表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

香る幸せ

作者: 夜空タテハ

 いつも乗り換えで通る駅ナカに、花屋がある。今日も乗り換えのために歩きながら、ぼんやりとそちらを眺める。

 いつもは、眺めながら通りすぎていくのだけど、今日は少し時間に余裕があったので、立ち止まって眺めてみた。

 当然と言えば当然なのだが、自分には花のことなどなにもわからない。けれど、店先に並んだ様々な花やミニブーケなどに、目を惹かれた。

「なにかお探しですか?」

 声をかけられ、どう返せばいいかと少し迷った。

「いえ……その、キレイだなと思って、眺めてただけです」

「そうですか。ぜひ、じっくり眺めていってください」

 丁寧な言葉に、軽くお辞儀を返した。

 家に花瓶なんてないような自分だが、コップかなにかで代用できるだろうか、なんて考える。せっかくだから、ミニブーケの一つくらいは買おうか、と思った。

 オススメの品として目立つところに置かれていたミニブーケを一つ、手に取った。

「これを買います」

「ありがとうございます、プレゼント用でしょうか?」

「あ、いえ、えっと、自分用です」

「では、包装いたしますので少々お待ちください」

 そうして、ミニブーケが手際よく包装されていった。

「お待たせいたしました、どうぞ、気をつけて持ち帰りください」

 その言葉と共に、キレイに包装されたミニブーケを受け取った。花の香りがふんわりと漂う。優しく甘い香りが、胸いっぱいに広がって、心地よかった。

「もしよければ、またぜひ買いに寄ってください」

「はい。……いつも、お店の前を通りながら、キレイだな、って気になってたんです。今日はたまたま少し余裕があったので……」

「そうでしたか。ありがとうございます」

「また余裕のある時に、寄りますね」

「ぜひ、お待ちしています」

 深々と頭を下げながらそう言われた。こちらもお辞儀をして返して、ミニブーケを大切に抱えながら、お店から出た。

 帰宅したら、花瓶の代わりになるようなものを探したり、お花の世話の仕方を調べたりしなくちゃいけない。少し大変な気もしたけれど、たまにはこんな気分転換もいいな、と思った。

 ミニブーケを抱えた手からあふれてくる香りに癒やされる。こんな小さな幸せを、たくさん積み重ねていきたいな、なんて考えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ