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仲良し幼馴染って素敵でしゅよね3

「はい! 羽が生えたあれくしゃん、絶対かっこいいと思うので、見せてくだしゃい!」


「リーナ様がそこまでおっしゃるのなら……。たいしたものではありませんが、お見せいたしましょう」

 

照れながら席を立ったアレクさんに、拍手を送る。


「さすがですエヴァリーナ様。アレクシスの扱いもお手の物ですね」

 

リクハルドさんがぼそりとそんなことを呟いたが、聞こえないフリをしよう。


そう、私は純粋にアレクさんの羽が見たいだけなのだから。


「少し部屋が狭くなりますが……。失礼します」

 

その言葉の一拍のち、アレクさんの背中から大きな翼が広がった。


「う、わぁぁぁぁ……」

 

赤褐色と白のコントラストが優美な、大きな翼。


羽じゃない、翼だ。

 

思っていた以上に大きくて、一枚一枚が精巧な細工のように美しい。


前世でも、赤鳶はその翼の美しさから、剥製にしようと乱獲が行われていたと本で読んだことがある。


「す、すぅぅぅっごく素敵でしゅっ! かっ、かっこいい……!!」

 

お世辞でもなんでもなく、本当にそう思う。


絶対にかっこいいに違いないと思ってはいたけれど、こうして実際に間近で見ると感動ものだ。


「そ、そうでしょうか……。リーナ様にそれほど喜んでいただけると、私も嬉しいです」

 

興奮し、すごいすごいと連呼する私に、アレクさんは照れながらも嬉しそうだ。


イケメンの照れ顔(翼付き)、眼福です。


「ははっ、予想以上に大喜びだな。だがアレクのこの翼は、美しいだけではないのだぞ? 一緒に飛ばせてもらうと、それはもう気持ちがいい」


「へ、陛下は一緒に飛んだことがありゅのでしゅか⁉ う、羨ましいでしゅ……!」


「ああ、幼い頃から何度かな。なぁ、リク」

 

陛下がリクハルドさんに話を振る。


するとリクハルドさんは、懐かしそうにふっと軽く笑った。


「ええ、そうですね。アレクシスの飛行能力は、戦場でも大いに活躍してくれますし、助けられたことも多々あります」


「そうだな、アレクには幾度となく助けられてきた」

 

おお、そうだよね。


空からの奇襲攻撃はもちろん、偵察にも使えるし、移動だって早いはず。


騎士として、何度も国を助けてきたのだろう。


「そうなんでしゅね。すごいでしゅ、あれくしゃん!」


「い、いえ。私などまだまだです……」


褒められ慣れていないはずがないだろうに、アレクさんは顔を真っ赤にしている。

 

先ほどとは打って変わって陛下もリクハルドさんもアレクさんを絶賛しているし、この三人はお互いにすごく信頼し合っているんだろうなってわかる。


「で、だ。聖女殿もどうだ? 飛んでみたくはないか?」

 

急に陛下の話の方向が変わる。


もちろん勢いよく〝はい!〟と答えたいところだが、ここで素直にそう答えてよいものか。


私の中のなにかが、迂闊に返事をするなと告げてくる。


「え、ええと」


「ああ、先ほども陛下のことを羨ましいとおっしゃっていましたからね。エヴァリーナ様なら陛下よりもお軽いですし、アレクシスにとっても大したことではないでしょう」

 

なぜかリクハルドさんもそれに追従してきた。


こ、この顔は間違いない、なにかある。


「アレクシス、あなたならエヴァリーナ様を怖がらせることなく、そっと気遣いながら飛ぶことも可能ですね?」


「あ、ああ、もちろんだ。私なら、リーナ様を守りながら飛べる」

 

アレクさん⁉ 


そんなぺろっと肯定して良いんですか⁉


「だ、そうですよ陛下。でしたら問題ありませんね。早速エヴァリーナ様に概要をお伝えしないといけません」


「そうだな、快く了承してくれた聖女殿とアレクに感謝するぞ」

 

陛下とリクハルドさんが良い笑顔すぎるのが逆に怖い。


これ、なにか裏があるやつでは?

 

ひくりと頬を引きつらせている私に気付くと、陛下はにっこりと笑った。


「まぁそう難しく考えるな。散策がてら、ちょっと遠出するだけだ。それで、ある土地でアレクと一緒に飛んで、空からの景色を楽しんでもらおうと思っている。ああ、その際になにか気付いたことがあればすぐに教えてくれ!」

 

ぜ、絶対なにかあるやつーーーー!


「ちょ、ちょっと待ってください! まさかそれって……」


「気付きましたか、アレクシス? 今回は陛下も私も同行しますからね。ほら、エヴァリーナ様はあなたがお守りするのですよ?」

 

なにかに気付いたらしいアレクさんの肩を、リクハルドさんがぽんと叩く。


「……あれくしゃん」


「はっ、はい! リーナ様すみません、私が命に代えてもお守りいたしますので!」

 

どうやらこれはもう決定事項らしい。


陛下だけでなく頭脳担当のリクハルドさんも一緒ということは、そこまで危険ではないかもしれないけれど、それだけ重要だという意味でもあるわけで。

 

できることはなんでもやるつもりではいたが、そこまで重要なことを任されても、必ず解決できる自信なんてない。


「わ、私、お力になれなかったらどぉしまちょぉ……。役立たずの烙印とか、押されちゃいましゅ……?」


「だ、大丈夫ですリーナ様! そんなこといたしません!」

 

涙目になる私を、アレクさんは必死に宥めてくれたのだった。

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