表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/15

憲兵の詰所

数ある作品の中から拙作をお選びくださり、ありがとうございます。


今回は中堅憲兵さん視点です。



「をぅお~。きちんと、本当に、真面目な場所」


「あれ? 冬ちゃんじゃねーか。今年は少し遅かったなぁ」


「食堂のおじちゃん!」


「食堂じゃなくて、茶店のおっちゃんだ」


「美味しいおっちゃん、何でここ居る?」


「一言で言うと食い逃げの届け出だ。只でさえ忙しい書き入れ時に、クソ!」


「お店は、大丈夫?」


「娘夫婦と臨時雇いが居るからな。今日みたいにごった返してる日は、あんま女共に外歩かせたくねーから俺が来たんだよ。婿は主戦力だし」



「お前達、随分と親しい仲のようだな」


 連行して来た女と町民らしき老人の気安い会話に割って入る。

 私の質問に答えたのは、届け出を出しに来たとかいう老人だった。


「この子は元々ウチの常連さんで、今はクリームを安く卸しに来てくれてる救世主なんでさぁ」


「今日、女将さん所、クリーム卸して来た」


「うぉっ♡ 早速帰りに買ってくわ! じゃあな、冬ちゃん!」


 老人が笑顔で手を振りながら元気に憲兵の詰所を出て行く。


「『冬ちゃん』とは何だ?」


「おっちゃんおばちゃん、私を、冬ちゃん呼ぶ」


 それは分かってる。顔に出たのだろう。続く説明。


「私、今、街出てる。街出た私、冬に来る。クリーム届ける」


「基本、冬にしか来ないから『冬ちゃん』か」


 頷く女を案内しようとする。目的地は──


「取調室はこっちだ」


「とりしらべ?」


「お前には聞きたい事がある」


「聞く? 何?」


「専用の個室がある──」


「閉じ込める、男女、駄目」


「お前は容疑者だ」


「『ヨウギシヤ』、言葉、意味、分からない」


 ここまでの会話で微妙にズレが生じていたようだと気付く。

 ここまでの会話を笑いを噛み殺して聞いていたチームのおやっさんが助け船を出してくれた。曰く、そっちの部屋の奥で話そうと。ここからも見える場所だし、人通りもあるから安心だろう、と。これに女は素直に頷いた。

 自分の力不足を痛感させられた一幕だった。






「随分と羽振りがいいようだな」


「『ハブリ』、言葉、意味、分からない」


 まだまだ疲れる会話は続きそうだ。

 おやっさんも後輩も、苦笑いしてるのら手伝ってくれよ!










『ヨウギシヤ』はわざとですm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ