表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傷だらけのGOD 極神島の秘密 怒りのサバイバル!  作者: 吉田真一
第17章 死闘
76/256

第8話 一騎討ち

厳七が右手に持ったサバイバルナイフを振り下ろす正にその瞬間だった。

 

エマは即座に体を脇にそらし、右手で厳七の左肩を軽くポンと押した。その時全体重を右足に掛けていた厳七の巨体は、一瞬にしてバランスを失ってしまう。



しまった!



大きく前に移動した重心に対し、二本の太い足は遥かに後ろ。もはや体勢の建て直しようが無い。厳七のクマの様な巨体は無重力状態となり、エマの遥か後ろで見事にひっくり返った。その拍子でサバイバルナイフは厳七の右手から離れ、エマの足元にボトッ、見事転がりを見せる。それは正に『小よく大を制す』......合気道の神髄とも言って良い。


しまった!


厳七は打ち付けた腰をさすりながら、恐る恐る顔を上げてみる。その視線の先には、何とサバイバルナイフを持ったエマが目の前で仁王立ちしているではないか。その顔は殺気立ち、いつ右手が振り下ろされてもおかしくは無い。



「まっ、参った。俺が悪かった。勘弁してくれ。改心するから」



厳七はすでに戦意を喪失していた。顔が青白い。先程までの自信はどこに行ったのだろうか?



エマは表情一つ変えず実に冷淡な口調で言い放つ。



「神の命により、お前を処刑する。あの世に行って改心しろ」



エマがこういう口調で言うのも珍しい。



その時だ。



「キャー!」



突如後方から少女の叫び声が! エマは咄嗟に後ろを振り返る。



「玲奈ちゃん!」



なんと玲奈は木から落ちていた。木の下でぐったりしているのがここからでも分かる。


今がチャンス! この隙を見逃す厳七でも無い。即座に立ち上がり、エマに背中を見せたかと思えば、全力で逃げ始めた。



「あっ! くそぉ......」



一度は追い詰めた厳七が、見る見るうちに遠ざかって行く......


今回死ぬ思いまでして、極神島にやってきた本来の理由。それは斉田雄二を殺害した犯人を見付け、この世から消し去る事。その意味では、厳七を今追い掛けて、抹殺してしまえばこれで任務完了となる。


しかしエマは、逃げ行く厳七とは全く逆の方角に向かって走っていた。


玲奈ちゃん!


玲奈は高木の下で仰向けに倒れていた。顔は青白く額には大粒の汗が噴き出している。そして左足首には二つの赤い斑点。その周りは紫色に変色していた。


大牙に咬まれた跡!


「玲奈ちゃんしっかりして! 私が分かる?」



エマは壊れ物を扱うかのように、玲奈の身体を静かに抱き起こした。



玲奈はうっすらと目を開ける。目の前にはエマの顔が......玲奈は微かな笑顔を浮かべ、蚊の鳴くような声で言った。



「あ......お姉ちゃん。戻って来てくれたんだね......木の上に赤目の大牙が上がって来たの。足で蹴り落としたんだけど......その時咬まれちゃった」


しゃべることすらも辛そうな様子だ。


「玲奈ちゃん一人にしちゃってごめんね。私が離れなければこんな事に......大丈夫! 絶対に助けるから」


「うん」


玲奈を抱きしめるエマの腕あに、玲奈の脈の振動が伝わってきた。明らかに脈拍が速い。これは大牙に咬まれた時の典型的な症状だ。



咬まれてから三十分以内に血清を打たなければ命は無い。すぐに血清を打たねば!


血清は料亭潮風のエマの部屋に置いてあるスーツケースの中だ。猶予は三十分。走れば何とか間に合う!


「玲奈ちゃん。血清を打てば助かるから。これからお姉ちゃんの住んでる所に行くよ。お姉ちゃんも頑張るから玲奈ちゃんも頑張って」


エマは努めて明るく言った。


「うん......」


玲奈の息は荒い。苦しそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ