サイバイガル・タイムズ 二〇三四年 第二十四号
『驚天動地! 再会を果たした異能兄弟!』
天高く馬肥ゆる秋、愛しき諸君らは食欲にその身を支配されていないだろうか?
……筆者のように。
という漫言放語は置いておいて、本号では例のあの兄弟について紹介をしよう。
諸君も当然ご存知だろう、学園国家サイバイガルで一世を風靡した、二人の異能兄弟だ。
わけあって行方知れずとなっていた兄と、その間にサイバイガル随一の有名人となっていた弟。
その二人が先日、約三年ぶりに感動の再会を果たした。
我々情報屋はすぐさまその情報を手に入れ、再会した彼らに対する取材の機会を得ることに成功した!
では、まずは彼らのプロフィールから紹介していこう。
〇川瀬快太
性別:男
年齢:二十二
生年月日:二〇一一年九月一五日
血液型:O型
〇君口兄斗
性別:男
年齢:十八
生年月日:二〇一六年七月十日
……と、ここで諸君は一つ、疑問を抱いてしまったかもしれない。
言われずとも予想できる。『何故、名字が異なっているのか』という疑問だろう。
何も聞くに能わずというような理由ではない。兄・快太氏は、実は三年前に既に婚姻している。婿入りした彼は、名字を『君口』から『川瀬』に変更しただけのことだ。
さて。彼ら兄弟が特別な存在であることは、通暁な諸君も既知の事実。
次に、彼らの持つ『力』について説明していこう。
まずは兄・快太氏の持つ、『超能力』。
彼は物を触れずとも自在に動かせるという、一種の念動力のような力を使うことが出来る。
その力の限界は本人しか知らず、彼の知人曰く、彼は力の限界を周囲に隠して生きているとのことらしい。正直、恐ろしい。
実は彼、その力を使って数々の不可思議な事件を解決し、多くの災害の中で人々を救ってきたなどというような、輝かしい実績をいくらか持っている。
テレビや雑誌で何度も彼の評判は取り上げられており、世間が愛する『本物の超能力者』として、その名に恥じぬ雄傑だ。
次に弟・兄斗氏の持つ『リフレクション』。
これはこの学園でのみ見られる『カース』の一つと推定されている。
すなわち、兄斗氏は『呪われている』ということになるのだが、この力はむしろ彼の身を守る意味で役立っている。
それは空色に光る六角形の小さな結晶のような見た目で、普段は小さくなって彼の右目の中に納まっている。
彼の身に危険が迫ると、その結晶は彼の瞳から飛び出して、バリアの要領で彼に向かってくる脅威を防ぐ。
ただ、どうやら防ぐのは物理的な脅威だけでなく、目に見えない脅威……カースなども防ぐのだという。非常に便利なことこの上ない。
――さて、ここまでは彼らの素性と能力について述べたのだが、彼ら兄弟にはまだもう一つ、語るべき事柄がある。
それは…………彼らとこの学園国家サイバイガルの関係だ。
実はこの二人、かの大戦の英雄ベンドール・キリアクスの子孫。
キリアクスはこのサイバイガルの土地で命を絶ったが、彼には当時九人の子どもがいた。
そのうち三人目の子どもが、なんとこの兄弟の祖父に当たる人物なのだ。
学園国家の創設自体には関与していないが、キリアクスの亡くなったこの地は彼らにとっても縁のある土地。
もしかすると、彼らがこのサイバイガルに現れたのも、何かの運命なのかもしれない……。




