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傷だらけのGOD 極神島の秘密 怒りのサバイバル!  作者: 吉田真一
第14章 満月の夜
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第2話 血縁

画面に現れた男はまだ五十には達していないであろう。政治家においてはかなり若い部類だ。満面の笑みを浮かべている。


髪の毛を短くカットし、上下真っ赤なスーツに真っ赤なネクタイ。宣伝効果を狙った奇抜な装いではあるが、不思議と違和感を感じない。


そして甘いマスク......女性はその容姿だけで一票を入れてしまうのかも知れない。


「それまで十議席であった新党富士が、現時点で二十議席。このままいくと三十議席に近い数字が予想されますが、大躍進を遂げた要因は何だと思いますか?」



「我々の掲げている公約は全部で三つ。国民を苦しめている消費税の撤廃。皆様にお収め頂いている税金の全公開。そして世界に誇る強国日本を作り上げる。以上三つです。この公約に国民の皆様がご賛同頂いた結果と認識しております」


インタビューに応対しながらも、周りの歓声に手を振って応える事を忘れていない。見ように寄ってはスター気取りにもとれなくは無い。



そうこうしている間にも、新党富士の議席数を示すメーターが20、21、22と瞬きするごとに増えて行った。三十議席を超える勢いだ。


このままいくと民自党、国民党に続き第三党とな

る。正にそれは大躍進であった。



いつの間にか大広間の四人は、テレビ画面に見入っていた。


美緒のスキューバダイビングの話はいつの間にかどこかへ行ってしまったようだ。


「もしかして新党富士に投票されたんですか?」


枝豆を頬張りながら圭一が問い掛ける。


「圭一君は勘がいいな。その通りだ。この連中なら何かしてくれる。そんな気がしてね。特にこの秋葉秀樹って男。こいつはまだ若いのに見どころがあるぞ」


春夫も圭一に負けじと枝豆を頬張る。


その後も選挙の話やら、家畜の鶏の話やら話題は尽きない。


床の間の横の柱に掛けられた大きな鳩時計が十時の時報をしらせる。


ピポー、ピポー、ピポー......


「美緒。ちょっといいか」


徐に春夫が席を立った。心なしか神妙な顔をしている。さほど酔っている様子は無い。


「はい」


美緒も続いて席を立った。何か重要な話である事は父の表情を見れば解る。



「圭一さん。もう一杯どう?」


美代子が圭一のグラスに焼酎を注ぐ。


「頂きます」


圭一は注がれた焼酎で喉を潤わせた。


「圭一さん。私もあなたに話があるの。どうしても話しておかないといけない事」


「大事な話のようですね」


「そう......とっても大事な話」



これから春夫が美緒にする話。


そして美代子が圭一に今しようとしている話。


それらは同じ話なのか?


それとも全く別の話なのか?


話の内容はともかくとして、美緒から目を離して大丈夫だろうか?


もし刺客が来たら......


圭一は一抹の不安を感じていた。


しかしそんな圭一の心配をよそに、春夫は長い廊下を玄関の方向へと足早に進んでいく。美緒もそれに続いた。


「ちょっと外の風にでも当たろうか」 


「うん」


二人は下駄に履き替え、玄関を後にした。


玄関から庭へは歩幅に合わせて石畳が等間隔に埋め込まれている。


カランコロン、カランコロン......


下駄の踵が石畳を打つ音は、リズミカルで実に心地良い。なぜか懐かしい気持ちになる。


カランコロン、カランコロン......



挿絵(By みてみん)



農家は家の中も然る事ながら、庭も恐ろしく広い。どこまでが敷地内でどこからが山なのかほとんど判別がつかない。


そしてなおも輝き続ける月。十時を過ぎた今も健在だ。


桜田家は少し高台になった丘の中腹に家を構えていた。庭から辺りの山を見渡すのに遮るものは何も無い。


中でも景色が一番良く見える場所......


そこは美緒が幼少の時、よく春夫と玉投げをして遊んだ場所だ。


二人は思い出のその場所で足を止めた。


「懐かしいだろう」


春夫は目を瞑っている。昔を思い出しているのであろう。


「うん。よくここで遊んだよね。お父さんと」


美緒も目を瞑った。


「美緒......圭一君と結婚するのか?」


「えっ?......うん。そのつもりだけど」


美緒は一瞬戸惑いを見せたが、すぐに戸惑いを打ち消した。


「そうか、分かった......じゃあ一つ大事な話をしておく」 


あんなに酔っぱらっていた春夫も、今は全くの素面に戻っているようだ。


「何?」 


「実はお前に隠していた事があるんだ」


春夫は足元の小石を軽く蹴りながら、神妙な顔つきで切り出した。落ち着かない様子だ。



挿絵(By みてみん)



「私......知ってるよ」


美緒も足元の小石を小さく蹴った。小石は丘の下へとコロコロ転がる。


「お前、知ってるって......何を」


「私、お父さんとお母さんの子じゃないんだよね」


想定だにしない美緒のその言葉に、春夫の体は電撃が走ったかのように小刻みに震えた。


「知っていたのか......」 


美緒は落ち着き払っている。表情にも変化は無い。


「私、婚姻届出そうと思って戸籍謄本取りに行ったんだ。それで分かった」 


もちろん斉田雄二が生前の時の話である。


「そっ、そうか......すまない隠していて」



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