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運命《ノロイ》

 運命とは、呪いである。

 誰も彼もそのことを理解していない。

 『呪われた運命』という言い方は、二重表現のようなもの。

 もとより運命の正体は『呪い』なのだ。


     *


 霧宮翔子という女が今もこうして陽の下を歩くことが出来るのは、彼女を囲っていた悪意ある大人たちがいなくなったからに他ならない。

 傀儡となっていた彼女の人生が僅かだが前に進んだのは、ある日突然彼女の故郷に多大な援助が送られたことに起因している。

 日本政府は、彼女の力を金に変えていた者どもに安定した保障を与えることで、交換で彼女を手中に収めてみせる。

 だが、そもそも何故日本政府が彼女の存在に気付いたのかは、実のところ彼女自身把握していない。

 そこに、運命ノロイはあった。


     *


 『キング』と呼ばれる前、若かりし頃のチャールズ・ドレークは、本来表舞台に出て来られる男ではなかった。

 『韓信』という名を広め、母国で喧嘩に明け暮れていた若い頃の彼は、ある日スカウトに誘われて格闘技の試合に参加することになる。

 彼の筋力は明らかに人間の域を超えていて、一度でも彼の試合を見てしまった者は決して彼と戦おうとはしなくなる。

 しかし、彼はそれでも多くのファンの声のおかげでリングに上がることが出来ていた。

 彼を支えるスポンサー、メリックコーポレーションの広告宣伝能力の高さが理由だ。

 ただ、メリックコーポレーションと彼を繋げたスカウトの正体を、実は今もなお彼は知らずにいる。


     *


 久保清太郎は七年前、当時の君口快太によって摘発された超能力犯罪集団の一員として、その身柄を政府に預けられた。

 当時十四歳だった彼は既に何人もの人間を殺めており、快太からの進言がなければ『処分』されてもおかしくはなかった。

 結局政府は快太に対して清太郎の命を保証すると約束したが、その実快太の知らぬところで政府公認の暗殺者として利用していた。

 そんな彼は快太に恩義と恐怖を感じているが、自分の命を助けたいと望んだ人間が快太以外にもいたという事実は、決して知ることはなかった。


     *


 上柴六郎には許嫁がいた。冷徹で卑劣で残忍な許嫁が。

 友人を作ることすら許さないその許嫁と、玉の輿を狙う家族に嫌気がさしていた彼は、家族と許嫁に対して宣戦布告。

学園国家サイバイガルを卒業出来たら、許嫁の話を白紙にするという取り決めをすることに成功したのだ。

結果として卒業がもう目の前に来ている彼だが、彼の力だけでここまで来れたわけではない。

 もちろん彼はそんなこと理解しているが、そもそも彼が家族や許嫁に条件を提示してそれを飲んでもらえたのには、ある理由があったのだ。


     *


 運命とはやはり呪い。

 霧宮翔子を故郷から出すきっかけを作ったのは、ある一人の風景写真家。

 彼が翔子の住む村は何かを隠していると確信し、その情報を政府が手に入れた。

 

 そしてその男がこの村に来るきっかけは、チャールズ・ドレークに始めて接触したスカウトマンにあった。

 そのスカウトマンは風景写真家の男と友人であり、田舎の風景を撮りたいと言った写真家にそのスカウトマンが村の名前を提供したのだ。

 

 スカウトマンがのちの『キング』の存在を知ったのは、君口快太を研究していた科学者がこのスカウトマンの叔父で、その人物から超能力者に近い怪物がとある国にいるという話を聞いたため。

 

 研究者であるそのスカウトマンの叔父には娘がおり、その少女は少年の頃の久保清太郎が悪党に堕ちていく様子を小学校の頃に見て、ずっと救い出したいと願っていた。

 

 清太郎が処分されないように嘆願したその少女の声を政府に届けたのは、他ならぬ快太の高校の頃の先輩であり、超能力犯罪を快太と共に暴いた当時高校生探偵の少女。

 今はもう警察に入った彼女には、高尚な家柄とこれまで培ってきた人脈があり、上柴の家族と接触する機会もあった。

 彼女が落ち目だった上柴グループという企業にちょっとしたアドバイスをしただけで、上柴の人生における風向きは変わったのだ。


 ――――全ては呪われている。

 

 何もかもが繋がって、何もかもが関わっていく。

 二重表現もやむなし。それほどに濃く深く強く、運命と呪いは密接しているのだ。

 だからこそ敢えて言おう。

 彼らの運命は、呪われている――――――。


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