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傷だらけのGOD 極神島の秘密 怒りのサバイバル!  作者: 吉田真一
第18章 拉致
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第4話 島の願い

エマは階段を素早く駆け下りた。階段は相変わらずの軋み音。慣れてくれば気にもならない。



「峰さん遅くなってすみません。今日も一日お店頑張ります。ところで、話って何ですか?」



エマは疲れを悟られないよう、努めて元気な声で話した。空元気この上も無い。



すると峰が大きなお腹を左右に揺らしながら、厨房ののれんから顔を出した。



「エマさんお早う。あら今日はすっぴん? 可愛いじゃない? お父さんまた大変よ。


もうすっかりエマさんのファンだから。ほら言ってるそばからやって来た」



大五郎はすでに板前の白衣。仕込の準備万端という所だ。



「おや? エマさん今日は何か雰囲気違うね。おお化粧して無いのか......やっぱ美人は化粧して無くても美人だねえ......」



またしても顔がにやけている。



「いやあ......何ですかねえ」



毎度の事ながら答えに困る。どうしたものか......



「あんた...... あの話」



急に峰の表情が変わった。



「おお、そうか」



大五郎の顔も急に引き締まる。二人はお互い顔を見合わせ目で合図を行った。



何かしら。重要な話か?



「エマさん。ちょっと座って」



峰はエマの顔をじっと見つめている。



「あっ、はい」



エマは四人掛けテーブルの椅子に座った。続いて大五郎と峰もその向かいに座る。



この重苦しい空気は何なのか? 嫌な予感が......



すると満を持して峰が口を開いた。



「突然変な話をするけどごめんなさい。エマさん、この島の血筋の話は聞いた事あるかしら?」



「血筋......ですか?」 



「そう血筋。実は極神島民の先祖は皆他の島の生まれなの。


戦後事情があって、この極神島に移住して来たってわけ。


私達の世代はもうみんな極神島生まれだけど、私達の親の世代は皆他から移住して来た人達。


その時の経緯もあって、極神島民はこれまで外部の人とはほとんど交流を持たないでやって来たの。


だけど人口がどんどん減ってきちゃって、これじゃいけないってみんな思い始めたの」



峰はここで一呼吸を置いた。大五郎は何も声を発せず、腕を組んで峰の話にただ頷いて聞いている。



「そんな歴史があったんですね。それで私に話って......」



「そう、ここからが本題。エマさん、あなたはすごい働き者だし、ちゃんと気配りもしてくれるし、何より真面目。おまけに美人だしね。


あなたみたいな人は他にいません。どうか私達と一緒に極神島の民となって、島の存続に協力して貰えないでしょうか? 


これは私個人のお願いで無ければ、この田中家だけのお願いでもありません。


極神島からのお願いです。どうか聞き入れて頂けないでしょうか?」



峰の顔は真剣そのもの。その表情には一パーセントも冗談は含まれていなかった。



「ちょっと待って下さい。あまりに唐突過ぎて。どうお答えしていいのか......」



戸惑うエマを尻目に峰は更に続けた。



「ところでエマさん。太一の事どう思う? あの子はぶっきら棒で不器用な所があるけど、本当はすごく優しくていい子なの。あなたがこの家に嫁いでくれたらどんなにいいか......考えてくれないかしら」



斉田雄二を殺した人間をこの世から消し去るというミッションをまだクリアー出来ていない。



よってエマが極神島に来た本当の理由など話す訳にはいかなかった。



しかしはっきりと断っておかないと、逆にこの人達に迷惑を掛ける事になる。



峰と大五郎は生唾を飲んでエマの返答を待ち構えた。



エマは一呼吸置き、そして言った。



「そこまで私を評価してくれて本当に有難うございます。


それに皆さんこんな私にすごく良くしてくれて......太一さんが優しくてすごくいい人なのは解っています。


しかし私にはまだ東京でやらなければならない事が沢山あります。それに私の帰りを待ってくれている人もいます。


ですから今の私には、皆さんのご期待に応える事は出来ません。申し訳ございません」



エマは頭を深々と下げた。



「そんな事言わないで何とか考えて貰えないかしら? エマさん」峰は必死だ。



「すみません」



エマは静かに、そしてはっきりとした口調で言った。 



「そうかい。どうしてもだめかい?」



ここで初めて大五郎が口を開いた。



「ごめんなさい」



エマは再び頭を下げた。



「そうか、残念だな。まあお茶でも飲んで。おい峰エマさんにお茶でも出して」



「あら気が付かなくてごめんなさい。今お茶入れますから」



峰は席を立ち厨房へと向かった。



「そんな気を遣わないで下さい。それからあと二十日間位バイト期間残ってますが......その間は働かせて頂けるんでしょうか?」 



「それはもちろんさあ。頑張ってもらわにゃ。エマさん目当ての客も多いからのう」



大五郎はそう答えながらも、落胆の表情を隠せない。



「有り難うございます。精一杯頑張ります」



エマは努めて笑顔で答えた。



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