表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/50

ましゃか⁉ 私の本当の力って……2

本日2話目の投稿です。

前のお話を読んでいない方は、ひとつ戻って下さい。

「〝治療〟」

 

呪文をとなえると、銀色の光が陛下を包み込む。


そしてしばらくすると光の粒子は消え、陛下ががばりと勢いよく立ち上がった。


「おお! 本当だ、体が軽くなったぞ!」

 

すごいなー!と陛下が私の頭を撫でた。


どうやら体はしっかりほぐれたらしい。


「えと、じゃぁリクハルドさんも……」

 

先ほどの違和感は気のせいかしらと思いながら、リクハルドさんの背中に触れる。


そして同じように掌に魔力を集中させて……あれ、やっぱり。


「〝治療〟」

 

同じようにリクハルドさんも銀色の光に包まれ、それが消えると、少し表情が明るくなった。


「これは……! 本当に聖女の力とは、すばらしいですね。頭痛まで引いた気がします」


「だろ? いや、聖女殿のおかげで昼メシが美味く食える。感謝するぜ」


「あ、えと、よかったでしゅ」

 

やっぱり頭痛もしてたんだなと思いながら、リクハルドさんの時にも感じた違和感に首を傾げる。


久々に聖女の魔法を使ったからだろうか、以前と魔力の流れが変わったような。


なんというか、強くなった気がするのだ。

 

たしかに魔力は、鍛錬を積めばある程度引き上げることができる。


とはいえ、〝ある程度〟止まりだ。


下級聖女の私ががんばったところで、大して変わりはしないはず。


それに鍛錬といえるだけのことも特にしていない。


「どうしました? リーナ様のおかげでふたりとも調子良さそうですが……」


「あ、いえ。なんでもありましぇん」

 

私の様子を不審に思ったのか、アレクさんが覗き込んできた。

 

魔力がどうとかって話をされても困るだろうし、そんな気がするって程度のことだもの。


気のせいかもしれないし、話すほどのことではないか。

 

そう判断した私は、そのまま元の石の上にちょんと座り、お昼をいただくことにした。

 

ありがたいことに、今回の旅の食事は、私が考案した料理を採用してもらえている。


サンドイッチに温かいスープ。

 

雪は積もっているけれど天気は悪くないし、ふわふわの防寒具のおかげでそれほど寒くない。

 

こうしてみんなで、寒い中で温かい食事を摂るのも悪くない。


いやむしろ結構楽しいかも。


「うん美味い! いやいや、聖女殿のおかげで遠征時も快適だな!」


「今までの遠征食に比べたら雲泥の差ですね。冬場に温かいスープが食べられるのもありがたいです」

 

陛下とリクハルドさんからの評判もいい。たしかにこんなことになるのなら、スープを提案しておいてよかった。

 

もぐもぐと温かい食事に感謝しながら頬張っていく。


すると昼休憩後の、馬車の組み合わせについての話になった。


「陛下がどうしてもとおっしゃるのであの組み合わせになりましたが、エヴァリーナ様に迷惑をおかけするわけにはいきませんからね。陛下、大人しく我々はふたりで乗りましょう」

 

リクハルドさんが自分と陛下で一台使うから、アレクさんと私、それにミリアとカイの四人で一台を使うように提案してきた。


たしかにそれなら、四人とはいえその中の三人が小柄なので、それほど窮屈にはならない。


それに陛下とリクハルドさんも広々と乗れるし、アレクさんが私の護衛をしてくれるので問題ないばずだ。


「けっ、リクとふたりきりなんてクソ面白くねぇから嫌だったんだが、仕方ねぇ。聖女殿に何度も魔法を使わせるのも悪いからな」

 

陛下も渋々それに同意した。

 

私に気を遣ってくれたってことだよね。


先ほども陛下は私が聖女ということを忘れていたような様子だったし、今回も聖女の魔法をできるだけ使わなくて済むようにと配慮してくれた。


それってつまり、私の魔法をアテにしない、恩恵をうけるのが当然だと思っていないということだ。

 

……なんだろう、神殿にいた時は、みんなが当然のように私たちの力を利用していた。


〝利用する〟なんて言い方は悪いかもしれないが、だいたいの意味は合っている。


「どうしました? やはりご気分が優れませんか?」

 

アレクさんが心配そうにそう尋ねてきた。


神殿にいた頃、力を使った後にこうやって体調を気遣ってもらったことなんてあっただろうか。

 

そしてそれは、前世でも。


『芹沢さんが来てくれて、ホント助かってるよな』


『ラッキーだろ?』

 

ペットショップの店長と小池さんの会話が、いまでも鮮明に思い出される。

 

……でもここは、あのペットショップじゃない。


そして神殿でも、もちろんない。


「無理しないでくださいね。馬車の中でも、お疲れの時は眠っていただいても大丈夫ですから」

 

そして、この人たちは、あの人たちじゃない。

 

目の前のアレクさんの優しい言葉は、私のことを心から気遣ってくれているのだと分かる。


「ふふっ、だいじょぶでしゅ。私、魔力はそんなにつぉくありましぇんが、魔力量は多いみたいなので。これくらいじゃ疲れたりしましぇんよ」

 

だから私も、心からの笑顔を返すことができるのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ