ましゃか⁉ 私の本当の力って……1
これが最終章となります。
今日から朝夕2回投稿したいなと思っていますので、よろしくお願いします(*^^*)
「え、今から行く荒地って、あそこなんでしゅか?」
「ああ、この国に来た時に見ただろう? クロヴァーラ国との国境付近の、あの荒地だ」
ガラガラと揺れる馬車の中、私は陛下からこれから向かう場所について話を聞いていた。
あのお茶会の後、私は今回の旅の概要をリクハルドさんから聞いた。
曰く、〝数年前から作物が育たなくなった、もうほったらかしにされている荒地に異変が起きたので、見てみてほしい〟とのことだった。
異変と言われても、私は土地とか建物とか作物に詳しいわけではないのだが。
そう思って丁重にお断りしようと思ったのだが、よくよく話を聞いてみると、気になる言葉が出てきた。
まぁでも下手に発言して期待されても困るので、そこはぐっと飲み込んだ。
私だって学習くらいする。
とりあえず見てみるだけなら……と言って、こうして陛下たちと同じ馬車に乗り、その荒地にと向かっているところだ。
……そう、陛下と、馬車に同乗している。
なんならリクハルドさんとアレクさんも一緒である。
この狭い空間に、もう顔面偏差値がすごいことになっている。
私はもう一台の馬車がいいと言ったのだが、却下された。
なにかあったら守る人がいないからとのことで。
ちなみにもう一台に誰が乗っているかというと、私のお世話係にミリア。
まぁこれは特に驚きもない。
だがもう一人、今朝初めて知らされた人物が乗っている。
「おーい、いつまで難しい顔して乗ってんだ? もうみんな降りて、アレクシス様がおまえ待ちしてるぞ」
呼ばれてはっと我に返る。
するとカイが馬車の入り口から覗き込んでいた。
そう、なにか私が閃いた時のためにと、カイもこの旅に同行することになったのだ。
「あっ!? ご、ごめんなしゃい、考え事をしていたら、ちゅぃ」
慌てて席から立ち上がる。
どうやら一度休憩するようだ。
すると入り口のところでアレクさんが、苦笑いして待っていてくれた。
もちろん、陛下たち大型の獣人用の、大型の馬車から私を降ろすために。
「よ、よろしくお願いしましゅ……」
「はい、承知いたしました」
うう、これも久しぶりだから恥ずかしい。
しかし当のアレクさん本人は涼しい顔をしているし、カイなんて視察の時は顔を真っ赤にしていたくせに、もうなにも気にしていない風だ。
みんな順応早くない?
いつものように抱きかかえられて地面にそっと降ろされる。
この動作ひとつだけでも、アレクさんは本当に優しくて、私が降りやすいようにと気を遣ってくれているのがわかる。
「ありがとうございまちた」
「いえ、相変わらずお軽いので、リーナ様にも羽が生えているのではと錯覚いたします」
も、もぉぉぉぉこの人はぁぁぁぁぁ!
なんでそうしれっと恥ずかしいこと言うかな!
外に出て寒いはずなのに、顔が熱い。
吐く息なんて温度差がすごいのか真っ白だ。
それにすぐ隣にいたカイも、さすがにドン引きの表情だ。
年齢は倍ほどちがうが、同じ男としてよくそんなこと言えますね!?って顔をしている。
「おい、まだそんなところでモタモタしているのか? ほら、早くこっちに来い」
「申し訳ありません。リーナ様、参りましょう」
当然のように平静なアレクさんの少しうしろについて、陛下やリクハルドさんたちが待つところへと向かう。
するといつの間にか側に来ていたミリアが、私にこっそりと囁いた。
「アレクシス様のあれは天然ですからねぇ。リーナ様も大変でした」
「本当に……油断大敵でしゅ……」
休憩時間の前に、どっと疲れてしまった。
これならまだ馬車の中の方がマシだった。
「リーナ様、こちらにどうぞ」
アレクさんに案内され、やれやれと手ごろな石の上に腰を下ろす。
雪を払って、布を乗せてくれているので座り心地は悪くない。
陛下とリクハルドさんはといえば、座る場所は用意されているものの、体が固まっているのか立ったまま首をこきこきと左右に動かしている。
「はぁ、執務で慣れているとはいえ、やはりじっとしているのは性に合わんな。聖女殿、少し寒いが我慢してくれるか?」
「あ、だいじょぶでしゅ! ありがとうございましゅ」
気遣ってくれる陛下にお礼を言う。
馬車に乗っている時は話していたからあまり気付かなかったが、獣人も人間と一緒で、馬車にずっと乗っているのは辛いのだろうか。
「陛下。その、体、だいじょぶでしゅか?」
「ん? ああ、まぁな。長時間馬に乗ってるのには慣れているから平気なのだが、馬車はまた違うからな。思うように体を動かせなくて体が固まってしまった」
ゴキゴキと陛下の首からすごい音が聞こえる。
そっか、お尻が痛いわけではなかったのか。
そう言われてみれば、大きな馬車とはいえ、長身の男性が三人も乗っていたし、車内は結構狭くなる。
ちびっこの私の隣に乗っていたアレクさんはともかく、陛下とリクハルドさんは隣り合って座っていたからあまり体を動かせなくて辛かったのかも。
「あの、もしよろちければ魔法で治しまちょぉか?」
「ん? あ、治せるのか?」
そう申し出てみると、陛下が驚いたようにそう返してきた。
そういえば聖女……!とはっとしたのを私は見逃さなかった。
「……ガチガチに固まった体、ほぐすの得意でしゅよ?」
だって神殿にいた時にも、治療所でおじいちゃんおばあちゃんの肩こり腰痛も治してたし。
ひどい怪我や失った手足を戻してくれと言われても絶対に無理だが、それくらいなら私の微力な魔力でも治せる。
「そ、そうか! ならばお言葉に甘えて治してもらおうか! なぁリク!」
「そうですね、大変ありがたいです……」
どうやらリクハルドさんも体がバキバキ状態らしい。
こめかみを押さえているし、ひょっとして首コリからの頭痛?
「では少し触りましゅね。楽にしていてくだしゃい」
そう言ってまず、座ってくれた陛下の背中に触れる。
掌に魔力を集中させて……あれ?