表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傷だらけのGOD 極神島の秘密 怒りのサバイバル!  作者: 吉田真一
第7章 西の森
15/256

第1話 金吉

挿絵(By みてみん)


やっとの思いで極神島に辿り着いた二人。焚き火に手をかざし、幾分か落ち着きを取り戻していた。


焚き火の火を見ていると、心が落ち着くという話を良く耳にするが、その話には科学的な根拠があった。


焚き火の炎の揺らめきは凡そ10HZの周波数と言われ、それはいわゆるα波の周波数に極めて近い。


また炎のオレンジという色自体にも、心を穏やかにする効果があると言われている。


焚き火の炎に限らず、波などの自然情景を長時間見ていても飽きないのは、それなりの理由があるとういう訳だ。


また、荒波の音、洞窟に吹き込む風の音、船が揺れる度に発する軋み音など、様々な音が混ざり合うと、それらは実にリズミカルで音楽のようにも聞こえる。


騒然とした都会の中で長期間暮らしていると、ピンとはこないが、人間もその他の動植物と同様、本来自然界の中で生きていくように、体も脳も設計されているのかも知れない。



「まあ何とか極神島にたどり着けたはいいけど、この後どうするんだい?」


「私は今晩中に東の町に行きたいんです。どう行けば一番早いですか?」


「悪いことは言わねえ。出発は明日の朝にしろ。東の町に行くには、西の森を抜けてかにゃあならん。


歩いて一時間も掛からんけど、夜西の森を抜けるのは危険だ。森には大牙っていう毒蛇が生息しとる。咬まれたら最期じゃ。


昼間は巣で大人しくしとるが、夜になると活発に活動する。夜行性の生き物じゃからのう。だから行くのは明日にしとけ」 


「う~ん......どうしよう? それで金吉さんはどうするの? 東の町に行くの? この嵐じゃ父島帰れないでしょう」


「嵐もそうだけど、ここに入る時あちこち岩にぶつけたから船が壊れちまってる。


こいつを修理しない事には船は出せん。それと俺は東の町には行かない。


ここで船を修理してそのまま帰る。まあ修理に数日間はかかるだろうけどな。そのうち嵐もどっか行くだろう」


「そっか......分かった」


きっと町には行きたくない理由があるのだろう。あえて聞きはしなかった。


「そうそう。エマちゃんだっけ? エマちゃんはこの島に一体何しに来たんだい?」


金吉は薪を補充しながらエマに問い掛ける。焚き火はバチバチと音を立てながら激しく燃えた。芯まで冷え切っていた身体が徐々に温まっていく。


「この島にある料亭潮風という所に短期でバイトしに来たんだ。住み込みだよ」 


「ふーんそうか。住み込みのバイトか。じゃあ一つだけ教えといてやる。


この島の奴らはとにかくちょっと普通と違う。最初は分からんと思うけど、何日かすればきっと分かる。


料亭の仕事にだけ集中して、死の岬の向こうに何があるとか、変な詮索をしない事だ。


そんでバイトの期間が終わったらすぐに本土へ帰れ。それだったら問題無い」


「そうそう。聞こうと思ってたんだ。死の岬の向こうには何があるの?」 


「だから今言ったばかりだろう。そういう詮索をやめろって言ってるんだよ。生きて帰りたいだろう」


今の金吉の言葉を裏返すと「詮索すると生きては帰れない」という事になる。言葉とは正直なものだ。


「金吉さん船の中では、死の岬の事を話したら殺されるって言ってたし、今も生きて帰りたかったら死の岬の事を詮索するなって言ってる。金吉さんが恐れてるものって一体何なの? 教えてよ!」


エマは紅潮した顔で金吉に迫る。


「あんた......本当はバイトで来ただけじゃないんだろう。まあそれはいいか。聞かない事にしよう。あんたにも都合ってもんがあるじゃろうからな」


金吉は木の枝で薪をかき回しながら言った。薪はバチバチと音を立て、火の粉が宙に舞う。


「じゃあ少しだけこの島の事を話してやろう」


「頼むよ。金吉さん」


エマは思わず身を乗り出す。金吉は一旦呼吸を置き、焚き火の火を調整する手を休めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ