ハンドクリームを売りに来たら……
数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとうございますo(*⌒―⌒*)o
主人公目線に戻ります。
生国の西側の辺境へやって来たら、年末年始のお祭りだった。
かつての日本風に云うところの二年詣り的なものだろう。
うん。知ってた。
忘れてただけ……。
お隣精霊の森からのお報せはきっかり十二日前に遣って来ました。でもね、この十二日というのが曲者なんですよ。ただでさえ忙しい時期。しかもそろそろ疲れが誤魔化せなくなってきている頃合いで、十二日前。カレンダー無いとね、日付が曖昧になるんですがな。ただお報せがあってすぐ神々へのお供え物は用意してきたけど、本人がお迎えできなかったら大変だわよ。急いで用事を済ませて疾く帰ろう。
てな訳で、現在街の雑貨屋さん。買い物ではなく、売りに来ました。売り物はハンドクリーム。そう、仮ラノリンで作ったあれ。因みに入れ物は別の街で仕入れました。
なら何でわざわざこの街に売りに来たのか、って? それはですね、今の住居に辿り着くまで旅をしていた訳ですが、この辺りに来た辺りでもうボロボロに疲れはてていた訳です。お金は不労所得で結構潤沢だったんですけど、一言で言うと金銭なんて殆ど役に立たない状況だったんですな。だって当時は小さくて貧弱な子供だったんで。下手げに大人を頼ろうものなら、魔法は一切禁止の生活は確定。冒険者や傭兵みたいな人達が居るらしいけど、うっかりハズレを引いたら金銭だけ奪われて私の身柄は何処かに売られ兼ねない。最悪は殺される。生まれる家で大ハズレを引き当てた私のことだ。高確率でハズレ護衛を引き当てる。そうなると一人旅になる訳だけれど、子供の一人旅なんて目立つこと受け合い。結局は大人を呼び寄せる結果になる。残された私の選択は、コソコソ移動。必要な物資を揃えるのにも誤魔化しを重ねながら。できるだけ嘘を吐かないように。だから非常に難しい旅だったんです。肉体的には当然、精神的にも疲労困憊でした。この街に辿り着いた頃には表情なんて消えていて、よく自力で歩いているな、という状態だったみたい。当時の私は全く自覚できてなかったけどね。それをたまたま見かけたお人好しの恩人が、一時私を保護してくれたという次第です。ここは辺境、厳しい土地。だから生活魔法くらいなら魔法使う人の比率もかなり高いの。私は恩人の様子を見ながら見よう見真似で歩調を合わせて暮らしていたわ。でもね、やっぱり違うの。私は色々とできてしまうの。だから怪しまれた。恩人は見て見ぬふりしてくれてたけど、馬脚を露すのも時間の問題。だから…旅暮らしに戻った。辺境は国の中心──王都より安全だけど、油断はできない。
ま、あれよ。どっち道この国に私のもたらす恩恵は無い!
そしてその恩人こそが、今私手作りのハンドクリームを買い取ってくれているこの雑貨屋さんの女将さんです。
あ、そろそろ主人公の名前考えないと(;><)