第4話 刺客
「美緒。お前の生まれ故郷は極神島という南の小島だ。山びこ園の園長先生から聞いた話だ」
「えっ、今......何て言ったの?」
「極神島だ。お前の出生の地だ」
春夫は表情一つ変えず淡々と答えた。
それが美緒にとって、どれだけ衝撃的な事なのか勿論知る由も無い。
「嘘! 嘘でしょう。私が極神島で生まれた? 有り得ない! あなた一体何なのよ。よくもそんな事軽々しく言えるわね。いい加減にしてよ!」
美緒は突然立ち上がり、烈火のごとく怒り始めた。自分でも何を言っているのか分かっていない。
「お前......どうしたんだ。いったい何怒ってんだ」
春夫は想定外の美緒の反応に驚きを隠せない。いつしか顔が蒼くなっていた。茫然と立ち尽くしている。
「......」美緒は無言。
「どうしたんだよ美緒......何があったんだ。もしかして何か俺に隠してる事でもあるのか?」
「隠してる事なんて......何も無い。ごっ、ごめん。私少し疲れているのかもしれない」
「本当に何もないのか? なんで極神島という名前を聞いてあんなに驚いたんだ? だいたい何で極神島を知ってるんだ。ほとんど誰にも知られていない島だぞ」
「ごっ、ごめん。もう遅いから私戻るね。圭一さんも待ってるだろうから」
美緒は父をその場に残し、足早に去っていった。
春夫は一人夜空を見上げた。昔この場所で美緒と共によく夜空を見上げたもの
だ。
「美緒......」
少しづつではあるが、四方に散らばっていた点が磁力で引き寄せられるかのように、中心の一点に集まりつつあった。
事件は少しづつではあるが、確実に動き始めてい
る。それは圭一も美緒もひしひしと感じていた。
一方その頃宇都宮では......
駅前のパーキングに一台のワンボックス。ナンバープレートの最初のひらがな『わ』と記されている。レンタカーだ。
その車の横には若者が五人。車の横で立ち話をしている。
「いよいよ決行は明日だ。今日はうまいもん食べて明日に備えるぞ」
そう話したのはリーダー的存在の男と思われる。
「ラッキー! ご馳走してくれるんですか! やっぱイタリアンでしょう。イタリアン、イタリアン!」
一方そう答えたのは、この五人の中で一番若く見
える青年だ。
「お前観光に来てるんじゃないぞ。はしゃぎ過ぎ
だ」
「そうよ。遊びに来てるんじゃないんだからね」
見れば女性が一人混じっていた。女性と言うよりかは少女と言った方が例えとして正しい。
「分かってますよ。腹が減っては戦は出来ないって言うでしょう」
「まあ、今回の仕事は楽勝だろ。なんせいつもみたいに連れて帰る必要が無いから。処置したらそれで終わりだ」
「女一人殺して終わりって事ですね」
「バカ! 殺すって言うな。誰が聞いてるか分か んねえだろ。処置と言え」
「ヘイヘイ......」
時刻は夜十時半。
美緒達に迫り来る危機。事件はいよいよその核心へと近付いていた。




