サイバイガル・タイムズ 二〇三四年 第二十六号
『ビッグカップル誕生!? アンテロースの矢の効果は!?』
我らが情報屋主催のクラッシュ・テイル争奪戦も、見事華麗なる終結を迎えた。
まさか中継放送中に公開告白をしてみせるとは、尊敬に値する素晴らしい胆力だ。
あれだけのエンディングを見られるとは、我々も宗主国の目を盗んであの矢を手に入れただけの甲斐がある。
……と。無駄話は焼却炉に放り込み、本号ではそんな勇気と愛情を全国に見せてくれた少女……花良木四葉氏について紹介させて頂こう。
花良木四葉。
君口兄斗氏の心を、アンテロースの矢をも使わずに射止めた彼女は、この学園の輝かしい一年生。
狂信者である君口氏の監視役、『ワンダーセブン』……もとい『ワンダーファイブ』の一人であり、可憐な見た目とは裏腹に独学で体術を身に着けている、心身ともに強い少女だ。
残念ながら身体的情報の多くを手に入れることは叶わなかったが、それなりに彼女について話して頂くことには成功した。
もしかすると諸君の中には存じている方もいるかもしれないが、彼女の家系……『花良木』家は、この学園国家サイバイガルと実は奇妙な繋がりがある。
かの『世紀大戦』を知らない者はいないだろう。一九〇一年、このサイバイガルの地を中心に始まった、世界を大きく変貌させたあの世界大戦だ。
一九二二年、戦地サイバイガルでの戦いは苛烈を極めていた。決着のつかない戦いには必ず原因が存在する。その原因となった人物こそが、かのA級戦犯ウィルソン・ハララード。
花良木家とは、そのウィルソンの子孫なのだ。
……さて。賢明な諸君ならば、その事実に対して偏見を抱くような愚かな真似はしないだろう。その前提を置いて、話は続けさせてもらう。
そもそもウィルソンが戦犯扱いを受けるようになったのは、戦後……すなわち、二〇〇一年の連邦軍事裁判において、遡及的に判決が下されたためだ。
現在は戦後から三十三年経過しているが、この学園国家サイバイガルは終戦後より建国が認められており、今年で丁度創立三十周年になっている。
サイバイガルが現在のように完全に復興し、さらに大きく発展しているのは、宗主国日本の対処が素早く、学園国家の成立に大きく尽力したためだ。
……そして、中にはこの学園の誕生には、ウィルソンの存在が不可欠だったと言う者もいるが―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
(……残念ながら、上部分は検閲対象になってしまった。しかし権力に屈しないのが我ら情報屋。検閲対象となった部分を隠すことで、残りは全てそのままお送りさせて頂くことにした。まあ隠してもこれなら察しの良い諸君は行間を読み取れるだろう。ざまを見るがいい、教育科学省の皆々様)
いや少し、関係の無い話を続けてしまった。
花良木四葉氏の話を求めていた諸君には申し訳ない。ほんの少し。
……ちなみに、彼女には一つ下の従妹が存在する。
その従妹の名を知る者は多いかもしれない。
この学園のブラックボックスで亡くなってしまった少女――――花良木三幸。
彼女はカースを持っていたという話だが、実はもう一人四葉氏の関係者でカースと関係している人物がいる。
その人物の名は、原田峰次。
名字は違うが四葉氏の従兄弟伯父であり、当然だが彼もウィルソンの血筋。
かの『蛍雪の怪人』は彼のカースだったと言われており、彼自身は現在では既に亡くなってしまっている。
……ここまでの話から、花良木四葉氏……いや、ウィルソン・ハララードの血族とサイバイガル、そしてカースには何かしらの関係があるのかもしれないということが、よく分かるだろう。
いやそれより、もしかすると四葉氏も、このサイバイガルの地に足を踏み入れた他の血族のように、カースに目覚めることになるのかもしれない。
だとすれば、君口氏と共に狂信者カップルが出来上がるということではないだろうか?
我々情報屋としては、記事となりそうなのでその方が楽しみであったりする。
きっと諸君らもそうだろう?
悪しからず。




