサン・ジアンさん(二十二歳)。
一方の容疑者・愛野紗衣良は言語学部東亜語学科三年生。
二人は事件前から関係を持っていて、調べではその二人の間に諍いがあったことが、今回の事件の一端であると明らかになっている。
その諍いとは、数日前に亡くなった一人の男子学生・原田峰次氏(故:二十三歳)を巡っての、男女間トラブルだ。
原田氏に好意を持っていた愛野容疑者は、彼の死因に疑問を抱く。
昨日昼頃、愛野容疑者はサンさんが彼の死因に関連していると考え、詰め寄った。
そこから言い争いになり、気付いた時には愛野容疑者は刃物を握っていたと話していて、怒りで自制を失ったところからは記憶が無く、セントラル・ストリートでサンさんを追い詰めていたという。
しかし彼女の首を切ったのは間違いないと証言していて、心神喪失を主張する気はないとしている。
犯行の瞬間は大多数の他生徒に目撃されており、彼女はその場ですぐに現行犯で逮捕された。
サンさんは首筋から大量の出血をし、そのまま地面に倒れ、間もなく息を引き取った。
救急隊が蘇生を試みるも、少しして完全に死亡が確認される。
現場を目撃した生徒の数名は体調不良を訴え、当時の現場状況はかなり悲惨なものだったと予測される。
――さて。次に、件の原田峰次氏の死について触れていく。
四日前、自身の住む四畳半の一室で、彼は遺体となって発見された。発見したのはサンさんだ。
彼の同級生であるサンさんは、夏季課題について原田氏に意見を求めようとして尋ねたところ、返事がなく、扉が開いていたため中に入り、その遺体を見つけるに至った。
一ヶ月もの間、誰にも姿を見せずに自身の部屋で机に向かい続けていた彼は、誰にも知られることなくその命を引き取った。
死因は心不全と公表されていて、余程無残になっていたのか、詳しい遺体の状態は伏せられている。
彼を訪ねたサンさんと原田氏に特別な関係があったという証拠は無いのだが、愛野容疑者は確信を持って二人が男女の関係にあったと証言している。
そして同時に、愛野容疑者と原田氏の関係も、現在の捜査結果からは何一つ窺えない。
彼女の証言がどこまで真実なのかはまだ明らかになっていないが、三人の間に何かしらのやり取りがあったことは間違いないと警備は考えている。
……ここまで客観的な事実を述べたが、これら全てはサイバイガルの外に公表されているものと同じ情報に過ぎない。
だがしかし、この事件の裏には一つのカースも関係していると言われている。
それは、仮に名付けるのなら『三つ目の宝珠』と称せられる、呪いの代物――――――。




