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傷だらけのGOD 極神島の秘密 怒りのサバイバル!  作者: 吉田真一
第14章 満月の夜
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第1話 酒宴

挿絵(By みてみん)



「いやあ圭一君。君は実にいい奴だ。本当に良く来てくれた」



九月二十二日 土曜日。 


エマが極神島に到着してから八日が経過したその頃......



栃木県西那須野の山奥では、東京より一足早い秋を感じる季節となっていた。


東京ではまだまだ欠かせないエアコンも、この地域では必要無い。


夜空に浮かぶ満月は、東京で見るそれより遥かに鮮明に見える。空気が澄んでいるからであろう。


外灯も無ければネオンも無いこの山間から見上げる月だからこそ、絶好の酒の肴と成り得ていた。


縁側に面した横滑りのガラス戸は全てが開け放たれており、この大広間のどこからでも満月を拝む事が出来る。


心地良い秋風は絶え間無く吹き込み、それはまるで天然のクーラーのようだ。



周囲を密集した木々で覆われた一軒の古民家。大広間では今日も盛大な酒宴が催されていた。


どこの地方でも来客を持て成すのに酒は欠かせない。まだ夜の七時をまわったばかりだというのに、呂律の滑らかなこの男性の顔はすでに真っ赤。大そうなご機嫌だ。


「おい美緒。なんでもっと早く紹介してくれなかったんだ。聞けばもう半年前から交際してるそうじゃないか。お前の無口にも程があるぞ。でも、まあいいか......こうして未来の婿殿と連日飲めてるわけだから。ハッハッハッ」


圭一と美緒が美緒の実家である桜田家にやってきてからすでに三日。開かれた酒宴も三回目を数える。


美緒の父であるこの桜田春夫は今年還暦を迎えたにも関わらず、まだまだ筋力と肝臓は現役だ。


農家に定年は無い。


「あなたちょっとペース早すぎるんじゃないかしら? 圭一さん婿養子になるなんて一言も言ってないじゃない。ほら圭一さんが困ってる」


そうフォローを入れたのは美緒の母美代子だった。この母も今年還暦を迎えた。春夫と同い年のおしどり夫婦だ。実に仲がいい。


圭一は頭をボリボリ掻きながら苦笑い。どうリアクションをとっていいものやら......


「そうそう圭一さん。美緒とスキューバダイビングはもう行ったのかい?」


ビール瓶を手に取り、圭一のグラスに瓶の口を差し向けながら春夫は言った。


圭一は両手でグラスを持ち、前に差し出す。


「スキューバダイビング......ですか?」


圭一は頭を傾げながら言った。


この色白の肌をした美緒とスキューバダイビングがどうも結びつかない。


「そうだよ。美緒はスキューバダイビングのライセンス持っててその腕はプロ級だぞ。えっ? 圭一君半年も付き合ってて知らないのか?」


春夫は不思議そうな顔。「お前達本当に付き合ってるの?」と言わんばかりに。


突如怪しい空気が漂い始めた事に美緒は敏感に反応した。


「やだ圭一さん。この間言ったじゃない。最近忘れっぽくなったでしょう」 


薄ピンクのTシャツに膝上のスカート。カジュアルな装いだ。中々似合っている。


それまで圭一が見て来た美緒は常にスーツ姿。お堅い印象しか持っていなかった。


美緒さんもやっぱ女なんだな......


圭一には今日の美緒が少し眩しく見えた。



挿絵(By みてみん)



「仕事のストレスかな? どうも最近忘れっぽくて。ああ......そう言えば海に潜ってるって言ってたよな」


取って付けたようなしらじらしい答え方。しかしすっかりご機嫌の春夫は、それ以上気にする様子も無い。


「今の仕事圭一君には合わないんじゃないか? 農家はいいぞ。どうだい? ハッハッハッ」


大笑いしながらも、横目でチラッと圭一のリアクションを窺がっている。まんざら冗談で言っているだけでも無さそうだ。


田舎の農家は東京の家と違い、一部屋一部屋の大きさが驚くほど広い。四人が他愛の無い会話を楽しんでいるこの大広間も優に二十畳は超えている。


床の間の真ん中には60V型の大型テレビが存在感を示している。


特に誰かが見ているという訳では無いが、先程から常に映像は映し出され、会話に支障が無い程度に音声も流れていた。BGM的な役割だ。


会話が途絶えると、皆特に目をやる場も無く、何となくテレビに注目。


テレビではちょうどその時、選挙の開票が行われていた。


「そういえば今日は解散総選挙の日だったわね」


圭一にビールを注ぎながら美代子が口を開く。


「結局今回も民自党だろ。まあ国民は結局無難な所に投票するんだよ。変化を好まないのがこの国の国民性だからな。でも俺は今回違う所に投票したよ。どこだと思う?」


ちょうどその時、テレビ画面には一人の小柄な男が満面の笑みを浮かべ記者のインタビューに答えていた。


画面のバックには大きく『新党富士』の文字が浮かび上がっている。新人アナウンサーだろうか。話のテンポはあまり良くない。


「それではここで、今大躍進を遂げている新党富士の秋葉秀樹総裁にお話を伺います。お目出とうございます。現時点で議席数は二十を超えました。今の心境はいかがですか?」  


「嬉しい気持ちでいっぱいです。これも我々新党富士をご支持頂いた国民の皆様のお蔭です。


我が党はまだ生まれたばかりの若い党です。我々の掲げるスローガンは皆様すでにご存じだと思いますが、ただ一言『愛』でございます。


我が党は全ての国民を愛し、そしてすべての国民の皆様から愛される党でありたいと切に願っております」



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