教育科学省『特対課』について メモ
〇真藤魎一
最も危険な人物は間違いなくこの男。快太君の『超能力』ほどではないにせよ、『怨霊』と彼が称するあの化け物たちは相当な脅威になる。気になるのは、何故あの化け物たちはみな『竜』のような見た目をしているのかということ。本当に人間の『怨霊』なのならば、もっと人間に近い姿をしているはずだと思われるけれど……。
ただ、彼の性格自体に危険性は少ない。思想も平凡であり、どちらかと言えば『事なかれ主義』。やはり、わたくしの『強力な異能を持つ者ほど、温厚な人間になりやすい』という仮説は、事実である可能性が高いのかもしれない。まだ可能性の話ではあるけれど。
〇夕島サリエ
厄介な能力者と言えばこの女性。十二年前の『光本実験』における唯一の成功例であり、あの事件の被害者。目を開いている間だけ透明人間になれる彼女は、普段はずっと目を閉じている。透明化はスパイなら誰でも欲しがる能力。ただの武力よりもよっぽど面倒なもの。
安堵すべきは、彼女の性格がスパイに毛ほども向いていないという点。目立ちたがり屋で人の気を引くのが好きな彼女は、基本的に驚かせる以外の目的で力を使おうとしない。もっとも、上からの指示があれば話は別なのだろうけれど。
〇霧宮翔子
情報が最も少ないのはこの新卒のお嬢さん。どう考えたって新卒で特対課に配属されるのは妙としか言えない。恐らく試験はフリーパス。初めから配属が決定されていた特対課専用の人間。外から引っ張ってきた生粋の能力者に違いない。
問題はその能力がまだ秘匿され、どこにも明らかになっていないということ。特対課の秘密兵器と言えるかもしれないけれど、快太君ほどの化け物である可能性は低いでしょう。……『化け物』という言い方は良くないですわね。快太君のこと、わたくしはどこにでもいる普通の男性として見ていますから。……何を書いているのかしらわたくしは。この部分は読み飛ばすようにしないと。
〇久保清太郎
……久保君ったら、まさか公務員になっていたとは思いませんでしたわ。彼のパイロキネシスは相当危険ではあるけれど、使用すると彼の体内の酸素が大幅に消費されるようで、連続使用も継続使用もまず不可能。おまけに彼が操るのは火力も低く消えやすい炎なので、雨の日や水場付近では脅威と思わなくても問題は無し。
しかし、忘れてはならないのは彼の危ない性格と思想。実際に既に何人も悪党を屠って来ている事実がある以上、警戒は怠るべきではない。人を『殺してしてしまったことがある』のと、『殺したことがある』というのは明確に別物。わたくしの仮説が正しくない可能性を体現している久保君には、是非とももっと弱体化して欲しいですわね。
〇黒井出巌
何の能力も持っていない、特対課の課長さん。完全に厄介払いでこの立場についているだけのようで、ハッキリ言って無能の一言。警戒すべき部分は彼本人には無いと断言できるけれど、立場が立場だけに一応の『切り札』は握っている様子。恐らく何かしらの呪物がオーパーツ……あるいは、神器や魔法具だったりという様な、超常的な『力』を持った何か。
彼はきっと特対課に何の未練もないだろうから、もしかしたら交渉の余地があるのかもしれない。味方には要らない人物だけれども、敵は少ない方が良いに決まっている。まあ……特対課を敵に回す機会なんて、普通はそうそうないだろうけれど。




