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傷だらけのGOD 極神島の秘密 怒りのサバイバル!  作者: 吉田真一
第15章 襲撃
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第1話 ペアルック

挿絵(By みてみん)


翌朝九月二十三日(日)午後三時。


日曜の午後ともなれば、国道沿いの大型ショッピングセンターも、家族連れや若者達で溢れかえり、盆と正月が同時に来たような大層な賑わいを見せていた。


特に混み合っているのが一階のスーパー。


夕食の食材を求める人々が、それぞれ大きなショッピングカートを引きずって歩くものだから、お互いが邪魔である事この上も無い。


「ええと......焼肉用の肉1200グラムと牛乳2リットル。それと玉子1パックにビール2ダース」


立ち止まって買い物リストを確認する美緒。



「ちょっと、そんな所に立ち止まったら通れない

でしょう!」


イライラを我慢出来ず、口に出してしまう人はどこにでもいる。中高年に多い。


「あっ。すみませんね......美緒さんちょっと端に寄ろう」


圭一は美緒の引いていたカートを端に寄せた。


「混んでんだからしょうがないじゃない。イライラしてるからって人に当たらないでほしいわ」


結構な声量だ。幸いにも聞こえて無かったらしい。背中を向け鮮魚の品定めに格闘中の様子。


タイムサービスのコーナーは、宛ら戦場のようにも見える。


皆肘を張って自分の縄張りをキープ。


縄張りを侵犯するものには肘鉄を喰らわす。弱肉強食の世界だ。遠慮していると、買得商品にありつけない。


正に女の戦いの場と言えよう。


「まあまあ美緒さん。日曜なんだし楽しくいこう

よ。ほら牛肉、牛肉」


圭一は頬の肉に力を入れ笑顔を繕った。それに釣られて笑顔を見せるような美緒でも無い。もはや美緒の膨れっ面は定番とも言えた。


「それもそうだし、だいたい私達......何でこんな 格好なの?」


いつも青白い顔色をしている美緒が、なぜか頬だけが赤い。


今日の二人の衣装......


それは何とペアルックだった。二人してデニムに黄色のTシャツ。


しかも胸には大きく赤字で『LOVE』というプリントが施されていた。日本広しと言えども、恥ずかしくない者はいないだろう。


挿絵(By みてみん)


「まあしょうがないでしょう。出掛けにお父さんからこのTシャツ渡されて、愛し合ってるなら着れる筈だ! 


なんて言われたら着るしか無いでしょう。ただでさえ少し疑われているふしがあるしな」


圭一はとうの昔に諦めていた。


「だいたいこの程度の食材だったら、何もこんな大きなショッピングセンター来なくたって、近くの商店街で十分じゃない。意味分からない!」


美緒の不機嫌は止まらない。


「お父さんうちらに気遣ってくれたんだろ。気分転換して来いって事だよ。昨日の事があったから」


美緒は雄二が亡くなった極神島の民の血を引いているという事実。


それは美緒にとってあまりにも衝撃的な事実であった。



「......」



思い出したかのように出る深いため息。怒っている時だけは、その事を忘れられるのかも知れない。


不安定な気持ちの中で演じる偽装カップル。


自分の身を守る為とは言え、好きでも無い男とペアルックで歩き続けるのも辛かろう。圭一は美緒の心中を察した。



「二階のショッピングゾーンで服買って着替えて来るよ。でもお父さんに悪いから......帰り家の前でまたこのラブTシャツに着替えるけどな。ちょっと行って来る」


圭一は言い終わるや否や、上りエスカレーターの方に向かって歩き出した。


すると美緒はすくっと顔を上げた。


「そんな面倒臭い事しなくて結構です。私と同じ服着て歩くのがそんなに嫌ですか? すごい失礼な人!」


美緒の顔は完全にムッとしている。



ペアルックでいたいのか?


いたくないのか?


一体どっちなんだ!


マリアナ海溝よりも深い乙女心を無骨者が理解するのはちょっと難しい。


『嫌よ嫌よも好きのうち』


圭一の辞書にそんな言葉は無かった。


「そんな事誰も言ってないじゃん。嫌がってるのは美緒さんの方だろう。意味が解らん」


「結局圭一さんだって私の御守りなんてしたくないんでしょう。私なんて早く死んじゃえって思ってるんでしょ。正直に言ったらどう!」


吊り上った眼鏡に合わせて目も吊り上っている。


「何怒ってるんだ? 勘弁してくれよ。せっかく人が気遣ってるのによ。本当に疲れる人だ!」


本能で頭に浮かんだ言葉を、理性と言うフィルターに掛ける事無く、そのまま口に出すような圭一では無かった。


しかし今日は違った。圭一の器にも限界があるようだ。


その途端、美緒はその場にしゃがみ込み、今度は大声でワンワン泣き出し始めた。


何だ、何だ?


半径二十メートル範囲内の客、店員、そしてリードで繋がれた犬までもが、一斉に二人へ視線を向けた。



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