第5話 用済み
2話同時更新です。
「えっ、そんな......何で?......」
唇を震わせながらそう呟いたのは他でも無い。勇ましく皆の前に立ちはだかった山本だった。見れば胸からは間欠泉のごとく血が吹き上がり、その血飛沫は春子の顔を朱に染めている。それはあまりに一瞬の出来事だった......
「いやぁ!」
「やっ、山本さん!」
エマはうずくまる山本の元に駆けつけ、静かにその体を地に寝かしつけた。銃弾によって引き裂かれた山本の心臓は、もはや鼓動を打つ事すら出来ないまでに破壊つくされている。
そして遂に......山本の首がガクンと落ちたのである。それは何の罪も無い尊い命が、再び失われた瞬間だった。
心臓の鼓動は止まっても、無念の表情だけは顔にくっきりと残っている。目は吊り上り、力強く噛みしめた唇からは血が滲んでいた。未だ残るその鬼のような表情は痛みによるのなのか? それとも悔しさの現われなのか?......今となっては分からない。
山本の胸に躊躇なく銃弾を撃ち込んだのは、他でも無い秋葉大地だった。
「ああそうそう、言い忘れてた。NO.055山本君だったけな。君の肺を移植する予定だった患者なんだけど、今朝方急に容体が悪くなってな。その後あっさり死んじまったんだ。つまり君は用済みって事だ。生きてるうちに言っといてあげれば良かったな。ハッ、ハッ、ハッ。とんだ茶番劇になっちまった。まあいいか......
それからもう一人。NO.056斉藤春子君。君の心臓を移植する予定だった患者も、瀕死の状態になって手術が不可能になった。まあよくある話だけどな。だからお前も悪いけど用済みだ」
「えっ、私も......やだ、私まだ死にたくない。そんなのいや!」
死神に憑りつかれた春子の体は、まるで血が逆流したかのようにブルブルと震え始めた。
期待通りとも言える春子の反応に満足したのか、大地は内面から込み上げる笑みを隠し得ない。
フッ、フッ、フッ......
「院長。殺りますか?」
厳七は銃口を春子の眉間に向ける。
「いや。この女は別に使い道がある。まだ生かしておけ」
「承知しました」
「おう......もうこんな時間か。余興もそろそろ終わりするとしよう。ところで柊恵摩君。冥土の土産に教えておいてやろう。君の心臓は君島財閥の孫娘に移植される。
そこの二人と違って、間違い無く移植手術は行われるだろう。でも悲しむ事は無い。君は手術後、絶世の美女クレオパトラとして生まれ変わる事が出来るんだ。
これは誰でもなれる訳じゃ無いんだよ。見た目の美しさだけじゃない。頭が良くて、何事にも動じない強い人間じゃ無ければ駄目なんだ。
これまでクレオパトラに相応しい人間に巡り合う事が出来なくて、何年も台座の上は開けたままだった。そこへ図らずも君がこの島に紛れ込んで来てくれた。正直の所、君に関しては移植何てどうでもいいと思ってるんだよ。まあ、大金が掛かってるから手術は行うけどな。まあそんな所だ。おい佐久間! やれ!」
そのように語りながら、大地は厳七に目配せする。
「畏まりました。よし捕えろ! 銃は使わずに生け捕れ!」
厳七は背後に連なる傭兵に大号令を掛けた。




