第8話 食糧
2話同時更新です。
一時的とは言え、多少なりとも生きながらえた事に、三人は僅かながらの気力を取り戻していた。ただ一人、エマだけは表情が変わらない。いや、むしろ先程より表情が曇っているかのように見えた。
山本はすぐにそんなエマの表情に気付き、眉を潜めながら問い掛ける。
「何か気になる事でもあるのか?」
「いや......何でも無いです。建物はこの先です。急ぎましょう」
この時エマは、妙な胸騒ぎを覚えていた。それは元々備え持ったエマの防衛本能なのかも知れない。
それまで散々自分らを追い立てていた追手がこの建物に近付いた途端、その姿を晦ました。ここまで追い詰めて来て見失う? そうであれば余りにお粗末な話だ。
そして建物に着いてみれば、小窓が開いていて、そこから内部を覗けば水と食料の詰まった段ボール......しかも扉は施錠されていなかった。
ちょっと話が出来過ぎてはいないか?
しかし、勘ぐっていても始まらない。追手が来たらその時は蹴散らすのみの話だ。エマは一旦考えるのを止めた。
四人はやがて建物へと到着する。
「おおっ食べ物だ!」
真っ先に山本が物色を始める。春子も玲奈もそれに続いた。
段ボールの中身は、ポテトチップ、煎餅、チョコレート、乾パン......四人の欲求を満たすには、十分な種類と量であった。
「ところで......そこの扉の向こう側って何なんだろう?」
ある程度食欲を満たした春子が、一番先に扉の存在に気が付いた。見れば四人が外から入って来た扉のちょうど対面にも扉がある。皆、飲み食いに夢中で、そこに扉がある事に誰も気付いてはいなかった。
「まだ見ていません。ちょっと見てきます」
エマはそう言いながら立ち上がると、すぐさま扉の前に移動した。
「あれ? 何か書いてある。何て書いてあるんだ?」
薄暗くてはっきりとは見えないが、扉の目の高さ位の位置に木の札が掛けられていた。
「G......A......R......よく読めないな?」
エマは扉に顔を近付ける。
「GARDEN......ガーデンって書いてあるのかな?」
エマは書かれている文字をそのまま読み上げた。
「つまりその扉の向こうがGARDENって場所な訳ね。庭って事?」
「まあ、とにかくその扉の向こうに行ってみれば分かる事だろ? 行ってみよう。何かもっといい物があるかも知れないぞ」
山本は目を光らせて言った。エマは山本に背中を押されるような恰好で扉を開ける。扉は何の抵抗も無く、キー......すんなりと開く。




