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みんなでお料理も楽しいでしゅよ?2

王城にも雪が積もって、二週間。


私は今日も王城に呼び出されていた。


メンバーはいつもの通りである。


「さて、朗報だ」

 

にやりと陛下が笑う。


……なんだろう、悪人ぽい笑顔だなと思ってしまうのは、私だけ?

 

あれ、陛下って忙しいんだよね? 


私ってばけっこう頻繁に呼び出されてない? 


しかも今日もお茶会モードだし。

 

とりあえず陛下もリクハルドさんも機嫌がよさそうなので、良い話だとは思ったけれど。


でも、このタイミングでの朗報って、もしかして……。


「聖女殿の助言で雪の下に埋めた野菜たちだがな。定期的に掘って様子を見ているのだが、どれもすべて新鮮そのもので残っていると各方面から声が届いている」


「ほ、本当でしゅか?」

 

やった! 


ひとつくらいは……と思っていたが、すべて残ってくれていたなんて。


「一番積雪の早かった地域でも、一カ月近く経っているが枯れたり腐る様子もないと言っていた。試しに少し収穫してもみたようだが、信じられないくらい甘みが増していると、興奮した様子で書状にしたためられていたぞ」

 

目に見えて嬉しそうな陛下は、声からも上機嫌なのがわかる。


ぐいっとお茶を飲み干し、お菓子をつまみ、よかったよかったと頷いている。


「では、栄養価が高くなるというのも、前世と同じかもちれましぇんね」


「ええ、そうだといいですね」

 

アレクさんも嬉しそうだ。


雪が積もった日に励ましてくれたことを思い出して、少し照れくさくなったけれど、よかったですねと微笑み合う。


「それで、エットウヤサイを使った新メニューですけど」

 

きらりとリクハルドさんが目を光らせた。


この人、本当に食べることが好きなんだな……。

 

神秘的なイケメンという第一印象はどこかへ吹っ飛んでしまった。


まあ、私としては今のリクハルドさんの方が話しやすくて好きだけど。


「えっと、そうでしゅね……。やっぱり冬ですし、体の温まるスープが一番でちょぉか。ポトフにクリームシチュー、あとは、お肉のうま味がじゅわっと染み込んだロールキャベツもいいでしゅよね」

 

冬に食べて美味しいメニューを思い浮かべながら口に出していく。


あ、思い出したら食べたくなってきた。


「ぜひ、それらを! この王城でも食べられるように、料理人たちに伝授ください!」

 

相変わらず料理のこととなると必死なリクハルドさんに、思わず苦笑いが零れる。


「わ、わかりまちた。でもちょっとめんどくしゃいというか、時間がかかるものなので、料理人さんたちにけっこうお時間いただいてしまいましゅけど……」


「構いません!」

 

即答ですか。


というかリクハルドさんが作るのではないのでは……。

 

その時、苦笑いをするアレクさんが視界に入った。


あ、そうだ。


「あの、もしよければなんでしゅけど……」

 

私の提案に、リクハルドさんはまたもや自分のことではないのに即答し、アレクさんも了承してくれたため、大人数でのお料理教室を行うことが決定されたのだった。





「で? なんで俺まで」


「だって、かいがなにに使うんだって聞くから。今から使って見せるから、ついでに手伝ってくだしゃい」

 

約束から数日後、私はカイにお願いしてあるものを作ってもらい、それを持参して王城の厨房へとやって来た。

 

そしてそこには、料理人たちだけでなく、この場になぜ?とカイが首を傾げる人たちも揃っている。


「いやぁ、リーナ様のお役に立てるなら! 俺たちの筋肉、ぜひ使ってくだせぇ!」


「最近の食堂の料理、めちゃウマになったもんな!」


「遠征食にも使えるもんも作るんだろ? なら俺たちも手伝わねぇとな!」

 

そう、なにを隠そう、騎士たちである。


アレクさんがお父様である騎士団長さんにお願いしてくれて、数名の騎士がここに集ってくれた。


……なぜかアレクさんも一緒に。


「リーナ様のお料理される姿など、なかなか見れるものではありませんので。騎士たちの監督も兼ねて参りました」

 

笑顔でさらりとそう言われたのだが、まるで娘の授業参観に来た父親みたいだなと密かに思ってしまった。


アレクさんもどんどん第一印象が崩れていっている気がする。


「そぉ、でしゅか。でも私は料理、しましぇんよ?」


「え?」


「は?」

 

私の言葉に、アレクさんとカイが同時に面食らった。


「いや、だっておまえ、その恰好……」

 

そう思ってしまう気持ちも、そう言いたくなる気持ちもわかる。


私がふりふりのエプロンをつけているから、だろう。


「これは、毎回料理長たちが用意ちてくれるので、しぇっかくのご厚意を無駄にするわけには……と思ってつけているだけでしゅ」

 

ため息をついてそう説明する。


これから厨房に来る機会が増えるでしょうから!と、二回目に訪れた時からエプロンが用意されるようになった。

 

しかも毎回違うものを、だ。


うさぎ柄の時もあったし、かわいい水玉模様の時もあった。


今回はレースたっぷりのふりふりのもの。

 

中身が大人の身としてはかなり恥ずかしかったのだが、みんながかわいいかわいいとあまりに褒めそやすため、拒否することも難しく、仕方なく毎回着用している。


「料理長……」


「はっ、はいっ!?」

 

珍しくアレクさんからピリッとした空気が発せられる。


普段温厚で紳士的なアレクさんだが、怒らせると怖いのだろうかとひやりとする。


……と思ったのだが。


「センスがよろしいですね。リーナ様にぴったりのデザインです」

 

……娘を溺愛する父親みたいなこと言い出した。


今の覇気はいったいなんだったのか。


「あっ、ええと、お褒めに預かり恐縮です!」

 

一瞬恐怖で凍り付いた料理長が、ずっこけた。


「はい、もうよろしいでしゅか? 今日は時間がかかるので、早速はじめましゅよ」

 

収拾がつかなくなりそうだったので、半ば無理矢理話を終わらせた。


なんだか料理を始める前から疲れてしまった。

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