第2話 突撃
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「恐らく他の二人は探偵事務所の人間だろう。かまわん、バーテンも含めて皆殺にしてしまえ!」
リーダー格の男が銃を担ぎながら、気色ばんで指示を下した。
「了解!」
「了解!」
「了解!」
「......」
「おい沙世、聞いてるのか?」
「......」沙世は無言。
しかし目は爛々と輝いていた。
「よし。いくぞ!」
四人は皆銃を抱え、薄暗い路地を駆け出し始めた。路地の出口で先頭を走った男が立ち止まる。そして往来の様子を伺う。
「人通りはありません。OKです」
「よし。行くぞ」
四人は縦一列になり、一気に走り進んでいく。
そして止まることなくBAR SHARKに通じる階段を駆け下り、扉の前で止まった。
「俺が扉を開けたら、一斉にぶっ放せ。動くもの全てを撃ち尽くせ。いいな!」
皆、目で合図を送る。
「よし。開けるぞ!」
リーダー格の男は扉のドアノブを静かに握った。四人に緊張が走る。心臓の鼓動の音だけがバクバクと響く。
やがて男は一旦息を大きく吸い込んだ後、力任せに扉を開けた。それを合図に四人は銃を構えたまま、店内になだれ込んでいく! すると......
「うっ!」
一人の男が思わずうめき声を上げてしまう。店内になだれ込んだはいいが、明らかに聞いていた状況と違っていた。電気は消され、真っ暗闇。唯一の光は今開けた扉から差し込む僅かな光だけ。
そして、バタンッ!
突如背後の扉が乱暴に閉まった。唯一の光源だった外からの光が絶たれた店内は、正に暗黒の世界。この中に入り込んだ四人が盲目の士となった瞬間だ。何も見えない......
「罠か!」
突如一人が無造作に銃を撃ち放った。
バンッ!
狭い店内で発生する銃声は、鼓膜を破り掛けない程の大爆音だった。
「バカ! 無暗に撃つな! 相打ちになるだろ。とにかく落ち着け」
リーダー格の男は、手探りで扉のドアノブを弄ってみた。しかし開かない。外側から鍵が閉められている。
閉じ込められた!
シーン......水を打ったような静けさだ。視界ゼロの世界というものは、こんなにも恐怖心を煽るものなのか。
ドクンドクン......心臓が高鳴る。
ゴソゴソ、ゴソゴソ......
「何か聞こえるぞ!」
ゴソゴソ、ゴソゴソ......
何かが近寄ってくる。
何なんだ!
ガシャン!
突如端の方から、ガラスの砕けたような音が鳴り響いた。グラスが落ちて割れた音だ。
四人は反射的に、その方角に振り返る。そして思わず一人が再び銃を撃ち放つ。
ドンッ!
相変わらず物凄い音だ。
「だから撃つなって言ってるだろ!」
リーダー格の男は、肘で撃った男の背中をどついた。
バタン!
続いてまた逆の方角から新たな音。
「うわっ!」
一人が驚きのあまり飛び上がってしまう。
そしてまた違う方角から、ジャー......
今度は水の流れる音。誰かが蛇口をひねったに違いない。
「うわッ......何なんだ!」
彼らの恐怖心はピークに達していた。四人は皆背中を向き合わせた状態で、店内の中心に固まっている。
すると再び、バンッ!
再び銃声が!
弾はリーダー格の男の顔をかすめていった。銃弾の風圧が顔の皮膚を刺激する。
「だっ、だから無暗に撃つなと言ってるだろ!」
何度も同じ事を言わせるな! と言わんばかりの口調だ。語気が荒い。
「自分は撃っていません」
「自分も」
「私も」
誰も撃っていない?......では誰が?
目に見えぬ敵も銃を持っているのか?
そして近くとも遠くとも知れぬ距離から、男の声が響き渡ってくる。
「お前達には我々が見えない。しかし我々にはお前達が見えている。そして我々の銃口は今お前達の頭に照準を合わせている。どういう状況か分かるな」
決して大声で言っている訳では無かった。しかし水を打ったような静けさに加え、視界ゼロの世界。そこに見えぬ恐怖が加わると、鬼の怒号にも匹敵する。
囲まれた四人は目を細めて四方を見渡す。しかし光の全く無い世界で物体を確認出来る程、人間の目は精巧に出来ていない。
「四人共銃を捨てろ!」
先程よりは遥かに強い語調。カウンター付近から聞こえた気がする。
どうする? 答えは出ない。
ドンッ!
再び銃声。それの音と共に瓶が四人の顔付近で飛び散った。破片が頭に降りかかる。
ヒイッ! 四人は擦れるような声で悲鳴を上げた。




