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傷だらけのGOD 極神島の秘密 怒りのサバイバル!  作者: 吉田真一
第17章 死闘
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第1話 潜入

挿絵(By みてみん)


銃で撃たれ追っ手に囲まれた時は、さすがのエマも一度は死を覚悟した。


そんな袋の鼠状態から抜け出せたのは、正に玲奈の導きがあっての事。玲奈は救世主と言えた。


そうだ。玲奈ちゃんは?


滝のように流れる汗をスーツの袖で拭いながら、エマは周囲を見渡した。どこを見渡しても密集した高木ばかり。玲奈の姿はどこにも見当たらない。


ここから先は自力で抜け出せという事なのか?


吹き抜ける心地良い風は、洞窟内で上昇したエマの体温を下げるのに一役買っていた。心なしか左肩の腫れは少し引いた様にも見える。もっとも痛みが引いたという訳ではないが。


自然治癒能力......


それは生ある者に与えられた能力。人間の体とは実に神秘的に出来ている。


ガサ、ガサ、ゴソ、ゴソ、バサ、バサ......


足音を立てる度に何かが動き回る。


動物なのか? 鳥なのか? それとも別世界の何かなのか?


幽霊出そう......不気味この上も無い。


そんな中、洞窟の中ではまるで役に立たなかった方位磁石も、地上に出た途端、本来の働きを始めていた。


とりあえず町へ戻ろう......


エマは方位磁石の示す東に進路をとった。空間を埋め尽くす枝葉はバリヤーの如く月光を遮り、妖気


漂う暗闇の世界を演出している。


足は鉛の玉を繋がれているかのように重く、一歩踏み出す度に強い痛みすら覚えた。凡人では無いとは言え、エマも生身の人間である以上、体力には限界があった。


そして疲労困憊の中、ある地点に差し掛かると、突如エマは足を止めた。


海から辛うじて届く微風がエマの前髪を揺らす。エマは前髪をかき上げながら、ゆっくりと上方を見上げた。


あれっ? ここ何か見た景色?


北側、即ち山側に小さく広がる丘。そこだけは綺麗に木が刈られているように見えた。


間違いない! 


丘の上は玲奈とあの男が住む家だ。



そして大牙の倉庫!


何よりこの事件を解く鍵があの家と倉庫に隠されている事は明白だ。


挿絵(By みてみん)


行くか!


エマは疲れきった体に鞭を打ち、再び闘志に火を灯した。メラメラと燃える心の炎は、エマの表情にも変化をもたらす。逃げることしか考えない草食獣から獲物を追う肉食獣の目に変わっていった。


木の根が張り巡らされた斜面は、気を抜くとすぐに足を取られる。


ハアハアハア......心臓は破裂寸前。しかしこんな所で倒れる訳にはいかない。


もしあの男が家に戻っていたら?


いや、戻っているのであれば玲奈は外に出れなかったはずだ。洞窟の中でエマを出口に導くなど出来たはずが無い。


「今度勝手に外に出たらどうなるか分かってるな!」


玲奈に怒鳴りつけたあの男の声が、今も鮮明に頭に残っている。卑劣極まりない冷たい声だった。


あんな小さな女の子にひどい。やっぱ許せない!


エマは込み上げてくる怒りを抑えながら、草木の影に身を潜め、家の様子を伺った。窓からはオレンジ色の暖かい光が外に漏れ出し、周囲の森をスポットライトのように照らし出している。あの時と同じ生活感がにじみ出ていた。


エマは身を屈め、足音を忍ばせて慎重に家へと近づいていく。


ピンと張りつめた空気がエマを包み込む。そして窓からそおっと家の中を覗き込んだ。


動物の剥製、暖炉......家の中は誰もが思い浮かべる山小屋そのものだった。人の姿は見当たらない。


静かにドアノブを回し手前に引くと、扉は何の抵抗も無くスーっと僅かな音を立てて開いた。


鍵が掛けられていないのは、ただの不用心なのか?


それとも玲奈が家の中に導いているのか?


それとも罠?

 

あらゆる可能性を拭い切れない状況ではあるが、ここまで来て引き返す訳にもいかない。


罠なら罠。その時はその時だ!


腹を括るしかなかった。


エマは目を光らせ、耳に神経を集中させ、慎重に家の中へと足を踏み入れていく。やはり人の気配は感じられない。


誰も居ないのか? 


ならばなぜ電気は点いているの?


水を打ったような静けさの中、疑念が疑念を呼び、更なる緊張感がエマの心を支配し始める。


ミシ、ミシ、ミシ......


フローリングの軋み音だけが静寂に包まれた空間に響き渡った。


床、壁、天井、その他全てが木で出来ており、床には動物の毛皮が敷かれている。きっとあのライフルで仕留めた動物達なのであろう。撃ち殺されて敷物にされた動物にしてみれば実に残酷な話だ。


続いて家具、机、椅子、ソファー......それらも全てログハウスを意識した趣のある物だ。 


そんな中、エマの目は北側の隅に置かれた一つの棚に留まった。


それは何の変哲も無いどこにでもあるような金属製の棚だった。事務所などでよく目にする殺風景な棚。


あちこちに傷が見受けられ、かなり使い込んでいるように見える。しかしこの木目調で統一されたインテリアに囲まれていると、妙に浮いて見える。


何か怪しい......


それは野性的直感と言ってもよかった。


上部は横引きのガラス扉になっており、下部は引き出しが三段。薄汚れたガラス扉の内側は、人形やら小物などが無造作に置かれているが、どれもありきたりな物ばかりで特に目を引く物は無い。


いずれも埃を被っており、それは暫くこのガラス扉が開けられていなかった事を意味している。


こっちは特にないか......


続いてエマの視線は下の引き出しに向けられた。


上から一段目......


中は空だ。開けた途端に強烈なカビ臭が鼻をつく。ここも暫く開けられてはいなかったのだろう。


続いて二段目......


ここも中は空だ。隅々に綿埃の堆積が見受けられる。


ここも手掛り無し。


この棚。直感的に何かあると思ったんだけど......思い過ごしか?


ところが三段目......


エマは引き出しの中に押し込められている複数の塊に目が釘付けとなった。


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