第5話 ICU
やがて待ち受けていたエレベーターに飛び乗る。階を示すランプはB1が点灯していた。
ここは地下一階か......牢獄と言えば地下をイメージするが、やはりここも例外では無かったようだ。
扉が閉まるとエレベーターは一気に急上昇を始めた。今のエマにとって、エレベーターが上昇するGすら実に耐えがたい。吐き気が襲う。
うっ、気持ち悪い......エマは込み上げてくる胃液を飲み込んだ。
一階、二階、三階、四階、五階。やがて扉は開いた。エマは薄み掛ける視界の中で、5Fのランプが点灯しているのを見逃さなかった。
このフロアーは五階!
太一と島内の海岸通りを自転車で全て走り切ったが、殆どの建物が平屋もしくは二階建てであり、五階建ての建物などはどこにも無かった。そこは意識して観察していたので間違い無い。あの近代的なセントジェーン病院ですら三階建てだ。
では一体ここはどこなんだ?
西の森の更に西側か?
もしや船頭の金吉が恐れ慄いていた『死の岬の向こう側』なのか?
ガッ、ガッ、ガッ......やがてエレベーターの扉が開く。外には白衣をまとった医師三人が待ち構えていた。マスクに帽子を纏い、目だけが露出している。
「ICUに運べ!」
医師の一人が叫ぶ。するとでぶっちょは、聞かれてもいないのに苦紛れの言い訳を始めた。
「俺達はちゃんと見てたんだ。なのに......なのに急に苦しみ出しやがって。俺達は何も悪くない。信じてくれ!」
「煩い! お前達の処分はこの後院長からすぐに下るだろう。覚悟しとけ。この女が元に戻る事を精々祈ってろ!」
「そっ、そんな......」
でぶっちょはガックリと肩を落とした。
そんな看守の様子などお構いなしに、エマは長い廊下を足早に運ばれていった。そして突き当りの扉が開き、エマは『ICU』へと連れ込まれていく。そこには更に二人の医師が待ち構えていた。
「ベッドに乗せろ」
エマはベッドに仰向けに寝かされた。すぐに血圧が計られ、一人の医師がモニターを確認する。
「血圧が低下しています。危険な状態です!」
リーダーと思われる白髪頭の医師は、エマの様子を隈なくチェックした。
「全身にアレルギー反応。しかもチアノーゼが始まってる。アナフィラキシーショックだ! 酸素マスクを装着しろ。それとエピネフリンだ」
「おい!」
医師は後ろを振り返り、看守に声を掛けた。
「この状態が始まってどれくらい経つんだ?」
「俺達が監視カメラで気付いたのが多分十分位前で......その前からざわついていてたから、多分二十分位は経ってるんじゃ......」
「バカやろう! 連れてくるのが遅すぎる。何の為にカメラで監視してるんだ!」
「もっ、申し訳ない......」




