第8話 弔い
圭一は決心を固め、立ち上がろうとしたその時だった。
「うわぁ!」
圭一に殴られ、意識を失っていたもう一人の刺客が突如意識を取り戻す。そして血まみれになった仲間の死体を目の当たりにし、腰を抜かしながら一目散に逃げていった。
逃げ足だけは妙に早い。あっという間に見えなくなっていった。
「放っておくとしよう。それよりも美緒さん。早くこの場を立ち去らねば」
「はい。でもどこへ」
「もう実家にも美緒さんのマンションにも帰れなくなった。さてどこへ行ったものか? まずは車に戻ろう。もっとも彼の仲間が待ち伏せしているかも知れんが......その時はその時で死体の山を積み上げるだけだ」
二人は男の屍をその場に残し、地下駐車場へと消えて行った。
そんな惨劇から十分後......
血まみれになって横たわる男の周りには、四人の若者が沈痛な表情を浮かべながらしゃがみ込んでいた。その中の一人は女性だ。
「正くん......正くん!」
女性は冷たくなった男の名を連呼しながら泣きじゃくり続けた。
「正雄、良くやった。お前は忠誠を尽くした。仲間の為に犠牲となったお前を神は絶対に見捨てない。必ずや神の僕となる事だろう。お前を我々は誇りに思う。極神教万歳!」
「極神教万歳!」
「極神教万歳!」
「極真教万歳!」
彼らは連呼した。
「桜田美緒と一緒に居た男が誰なのか分かったそうだ。今本部から連絡があった。さあ弔い合戦だ! これから我々は東京の新宿に向かう。奴等のアジトがそこにある。沙世安心しろ。すぐに正雄の敵を討たせてやる。悲しんでる暇は無いぞ」
「分かりました......絶対に桜田美緒を許さない。私から正雄を奪った代償を払ってもらう。絶対に殺してやる! 絶対に!」
本名蕪沙世......
生まれながらにして執念の女と言われていた。
普段は物静かで大人しいその性格も、怒りと言う感情が加わると豹変する。極神島の中でもその血が最も濃い家系に生まれていた。
彼女の怒りを鎮める事が出来るとしたら、それはもは仇を取る事以外には無かった。
唇を噛みしめながら四人は屍を毛布で包み、静かにワゴン車の荷台へと運んだ。
そしてワゴン車は四人の悲しみと怒りを背負ったまま、ショッピングセンターを後にした。
いつしか夕日は姿を消し、ネオンライトがあちこちで眩い光を放ち始めていた。




