第4話 大家
「いやあ有難うございマス。タスカリました。これはほんのお礼デス」
ポールは先程見せた封筒を丸坊主の作業員に手渡した。
丸坊主の作業員は封筒の中身を確かめた途端、顔がにやけ始めた。
「あっ、ソウソウ......そのお礼の中には口止め料含まれてイマス。
自分が尋ねて来た事を誰かに言うと大変なコトになりますよ。もう一人の方もオナジです。
アナタも口止め料ほしかったらソノ方から頂いて下さい」
ポールは一転威圧的な語調。殺気がにじみ出ている。
「ああ解ってるよ。誰にも言う訳無いだろ。ストーカーしてたんだから」
「解ってらっしゃればいいんデス。ナガイキしたければ黙ってる事デス。
たまにバカがいてソウイウ奴は後始末が面倒で困っています。
アナタは賢い方で良かった。それじゃあ失礼しマス」
ポールは二人に一礼をすると、足早に階段を下りて行った。
そして敷地内に止めてあった車に乗ると、先程手渡された宮田恵子の住所をカーナビに入力した。
そして案内に従って東京の北部へと移動を開始したのであった。
ここに間違い無い......
目の前には宮田恵子の表札があった。
薄汚れたアパートの105号室。
ドアポストから顔を出している郵便物は全て各公共機関などから届いた督促状。
やはり金に困っているのか......
ピンポーン
ポールは呼び鈴を押した。返事は無い。
ピンポーン
再度押してみるも、やはり反応は無い。
腰高窓に映る部屋内のシルエットは暗く、電気メーターもほとんど回っていない。
不在のようだ。少し待ってみるか......
そこへ一人の中年女性が通路の向こうからこちらに向かって歩いて来るのが見えてきた。
サイズ違いのサンダルをバタつかせながら、足早に駆け寄って来る。
そしてポールに向かって「あんた宮田さんの知り合いかい?」気軽に声を掛けてきた。
年齢六十歳前後という所だろうか。
しわしわの顔の中に赤い口紅。そこだけが妙に目立つ。
しゃべる口から、入れ歯がパカパカ浮いているのが見え隠れしている。
お世辞にも好感度が高いとは言えない。
「イイエ......知り合いって訳デハありませんが、チョット用があって」
「あんたも宮田さんにお金貸してんのね。ほんと困ったもんよ。家賃三ヶ月も滞納されたら、こっちが干上がっちゃうわ」




