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ちびっこ聖女、始動しましゅ!3

「失礼します。エヴァリーナ様をお連れいたしました」

 

ノックをして、ミリアが扉を開けてくれた。すると中には、アレクさんだけでなく、なんとカイも待っていた。

 

カイは私の姿を見るなりぎょっとした顔をし、それから顔を赤くしてそっぽを向いた。


青少年よ、こんなちびっこにそんな反応してくれてありがとう。


「おやすみ前に申し訳ありません。こちらにお掛けください」

 

アレクさんはいつも通りの紳士的な言動で私をソファに座らせてくれた。


そして私が腰を下ろすと、にっこりと微笑んだ。


「そういうリラックスしたお姿もかわいらしいですね」


ゴンッ!


「いってぇ……!」


「かい!? だ、だいじょぶでしゅか?」


なぜかカイが椅子の端に足をぶつけて悶絶した。


アレクさんのしれっとした褒め言葉に一瞬どきっとしたが、カイの怪我で恥ずかしさが吹き飛んでしまった。


「落ち着きがありませんよ、カイ。さあ、あなたは私のうしろに」

 

私の向かいにアレクさんが座り、涙目のカイがそのうしろに立った。


ちなみにミリアも私のうしろに立ってくれている。


「では、早速ですが本題に入らせていただきます。今後についてですが、陛下より、基本的にエヴァリーナ様のお心に添いたいとのお言葉を預かっております。しかし、国の事情もありますので、そのすり合わせをしていきたいと思っております」

 

最初にずいぶんと寛容な言葉をもらえたことにほっとしつつ、私はアレクさんの話に真剣に耳を傾けた。





「ええと、国民たちの様子を見て回るってことでしゅか……?」


「ええ、エヴァリーナ様がお嫌でなければですが。まずは、私たち獣人がどのように生活しているか、知っていただきたいなと思っております」


つまり視察ね。


そして国民の困りごとを実際に見て、聖女の力で改善できることはないか、手を貸してほしいということだろう。


「お仕事でしゅね! もちろん、やらしぇていただきましゅ!」

 

きらりと目が輝く。


そう、実は獣人国に来てからこっち、ぐうたら生活を送っていた私は、体がなまっていた。

 

オーガスティン家にいた時は家庭教師についてもらって勉強をしていたし、神殿に入ってからはあれもこれもと忙しい毎日を過ごしていた。

 

しかし、ここでお世話になってからやっていることといえば、読書と睡眠と食事だけ。


正直、物足りない。


だから、なにかできることはないかしらとずっと思っていた。


「その、不安ではありませんか? 正直に申し上げますと、気性の荒い者や礼儀など知らない者と会うこともあるかと思うのですが……」


「だいじょぶでしゅ。アレクしゃんや、かいもついてきてくれるんでしゅから」


先ほどの説明の中で、アレクさんは何度も私も一緒なのですが……と言っていた。


私が不安にならないように何度も繰り返してくれたのだろう。

 

やる気満々の表情でアレクさんの目を見つめると、アレクさんは呆気に取られていた。


「はぁ。アレクシス様、こいつ、全然わかってないと思いますよ? まぁ、俺たちがフォローしてやればいい話ですけど」

 

小さいからなにもわからないのだろうというカイに、アレクさんもそうですよねと苦笑した。


「でもな、人間族のいいとこのおじょーちゃんだったあんたにとっては、未知の世界だからな! いいか、どんなことがあっても、怖がったり嫌な顔したりすんなよ?」


「だいじょぶです! お約束しましゅ!」

 

ふんすと息巻く私に、カイは本当に大丈夫かよという顔をした。


たしかに貴族令嬢のお嬢様なら、獣人国の、それも市井の生活なんてギャップが大きすぎて、ひょっとしたら嫌悪感もあるかもしれない。

 

でも私には前世の記憶がある。


動物たちへの耐性も。


ちょっとばかり荒っぽい人がいても、アレクさんたちがいる。


前世で色んなお客様の対応をしてきているし、ちょっとやそっとじゃ驚かないわ。


「せっかく獣人国にきたんでしゅから、私にもなにかお手伝いできることがないか、ちゃんと考えましゅね! 微力ではありましゅが、がんばりましゅ!」


「い、いえ、我々はまだエヴァリーナ様にそこまで望んでは……」


「アレクシス様、駄目だ。こいつ全然聞こえてないです」

 

アレクさんとカイのやり取りなどまったく聞こえていなかった私は、初のお仕事にやる気をみなぎらせたのだった。

 

ちなみにこの後、いつどこの町に行こうかという予定を立てている途中、おねむになってしまった私は、不覚にもソファの上で倒れてしまった。

 

そしてそんな私を、アレクさんが寝室まで運んでくれたのだということを明朝ミリアから聞き、私は真っ赤になって蹲ったのだった。

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