第4話 共通点
それはそうと、自分はどうなんだ?......結局はここにいる他の人達と、同じ理由でここに居るのでは?
そう考えると、今回の事件の依頼すら、ここに連れて来られる為の罠だったのではないか?......そんな疑念すら生じてくる始末。エマは混乱仕掛けている頭の中を必死で整理した。
この難解なパズルを解く為には、まだまだ情報が足りない。とにかく情報。有力な情報が必要だ......エマは閉じていた目をゆっくりと開けた。
「皆さんが知っている事を全て教えて下さい。どんな些細な事でも結構です。お願いします」
しばしの沈黙は、動揺しきっていた三人の心を、幾分ながら落ち着かせたようにも見える。
そして、最初に口を開いたのは春子だった。
「私は学生時代に栄養学を学んでいました。だから分かるんだけど......ここで出される食事はとても鮮度が良くて、しかも栄養のバランスが実に良く考えられてる。
一日三食必ず出るし。こんな汚くて狭い牢獄に押し込められている事を考えると、物凄い違和感を感じます。こんな事でもいいのかしら?」
「鮮度が良くて栄養のバランスがとれた食事......これから殺そうとしている人間に与えるには勿体ない話ですね。確かに奇怪です。解りました。他にはありませんか?」
皆腕組みをして、考え始めるも中々出てこない。再び沈黙が辺りを包み込む。水を打ったような静けさだ。
「では質問を変えます。皆さんがもし選ばれた人だとしたら、何で選ばれたのでしょうか? 思い当たる節はありませんか?」
エマは三人の顔を再び順に見渡した。
ここで口を開いたのは山本だった。
「俺はこれまで警察にお世話になった事も無いし、真面目に生きて来たつもりだ。病院は大嫌いなのに家族の為と思い、先日人間ドックにも行ってきた。もし選ばれたとしたなら、何で選ばれたのか皆目見当がつかない」
思い当たる節......
色々な取り方はあるが、山本はそれを『悪事』と捉えたようだ。自分は善人なのだから、連れて来られる理由など無い。そう言いたいのであろう。
一見、的を得ていないような山本の話......しかしそこには、パズルを解く為の重要なキーワードが含まれていた。エマはそれを聞き逃さなかった。
「人間ドック?」
エマは大きく目を見開く。
「ああ......秋葉会の病院だよ。ここが一番安くて親切だって知り合いから聞いたんだ」
すかさずその話に春子が加わった。
「秋葉会? 私もここに連れて来られる前、その病院に行きましたよ。下っ腹が痛む日が続いたんで......レントゲンとか血液検査とか色々やったけど、結局何でも無かったの。でも結果聞く時って本当に怖いですよね」
「俺は結果聞く前に誘拐されちゃったから。結果はどうだったんだろう? 今更どうでもいいような話にも思えるけど、実はちょっと気になってたんだ」
「つまり二人とも社団法人秋葉会の病院に行っていた。そういう事ですね。ちなみに秋葉会って......」
「今話題の新党富士の総裁 秋葉秀樹の兄、秋葉大地が経営する病院だ」
秋葉大地!
セントジェーン病院でエマは、桃という少女にミサンガをあげた。その桃ちゃんが医師に向かって呼んでいた名前......
「大地先生!」
今でも桃ちゃんが叫んだその声が、はっきりと耳に残っている。その名前はどこにでもいるような在り来たりな名前では無い。




