一日目 終わりの始まり 6
連続更新ここまでです!
ここまでは一気に乗せたかったのでちょっと多くなりました。
貴子と美香が一緒に探し始めても、一向に見つからない。
俺の気のせいだったのだろうか。
誰も文句も言わず、濡れるのも構わず、探し続ける。
激しい雨に打たれながら、俺は海へと構わずに入っていく。
波が容赦なく俺を叩く中、俺の手は何かをつかんだ。
「これか?」
海中から手を出した俺の手に握られていたのは、ピンポン玉ぐらいの青い、石のようなもの。青と言っても海のような濃い青ではなく空のように薄い青色の、真珠。
「空真珠?」
「でも、すごくおっきい」
「それに、本当に真っ青」
空真珠とは、俺たちの街の特産だが、色のつき方がまだらであること。どうして色がつくのかわかっていないことなどから、名産品にはなっていない。
子供が集める綺麗な貝殻、程度のものだ。だけど今俺が持っているのは。
ピンポン玉ほどもあり、一欠片の雲もなく、抜けるような青空が、玉全体に広がっている。
「でも、これだけか? これが光ったのか?」
秀司の問いかけに俺は答えることが出来ない。
俺がみんなに見えやすいように掌に置くと、空真珠についた海水を、雨が洗い流していく。
すると――空真珠は、まばゆいほどの光を放った。
抜けるように青い、空色の光。
「綺麗……」
驚きよりも何よりも、美香のその言葉が、俺達全員の気持ちを表していた。
俺たちが感嘆とともに見つめていると、その光は、海の向こうへと伸び始める。
光が向かう、まだ靄が晴れずに、よく見えないその先にあるのは。
神島。
この奇怪な現象の意味を理解しないまま、俺は瞬時に決断する。
「貴子」
名前を呼ぶだけで、彼女はすべてわかっているというように、頷いた。
「今日はもう無理。便がないわ」
それが何を意味するのか、全員が分かっていた。間違いなく、同じ思いを持っていた。
「明日の朝一番に、船着場に集合ね」
誰も異論を挟まない。騒ぎもしない。
ただ、頷く。
この光が何を意味するのかわからないし、いくつもの偶然が重なっただけかもしれない。
あるいは、全員そろって夢でも見ているのか。
とにかく、常識的ではありえない。
それでも、俺たちは行くことにする。
この大きな空真珠が、示して見せた場所。
神島へ――
とにかく風邪をひいては洒落にならないと、改めて貴子に指摘され、俺たちは解散して家に帰った。
俺はすぐにシャワーを浴びて、誰もいないリビングで、一人テレビをつけた。そのまま何をするでもなく、眺めていると、天気予報が始まる。
明日は晴れるみたいだ。
ピピッ、とスマホが通知を知らせる。そういえば、朝のあの嫌な着信音は、一体誰が変えやがったんだろうな?
誰でもやりそうな気がして、それ以上考えるのを諦めた俺は、グループトークを開いた。
貴子からだ。
びっしりと隙間なく文字で埋め尽くされている。絵文字も顔文字もなしだ。
内容は、明日の集合時間、場所。持ち物。その他タイムテーブルなど。
学校行事のお知らせのように長いそれが、俺たちの合図。貴子はいつだって、そうやって俺たちに知らせてくれる。
ま、タイムテーブルは葵と美香のおかげで守られたことはないけどな。
バッグから、空真珠を取り出す。
この七日間を、忘れられないものにしてくれよ――
もう光っていない。しかし空を閉じ込めているその玉に、俺は願いを込める。
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