第3話 出生の秘密
「別に謝る事無いよ。何で謝るの? お父さんもお母さんも私にすごい愛情を注いでくれてた。ひしひしと伝わってきたよ。
私すごい幸せ者だと思う。確かにそれを知った時はショックだったよ。
でも何度考えたって二人が私のお父さんとお母さんである事に変わりはない。
そう思ったら血が繋がっているいないなんて関係無いって思えるようになったんだ」
「そうかい......有難う美緒。有難う」
春夫はその場にしゃがみ込み泣き崩れた。
「お父さん」
美緒は春夫の肩を両手で支えた。そして美緒の目からも涙が溢れていた。
暫し時が止まる。
それはまるで舞台の1シーン......
月光がスポットライトの役目を果たしている。
春夫は徐に立ち上がり、袖で涙を拭い取った。何か意を決した様子だ。
「美緒、俺の知ってる事を全て話す。いいか?」
「うん。お願い」
美緒も涙を拭った。
何を聞いても驚くものか......
春夫は一旦深呼吸をし、そしてゆっくりと話し始めた。
「お母さんはお前も知っての通り、昔から体が弱くてな。そのせいかどうしても子宝に恵まれなかった。母さん子供がなかなか出来なくて毎日泣いてたよ。
あの頃は毎日が本当に辛かった。俺はどうしても母さんに母親の喜びを味合わせてあげたかったんだ。
それで決めた。養子を取ろうって。お前と初めて会ったのは岡山の山びこ園という孤児院だ。忘れもしない。父さんと母さんはお前を見た瞬間人目惚れしちまってな。可愛かったよ。
目がウルウルしててな。お前がまだ生まれて三ヶ月の時だった。運命を感じたよ。神様がお前と巡り合わせる為にわざと子供を生ませてくれなかったんだと。本気でそう思った。
それから...... お前には血を分けた三つ年上の姉がいる。同じ孤児院にいたはずだ。確かな事は分からないけど今東京に住んでて花屋で働いているらしい。あと最後にもう一つ。お前の出生に関する話だ」
満月が発する光は今もなお、辺り一面を照らし続けている。相変わらず雲一つ無い。
一方大広間では......
「そうだったんですか......話してくれて本当に有難うございます。美緒さんがお二人の本当の子で無いからと言って、私の美緒さんへの気持ちが変わるものではありません。ご心配には及びません」
圭一は箸を休め、偽りは無いと言う気持ちを言葉
で表現した。
「圭一さん有難う。本当に有難う。あなたのその言葉を私は信じます。それから......あの子の出生の事なんですが、あの子はとっても小さな島で生まれたそうです」
「小さな島?」
「はい。小笠原諸島の島で、あまり名前は知られていないそうです」
「小笠原諸島! も、もしかしてその島って......」
「確か極神島って言ってました。そんな島聞いたことないですよね」
圭一の顔は一気に紅潮した。強く拳を握り締め、手はブルブルと震えている。
美代子は首を傾げた。圭一が何でそんなに興奮しているのか意味が分からない。
「......」
圭一は言葉を失った。
こんな事が有り得るのだろうか?
偶然にしては話が出来過ぎている。美緒は極神島で生まれたというのか。それが正しければ、極神島の血を引いているとい
う事になる。
運命の悪戯なのか?
それとも目に見えない何らかの力が働いているのか?
美緒がEMA探偵事務所に来た時、圭一は美緒の気性の激しさを目の当たりにした。
泣いている時、笑っている時、怒っている時、悲しんでいる時......全てがまるで別人のようであった。それは記憶に新しい。
これは極神島の民の特性と一致しており、今美代子から聞いた話の裏付けにもなる。
そういう事だったのか......
空はいつの間にか雲がかかり始めていた。これから始まる大波乱を予告するかのように......




