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傷だらけのGOD 極神島の秘密 怒りのサバイバル!  作者: 吉田真一
第23章 きつね狩り
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第1話 ワイングラス

挿絵(By みてみん)


秋葉大地は院長室の腰高窓の白いレースカーテンを十センチ程開け、徐に見慣れた外の景色に目をやった。窓外には極神島のイメージとはまるで似つかない近代的な港の風景が広がっている。


「佐久間君...... 君はこの港をどう思うかね?」 


夜の十時を過ぎているというのに、窓外はまるで白夜の世界。等間隔に設置されたライトは、大げさとも言える照度を保ち、それは夜を夜と思わせない程に光り輝いていた。


武装した船舶が港の周囲を航行し、岬に建つ高さ三十メートルの監視塔は、天辺に設置されたスポットライトを上下左右に動かし不審者でも見付けようものなら、即座に銃撃出来るよう準備万端な様子だ。


異常とも言える警戒態勢......それは外部に漏れてはならない秘密がそこに存在する事を浮き彫りにしていた。


「難攻不落の要塞、とでも言いましょうか。全く隙のない港と認識しておりますが」


「君は実にロマンチックに欠ける男だ。まあ、君のような無骨者に美の価値が解る訳も無いが......」


期待して損した......相手を軽侮するような視線はそんな気持ちの現われと言えよう。


「美......ですか?」


「その通りだ。良く覚えておきたまえ。この世で一番大事なものは権力だ。過去の歴史で名を残してきた偉人達は皆権力者であり、その象徴が美だ。この港は私の権力の象徴。美そのものなのだよ。フッ、フッ、フッ」


大地は自己中心的な理論を得意満面に吐き出した。自身の考えは全て正。それ以外は全て否と決めつける人間と接するには、語らない事が最善の対処法と言えよう。こういう上司の下についた部下は運が無かったと諦めるしかない。


「......」


厳七は肯定も否定もせず、沈黙を保った。


フウッ......大地は一つ大きなため息をつく。


「ところで、今日は私に話があるそうだな。要件を聞こう」


大地は右手に持つワイングラスを口に運びながら言った。


挿絵(By みてみん)


「話しは二つあります。いい話が一つ。そして悪い話しが一つ」


厳七は上下共に迷彩服。もう見慣れた姿だ。大地の何とも言えぬゴージャスな机の向こう側で仁王立ちしている。


「なるほど。いい話と悪い話か......面白い。ではまずいい話から聞かせてもらおう。私は短気だ。手短に頼むよ」 


大地はワイングラスをテーブルの上に置きながら言った。成熟しきった赤ワインもこの男が持つとまるで血の様にも見える。セントジェーン病院で幼い少女に優しく話し掛ける『大地先生』とは全く別の顔。その表情は冷淡極まりない。


「ではまずいい話から始めます。大牙、即ちウェポンの生産ですが、急ピッチで進めております。一時はその多くを焼失しましたが、何とか三十日のレセプションまでには間に合いそうです。研究棟では今遺伝子操作を二十四時間体制で進めております。ご安心下さい」


「小娘一人に大事な商品を随分無駄にしたそうだな。まあレセプションまでに間に合うのであれば良しとしよう。所でその娘の事なのだが.......実は私もセントジェーン病院で会っている。料理屋で働いてる娘だろ。偶然君島財閥の孫娘の心臓と適合したと聞いているが、そっちの方は抜かりないだろうな?」


「はい。完璧な監視下のもと、地下牢に幽閉しております。健康状態も良好です。移植には何の障りもありません」


「そうか......油断して取り逃がすなどという事が無いようにな。その娘、只者じゃ無いんだろう」


「はい。例のカメラマンの事を嗅ぎまわりに極神島に潜り込んできた娘です。頭も切れますし腕も立ちます。私も不覚の一撃を受けました」


厳七は苦笑いを浮かべながら、まだ傷の癒えない顎を摩りつつ言った。


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