表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/72

カースに関する研究レポート(一部抜粋)

理学部 物理学科 六年 アルフレッド・アーリー


一、はじめに


 これはあくまで研究の途中経過記録であり、後の参考資料として私用で残しておくものとする。

 カースという超常現象、あるいはその超常現象を意図的に発動させられる狂信者ファナティクスに関して、私はその限界を把握することが社会的にも意義のあることであると確信して研究を開始した。

 火や水、ガスに電気、人間は遥か昔から様々な未知なる現象を解き明かし、技術として取り込むことで発展をし続けてきた。

 カースも狂信者ファナティクスも同様である。

 その力の成り立ちを解き明かすことで、人類社会にどのような影響を与え、また貢献させることが出来るのかを把握していく。

 この研究の出発点はそこにあったのだ。



二、カースに関して


 ここではまず学園国家サイバイガルで実際に確認されているカースについて一つずつ説明を行っていく。

 一つ目は『ケルベロスの写真機』。

 学園内でならば知る者は多いが、このケルベロスの写真機はとても危険な代物だ。

 この写真機に収められたものは、なんとその存在を誰にも認識されなくなる。これは事実であり実際に確認されてもいる。

 その成り立ちを調べたところ、呪いの源泉はまた別の現象であるブラックボックスと密接に繋がっていることが判明した。

 よって、次の項で共に説明していくことにする。


 では、二つ目の『ブラックボックス』に移る。

 ブラックボックスは、昨年までそのカースの威力でもって禁止区域に指定されていた、一号館の地下にある三つの部屋のことだ。

 三十年前、この学園の創設当初、この地はまだ戦後ということで荒み切っていた。

 最も戦火が凄まじかった一号館付近の土地の地下には、戦争で亡くなった者の怨念がまだ残されている。

 サイバイガル全土でカースが発生する原因もその怨念によるものと考える者は多い。

 実際、このブラックボックスは戦時中に亡くなったウィルソン・ハララードの呪いであると捉える説が有力と言われている。

 彼の一族であるハララード家は、名を変えて分裂し世界各地に血を残している。

よく知られているのは花良木家だろう。もっとも、今となっては最早関係性は無いに等しい。

 とにかく、ウィルソンは『三』という数字を好んでいた。

 彼の呪いは未来の者達へ三つの『何か』を押し付ける。

ケルベロスの写真機は三つあり、ブラックボックスも三つある。

 そして、ブラックボックスを解くにはケルベロスの写真機が有効だということも判明した。

 つまり、二つの呪いは同じ『想い』が込められている超常現象だったのだ。

 そして、後世になって彼の呪いの被害を受けた者は、また別の呪いを作ることになった。

 次に語るのはそのカースだ。


 『寂寞の少女』。

 知る者は少ないが実際に観測されているカースだ。

 時折いずれかの講義に現れては何もせず、あるいは記録だけ残して消えていく女子学生の存在だ。

 実際に試験を受けている姿が確認されたこともあり、課題を提出してきたこともあるという。

 だが、そこには名前以外何も記していない。そしてどういうわけか、彼女の存在は確かに学園の記録に存在するのだ。

 調査の結果、その記録は偽物だと判明した。

 誰かが悪戯で偽造したわけではなく、現象としてそういった記録が霊的存在により付け加えられたのだ。

 そして、少女の正体を詳しく調べると、なんとかつてブラックボックスに閉じ込められて亡くなった学生だということが判明した。

 呪いはまた別の呪いを作り出す。少女は誰にも気付かれず亡くなったことから、誰かに自分の存在を知ってほしかったのだろう。

 そして、また別のカースが、今度はこの少女と関係していることが判明した。


 少女と関係しているそのカースは、『蛍雪の怪人』だ。

 ただ、ここでは同時にもう一つのカースも説明していくとしよう。

 何故ならそのカースは『蛍雪の怪人』との関係が深いと考えられるからだ。

 そのカースはまだ観測されたばかりで名も無いが、どうやらセントラル・ストリートで立ち止まったある人物が、首を――――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ