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 1話

 全4話で1日1話の毎日更新です。最期までおつきあい頂ければ幸いです。


「青魔法使い、お前は首だ!」

「??? そんなセンセーショナルに言わなくても元々今日までの契約ですから」

「あ、はい。そうですね」

「じゃあ最後にもう一度、契約内容を確認して終わりにしましょう。


 パーティー『ウィンドミル』の5人はパーティーメンバーの一人、赤魔法使いが紫魔法使いに転職したことによるレベルの低下を補う為、一時的に青魔法使いである私をパーティーに加える。この契約は紫魔法使いのレベルが50を越えるまでとする。


 間違いないですね?」

「ああ、間違いない。それに今日のダンジョンアタックで彼のレベルは52になった」

「では契約完了、と言うことで。またのご利用をお待ちしてます」


 契約金の支払いはギルドを通して私の口座に振り込まれる事になっている。今回は大事なく契約を終える事ができて良かった。彼らとは笑顔で別れられる。近頃はこのタイミングでごねる奴らもいる訳で。

 だからほんの少しだけ別れが惜しくなり、彼の悪ふざけに乗ってやった。たぶん彼が狙ってたのは、最近流行りのアレだと思うんだ。


「私が悪かった、やっぱり戻って来てくれないか?」

「・・・ 今さら言われてももう遅い。いやそれ俺のセリフ!」


 リーダーがツッコみ、メンバーがグッジョブサインを出している。気持ちの良いパーティーだった。『ウィンドミル』これからも活躍していって欲しい。

 パーティーメンバー全員が手を振ってくれている。久しぶりに笑顔で見送られ、嬉しくなり、思わず私も手を振ってしまった。




「お帰りなさい。今日は少し早いですね」


 私の常宿『かぎしっぽ亭』のかんばん娘が迎えてくれる。娘と言っても本当に娘だったのは何年も前の事で、今はお腹に二人目がいる。


「うん、契約が終わったからね。久しぶりに気持ちの良いパーティーだったよ」

「へー、チリさんが誉めるなんて珍しいですね。なんてパーティーですか?」

「ウィンドミル」

「ウィンドミル? う~ん、知らないです。

 そうだ! 契約完了と言うことは、明日からまたギルド詰めですよね? お弁当どうします?」

「うん、お願・・・ やっぱり要らない。明日はお休みにしちゃおう!」


 そうと決まれば、部屋でさっと汗を流して明日の予定を立てよう。一見いきあたりばったりに見える冒険者も、一流程ちゃんと計画をたてるものだ。


 部屋の中装備を解き、お湯を貰う為にたらいを手に取る。


「・・・ 次の契約も無いし、温泉でも行っちゃうか」


 一番近い温泉宿でも馬車で1週間の旅だ。だが竜車なら半日とちょっと。青魔法使いとして同行すれば旅費も浮くし。


「急に行っても使って貰えるかな~♪」


 適当に歌いながら竜車の駅へ向かう。竜車とは、巨大な竜の背中に客車を乗せ空を行くサービスの事だ。召喚士が毎度竜を呼び出すため、駅自体には客車部分しかない。


「こんにちは~、バイトありませんか?」

「よう!チリ。 今日はもう急ぎの便はねえな。飛竜便の方あたってみな」

「そうですか。ありがとうございます、またよろしくお願いします」


 飛竜便はちょっと恐いけど、温泉を諦める程ではないな。行ってみよう。

 飛竜は太古の時代に竜と大蛇の間に生れたと言われており、人が二人跨がれる程の大きさしかない。小さい分小回りが利き、その大きさを利用し、小さな荷物や急ぎの手紙等の速達便として活躍している。

 青魔法使いの私がいれば、さらに飛竜の速度は上がる。そう、速達便に早すぎる事はないのだ。


 案の定、顔馴染みの配達員が単発のアルバイトとして雇ってくれた。で、私の苦手な局長が出張って来る。


「良いタイミングで来てくれたぜ、チリ。北に行くんだろう? うまい具合いに今、貴族連中が慌ただしいんだ。思いっきりバフってくれや!」

「いえ、全力の補助魔法は私が恐いので」

「ハッハッハッ! お前は後ろに乗ってるだけだろ! それに今の時間なら宿の晩飯にギリギリ間に合うんじゃねえか? 悩んでる暇があるかい?」


 私が温泉目当てってばれてる。誰にも言ってないのに。

 ここの局長はこれがあるから苦手なんだ。また手の平の上で踊らされる事になる。


「さあ行け! 出発時間だ!」


 騎手の後ろに乗り、私用に着けてくれたバンドを握る。


「このバンドは全ての鞍に着いてるんですよ」


 騎手の人が教えてくれた。それだけ頼りにされていると思えば悪い気はしない。利用って気もするけど。


 飛竜が飛び立つ。補助魔法を掛けるタイミングは騎手に任せている。


「バフをお願いします!」


 このちょうど良いタイミングと言うのは、飛竜の調子や気流、更に個体差での違いまであり、時々バイトするだけの私には無理だ。

 青魔法使いとして補助魔法のタイミングを他人に委ねるのは三流の証だが、相手は人間では無いのだ。少し大目に見て欲しい。




 超スピードの空の旅を終え、寒さに強張る身体を温泉でほぐしている。

 あの野郎何がギリギリだ、夕焼けで真っ赤じゃないか! 「私の補助魔法がスゴいからだ」と騎手の方には褒めてもらったが。

 まぁいいさ、報酬で宿の料理をグレードアップできたんだから。


「これルーティーンにしよっかなぁ。ここの局長は紳士だし。宿まで紹介してくれるし」


 ん? 待てよ? もしかして、お膳立てされてる?


「まぁいいか、ふわぁああ、ほぐれる~」


 良いお湯に浸かり、美味しいご飯を味わい、素敵な景色の街並みを眺める。冒険の疲れをすっかりリフレッシュ。

 一泊二日の温泉旅行。本気でルーティーンにしてみようか。



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